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代打のカケルさん~恋も仕事もカケルさんのおかげです~  作者: 来留美


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8、元彼登場

楽しくお読みいただけましたら幸いです。


~前話あらすじ~

カケルさんは強い人。

でも私は人の言葉で心が揺れ動く。

単純な人。




「あれ? 杏(あんず)じゃん」

「嘘。ハル君?」


 私は会議の準備をするためにカケルさんと会議室へ向かっていると、前から歩いてくる男性に声をかけられた。


 その男性は私の元彼のハル君だった。

 高校生時代に、たった一人だけ付き合ったのがハル君。


 お互いに色々と忙しくなってハル君から別れを告げてきた。

 私もハル君と同じ気持ちだったから納得して別れた。


 でも、どうしてハル君が此処に?

 高校を卒業してから一度も会っていない。

 本当に久しぶり。


「ここで働いてんの?」

「うん。ハル君は?」

「俺は、ここの会社と共同開発のための会議に参加するんだよ」

「そうなの? 課長が言ってた会議だ。課長が相手の会社は最近、売り上げが好調だから期待できるって言ってたよ。その会社がハル君の働いている会社なんだね」

「課長?」

「うん。課長が言うんだもん。ハル君の会社は凄いんだね」

「そう」


「光(ひかる)さん。準備をしましょうか?」


 カケルさんが私に声をかけ、ハル君との会話は強制的に終了した。

 私は“じゃあね”と言ってカケルさんを追いかけた。


 今は仕事中。

 雑談は休憩中にしなきゃ。

 しかし、課長にハル君が知り合いだって言っておいた方(ほう)がいいかな?


 そしてバタバタと準備をしていたら会議の時間になった。

 課長には後でハル君のことを伝えよう。

 今は、皆さんにお茶を淹れなければ。


 一人一人の机の上にお茶を置く。

 顔を見ながら一言添えて丁寧に。

 次はハル君だ。


「どうぞ」

「ありがとう」


 ハル君の顔を見て一言添えてお茶を置くと、ハル君は笑顔でお礼を言って私の手に少し触れた。

 驚いたけど、お茶を受け取った時に触れただけだと思ってスルーした。


 お茶を出し終えてカケルさんと私は会議室を出る。

 私達の仕事はこれで終わりだけど、もし会議が長引き休憩が必要な時は、もう一度お茶を出す。


 もし休憩になれば課長が教えてくれるから、それまでは自分の仕事をする。

 会議がスムーズに進むといいなと思いながら私は仕事を始めた。




「カケルさん、ごめん。会議が長引きそうなんだ。お茶をお願いしてもいいかな?」

「はい。承知いたしました」


 おっ、スムーズにいかなかったかぁ。

 やっぱり共同開発は意見が一致しないよね。

 早くお茶を渡して休憩をしてもらおう。


 私とカケルさんは急いでお茶の準備をした。

 また、一人一人の机の上にお茶を置く。

 顔を見ながら一言添えて。


 次はハル君の番。

 顔を見ながら一言添えようとする前にハル君が言う。


「ねぇ、杏(あんず)。俺とタッグ組まない?」

「えっ、どういうこと?」

「あの、課長さん。彼女を、このプロジェクトに参加させてもよろしいですか?」



「しかし彼女は、まだ新人ですので」


 課長は困った顔をしながら言った。

 私には荷が重すぎるよ。


「大丈夫ですよ。彼女のフォローは社長のワタシがします」


 ハル君。

 今、なんて?

 社長?

 嘘だよね?

 だって上座じゃなくて下座に座っているよね?


「ハル君って社長なの?」

「うん。大学生の時に立ち上げた会社の社長だよ」

「じゃあ、どうして下座に座っているの?」

「社長としてじゃなくて平社員として、この会社の状況を知りたかったんだよ」

「信じられない」

「それで、杏(あんず)。俺とタッグ組むよね?」


 ハル君の自信あり気な顔が昔の記憶を思い起こす。

 ハル君が私に告白をしてきた時も、そんな顔をしていた。


 自信満々に、私が首を縦に振るのを分かっていた、あの顔。

 私が、その顔に弱いのを知っているハル君。

 断らないことを分かってて、ずるいよ。


 でも、今の私は違う。

 私には課長がいるの。

 私は課長を見る。

 課長が私の代わりに断ってくれ、、、。


「彼女が良いと言うのなら参加させても良いと思いますよ」


 課長?

 私、何もできないですよ?

 それは課長が一番、知ってますよね?


「じゃあ、杏(あんず)は断らないだろうから決まりだね」


 ハル君は勝手に、どんどん決める。

 私は不安でたまらないのに。

 課長は何も言わない。

 ハル君が決めることを頷いて賛成している。


「杏(あんず)。それじゃあ、これからよろしく」

「ハル君。私、何もできないよ?」

「いいんだよ。杏(あんず)は勝利の女神だからさ」

「何それ? それって体育祭の話でしょう? あれは偶然よ」

「いいや。あれは杏(あんず)のおかげだよ」

「もう! 昔からハル君はお調子者なんだから」

「それなら杏(あんず)は昔から小さいね」

「もう!」


 ハル君が私の頭を撫でながら小さい私をバカにしてくる。

 ハル君の背が高すぎるのよ。


 それから一応、一緒に仕事をするからって、連絡先の交換をした後、ハル君は帰っていった。



「杏(あんず)ちゃん。給湯室で洗い物してくるから会議室の鍵を、、、」

「カケルさん?」

「あっ、何でもないわ。給湯室に行ってくるわね」

「あっ、はい」


 そしてカケルさんは会議室を出ていった。

 私は机を拭く。


「光(ひかる)さん、お疲れ様」

「あっ、課長、お疲れ様です」

「社長とは知り合いなんだね?」

「そうなんです。高校生時代の友達なんです」

「へぇ、なんだか仲良さそうだったね」

「色々とありまして」


 ハル君が元彼だってことは言わなくてもいいよね?


「俺は兄としてキミを見守ることにするよ」

「いつからお兄ちゃんになったんですか?」


 私は笑って言ったのに、課長は笑っていない。

 課長?


「兄ではないな。上司として見守るよ」

「課長?」

「後でプロジェクトの資料をキミに渡すよ」

「えっ、あっ、はい」

「片付けが終わったらカケルさんの所へ行ってくれ。一人にはできないんだからさ」

「はい」


 なんだか課長に急がされている気分。

 課長が不機嫌にも見えるし。

 私の相手をするのが面倒なの?




お読みいただき、誠にありがとうございます。


~次話予告~

新人と社長じゃ経験値は違うのに、課長は元彼のハル君と仕事をさせようとする。

そう、悩む私をカケルさんが励ましてくれるが、、、。

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