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代打のカケルさん~恋も仕事もカケルさんのおかげです~  作者: 来留美


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6、秘密を教えてくれたカケルさん

楽しくお読みいただけましたら幸いです。


~前話あらすじ~

私を悲劇から救ってくれたのは課長だけど、その悲劇の元を排除してくれたのはカケルさん。

そして、いつもとは違う本当のカケルさんを知れた。




「えっと、俺はカケルさんを尊敬はしてる。それだけだよ」

「えっ、でも、いつも緊張してましたよね?」

「それは、カケルさんの本性が分からなかったからだよ。何か裏があると思っていたんだ」

「そんなの紛(まぎ)らわしいですよ」

「そんなこと言われても、勘違いしたのは光(ひかる)さんなんだし」


 私の勘違いだったなんて。

 私ったら、カケルさんと課長がお似合い過ぎて勝手に頭の中で恋人なんだって決めつけていたんだ。


「じゃあ、課長には恋人はいますよね?」

「えっ、いやっ、仕事が忙しくて、もう何年も俺は一人だよ」

「嘘! 絶対に嘘です。だって、こんなに大人の余裕がある課長に、女性社員に人気の課長に、恋人がいないなんてあり得ません」

「それって褒めてくれてるのかな?」

「褒めてます!」



「それなら、ありがとう」


 課長は照れながらお礼を言った。

 私は、そんな課長を見て、自分が恥ずかしいことを口にしたことに気付いた。


 私、課長に好意を持っているって言ってるのと同じことを口にしちゃったよね?

 あれ?

 私、課長が好きなの?


「光(ひかる)さん」


 課長が、いきなり真剣な表情で言う。


「はいっ!」

「これからは一人にしません。必ず守ります」


 えっ、何?

 なんだかプロポーズみたいに聞こえるんだけど?


「課長?」

「なので、これからも俺と一緒に働きましょう」


 課長。

 その言い方(かた)は勘違いしますよ。

 私のドキドキを返してよ。


「働く?」

「カケルさんと協力をして光(ひかる)さんを一人にしないように決めたんだよ」

「お二人にご迷惑はおかけできませんよ」

「でもさ、これも契約だから」

「えっ」

「光(ひかる)さんを一人にしないっていう条件がカケルさんとの契約に新しく入ったんだよ」


 えっ、私のことが契約に?

 それって、代打であるカケルさんには関係ないのでは?


 だって、代打なんかじゃないから。

 カケルさんじゃなきゃダメだから。

 私はカケルさんを一番頼りにしているから。


 でも、目の前の人も頼りにしてるの。


「課長。頼りにしてます」


 私が課長に笑いかけて言うと、課長も笑って頷いた後、私の頭を撫でようと手を伸ばして止めた。


「あっ、すまない」

「いいえ。嫌じゃないです」

「でも」

「課長の手、とても落ち着くんです」

「じゃあ、いいかな?」

「どうぞ」


 私達はクスクスと笑いながら課長は私の頭を撫で、私は目を閉じて課長の大きな温かい手に癒された。






「杏(あんず)ちゃん。今日はデカ盛りパフェにするわよ」

「カケルさん。休日もデカ盛りチャレンジをするんですか?」

「当たり前よ。杏(あんず)ちゃんがいてくれるから、食べたい物をお腹いっぱい食べられるのよ」


 今日は休日。

 初めてカケルさんに誘われた。

 今日は大事な話があるみたい。

 それなのにデカ盛りチャレンジをするなんて本当に大事な話をするの?


 そして、アイスも苺もチョコムースも全てが大きいデカ盛りパフェを食べだしてから半分ほどなくなった時、カケルさんは両手で頬杖をつき、ニコニコと笑いながら私を見て言う。


「杏(あんず)ちゃん。私と一緒に働かない?」

「えっ、今すでに一緒に働いてますよ?」

「そうじゃなくて、私の契約終了と同時に杏(あんず)ちゃんも私と一緒に、あの会社を離れるのよ」

「離れる?」

「私の会社で一緒に働かない?」

「カケルさんの会社?」

「そうよ。私の会社よ」


 カケルさんって経営者だったの?

 どこかの派遣会社の社員さんだと思っていた。


「でも今の会社で、もっと沢山のことを学びたいんです。皆さん優しいですし」

「返事は私の契約終了の日にもらうわ。だから、それまで考えてよ」

「あっ、はい」

「それじゃあ、もう一つ話をするわね」


 えっ、まだ何かあるの?

 デカ盛りパフェを食べてる場合じゃないような気がするんだけどな?


「私、子供が産めない体なの」

「えっ」


 カケルさんの衝撃的な言葉に、私の口に入るはずだった苺が受け皿の上に落ちて転がった。


「あっ、ごめんね。杏(あんず)ちゃんは気にせず食べていいからね」

「えっ、いやっ、無理ですよ」

「お願い。食べながら聞いて」


 カケルさんが懇願するように言うから、私は仕方なく手と口を動かした。

 味は、あんまり分からなくなった。


「子供を産めないことが私の運命を変えたの。最初は荒れてたわ。やっぱり子供は欲しかったから。それで恋人とも別れた」

「そんなヒドイ彼氏は別れて正解です!」

「ありがとう杏(あんず)ちゃん。でもね、それがあったから私は強くなれたの。そして女性を助けたいって思うようになったの」

「女性を助ける?」

「そうよ。私は気付いてしまったの。女性は、どうしても子供を産むってなると働けなくなる」

「そうですね。だから育児休暇なんて制度があるんですよね」



「そうね。でも、その制度は助かるけど、仕事復帰後の女性達は休んだ引け目とブランクのせいで、以前の様(よう)に働けなくなるの」


 カケルさんは女性達の気持ちを本当に理解しているようで、悲しそうな顔をして言った。

 経験した女性の言葉を聞いたんだと思う。


「だから私は、そんな女性達を助けようと会社を立ち上げたの。そして女性達が安心して子供を産み育てられる社会を作りたいの」

「カケルさん、凄いです。カケルさんは私だけじゃなくて女性達の味方なんですね」

「そうよ。だから私は杏(あんず)ちゃんの傍で杏(あんず)ちゃんを守りたいの。だから一緒に働きたいのよ」


 カケルさんの気持ちは伝わった。

 カケルさんの仕事に対する想いも伝わった。

 そんなカケルさんと一緒に働けるのは本当にやりがいがあるんだと思う。


 でも私はカケルさんとは違う。

 仕事だって、まともに一人でできないし、まだまだ知らないことだらけ。

 そんな私がカケルさんと一緒に働けるの?




お読みいただき、誠にありがとうございます。


~次話予告~

カケルさんの秘密を知ってカケルさんは本当に強い人。

でも私は、課長と兄妹みたいなんて言われたら気にしてしまう、単純な人。

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