4、体調不良のカケルさん
楽しくお読みいただけましたら幸いです。
~前話あらすじ~
カケルさんの力になりたい。
だってカケルさんは私を救ってくれたから。
「カケルさん。もしかして生理が重いんですか?」
「えっ、どうして?」
私の問い掛けにカケルさんは驚きながら私を見てる。
「たまに、お腹を押さえていますよね?」
「そうなんです。ちょっと今日は痛み止めも効かなくて」
「分かりました。今日は会議室で二人で仕事をしましょう」
「会議室ですか?」
「そうです。課長の目を気にしながら仕事しなくて済みますよね? バレちゃダメなんですから」
「でも会議室は、いつも誰か使いますよね?」
「それが今日は誰も使う予定が入っていないので大丈夫なんですよ」
私は、課長にカケルさんのことを頼まれてから、会議室を使えるようにしてもらっていた。
体調不良のカケルさんが周りの目を気にしながら仕事をするのは大変だと思ったから。
そして会議室へ二人で入り、カケルさんのお手伝いをしながら時間は過ぎていき、お昼休憩の時間になった。
「カケルさん、お弁当を温めてくるので出してください」
「えっ」
「お腹が冷えないように、食べる物も温めた方がいいですよね」
「光さん、すみません。ありがとうございます」
そして私がお弁当を持って出ようとした時、会議室のドアをノックする音がした。
私は返事をしてドアを開けると、そこには心配そうにしている課長がいた。
「課長、どうしたんですか?」
課長は知らないフリをしなきゃいけないのに。
此処に来ちゃダメなのに。
そんなにカケルさんが心配なの?
「あっ、いやっ、二人で会議室にいるって聞いたから様子を見にきたんだよ」
「カケルさんが仕事をサボるとでも思っているんですか?」
私は仕方なく、課長が事情を知っていることをカケルさんに怪しまれないように会話をする。
「それは分かっているんだけど、光さんは目を離すとパソコンをフリーズさせるからね」
「えっ、それはパソコンが悪いんですよ。それに毎回じゃないので心配しないでくださいよ」
「毎回じゃないけど三度はフリーズしたよね?」
「もう! 課長だって、コピー機が壊れたって言って紙がなかっただけってことありましたよね? ですよね、カケルさん」
私は振り向いてカケルさんに同意を求めた。
カケルさんはクスクスと笑いながら頷いてくれた。
「あれは、疲れすぎていただけだよ」
「でも、カケルさんがいなかったら、課長はコピー機を叩いて直そうとして逆に壊す所でしたよ? カケルさんに感謝してくださいよ」
「もう、分かったから。光さんには敵わないな。元気で良かった」
課長は、そう言ってカケルさんに視線を向けて頷いた後、自席へと戻っていった。
課長はカケルさんの様子を見に来たんだ。
課長の視線だけで優しさがカケルさんへ伝わった。
また見せつけられてしまった。
隠す気あるの?
私にはバレバレですけど?
「カケルさん。お弁当を温めてきますね」
そして私は給湯室へ向かう。
自分の分のお弁当を先に温める。
カケルさんのお弁当を後にするのは、できるだけ温かい内に食べてほしいから。
「あれ? 光ちゃんって、お弁当なんだね? 手作り?」
以前、カケルさんに仕事をお願いしたら断られた男性社員だ。
私、この人苦手なんだ。
馴れ馴れしいし、威圧感があるから。
「はい。自分で簡単に作ってます」
「そうなんだ。俺にも作ってきてよ」
「えっと、お口に合うかどうか分からないので」
「えっ、もしかして断った? 新人なのに断るんだ?」
「えっと、新人って関係ありますか?」
「おっ、何その目。気が強い子っていいよね」
男性社員はニヤニヤして私を見てくる。
気持ち悪い。
お弁当よ、早く温まってよ。
私のお弁当が温まり、次はカケルさんのお弁当を温めるために男性社員に背を向けてレンジにお弁当を入れようとした。
すると男性社員が私の直ぐ後ろまで近付いてきた。
息が首にかかる。
私は固まってしまう。
恐怖で体が動かない。
「お~い、光さん」
私が動けないで固まっていると、私を呼びながら課長が給湯室へ入ってきた。
「あれ? キミ何してるのかな? 午後は営業だからって先に休憩を取ってたよね? もう時間じゃないかな?」
「えっ、あっ、そうでした。営業、行ってきます」
「うん」
そして男性社員は出ていった。
沈黙が続く。
「光さん、お弁当を温めるんだろう?」
課長は、そう言うと私の後ろから弁当を取ろうとした。
その行動に驚いて私の体がビクッと跳ねた。
「光さん、もしかして何かされた?」
私は何も言わず大きく首を横に振る。
すると課長が私から距離を置き、誰かに電話をしている様だった。
「ごめん。俺も男だし怖いよね?」
課長は本当に悔しそうに言った。
まるで課長が私を傷付けたかのように謝っている。
課長は何もしていないのに。
でも何故か声が出ない。
違うって言いたいのに。
「光さん!」
カケルさんが急いで給湯室へ入ってきた。
お腹が痛いのに走って来てくれたの?
カケルさんが来てくれたことで少しホッとした。
「カケルさん、お弁当の温めがまだなんです」
「光さん、いいですよ。今は此処から離れましょうか」
「はい」
そしてカケルさんと私は会議室へ戻った。
課長は給湯室の隅で気配を消すように私達を見ていた。
その目は本当に心配そうに見ていた。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
~次話予告~
悲劇のヒロインになってしまった私。
そんな私はカケルさんに、またもや救われる。
でも以前と違うのは、本当のカケルさんを知ってしまったこと。




