17、救世主のカケルさん
楽しくお読みいただけましたら幸いです。
~前話あらすじ~
カケルさんが望む会社がここにある。
私はこの会社で沢山学んでからカケルさんと仕事をしたい。
それまではカケルさんとは最後、、、なの?
「カケルさん!」
私がカケルさんを呼ぶとカケルさんは振り向いてくれた。
「カケルさん、お世話になりました。そして、ありがとうございました」
カケルさんは大きく頷いてくれた。
カケルさん。
また会いましょう。
「カケルさんの事情を聞いた時、俺はカケルさんみたいな人が沢山いてくれたら会社も女性も助かるのにって言ったんだ」
課長が、カケルさんの背中を見つめながら言った。
私もカケルさんの背中を見つめながら課長の話を聞く。
「そしたらカケルさんが怒って言ったんだ“私みたいな人が沢山いるということは女性が苦しんでいるってこと。私は、いつか、この仕事がなくなることを願って働いているんです”って」
「カケルさんらしいですね。あんなに胸を張って代打って言えるのは、何よりも女性を助けたいと思っているからなんですよね」
「カケルさんは救世主に間違いないな」
「課長は最初カケルさんが救世主か迷っていましたよね?」
最初の頃は課長ったらカケルさんのことを何も知らなくて、私がカケルさんは救世主って言ったら微妙な反応したんだよね。
「カケルさんは救世主だよ。女性にも会社にも、俺達男性にも」
「男性にもですか?」
「うん。女性の気持ちを教えてくれたのはカケルさんだよ。セクハラ事件だってカケルさんが教えてくれなかったら、男性の役員達も知らなかったことだからさ」
「そうですね」
「あっ、すまない。思い出させるような話をしてしまったね?」
「いいえ。あの事件があったからこそ、カケルさんのことを知れたんです。そして私は強くなりました!」
私が大丈夫だと笑っても課長は笑ってくれない。
「ハルさん」
私が課長を名前で呼ぶから課長は驚いて私を見てきた。
でも、その目が私に向けられた時、私は安心してしまう。
ハルさんの視線は優しくて私を安心させてくれる。
「まってくれ。誰が聞いているか分からないんだからさ」
「誰もいませんよ。だって今日は金曜日ですよ。明日はお休みなんで皆、早く帰りましたよ」
「でも、誰が聞いているか分からないから」
「それじゃあ、これなら文句ないですよね?」
私はハルさんの目の前に立つ。
「誰かいたとしても屋上の出入口ですよね。私がここに立てばハルさんの大きな体で私は見えないですよね?」
「そういう問題なのか?」
「もし人に見られても、ハルさんが独り言を言っているとしか思われないですよ」
「それっていいのか?」
「いいんです。今は、これが一番いいんです。だって私、ハルさんのことが、、、」
私が全てを言う前に、ハルさんが私を抱き締めた。
「ごめん。嫌なら言って」
「嫌じゃないです」
「俺さ、キミの上司だし、歳も十歳以上は離れてるおじさんだし、キミは可愛いから俺なんかにはもったいないと思うけど、好きになってもいいかな?」
「前にも言いましたが、ハルさんは大人の余裕があって、女性社員に人気なんです。そんなハルさんに好かれる私は幸せです」
私の言葉を聞いてハルさんは溜め息をついた。
えっ、嫌だったの?
「本当にキミは、いつも俺の欲しい言葉をくれるんだ」
「えっ」
「何度も諦めようとしたけど、俺は何度も好きになるんだ。キミを」
「ハルさん。大好きです」
私はハルさんを見上げて言った。
ハルさんは顔を赤くして顔をそむけた。
「可愛すぎる」
ハルさんは顔をそむけたまま、そう言った。
可愛いのはハルさんの方だよ。
私は、そんなハルさんを見ていたら嬉しくてクスクスと笑ってしまった。
「なっ、なんで笑うんだよ?」
「だって、ハルさんが照れてて可愛いんです」
「可愛いのはキミだよ」
「ハルさんの方が可愛いです」
「いいや、キミの可愛さが一番だよ」
「ハルさん。私達、バカップルみたいですよ」
私はクスクスと笑っているのに、ハルさんは真剣な眼差しで私を見てくる。
「ハルさん?」
「名前で呼んで」
「えっ」
「杏」
「遼綺さん」
「杏好きだよ」
「私も大好きです。遼綺さん」
遼綺さんは私をギュッと抱き締めてくれる。
本当に幸せ。
「カケルさんとの交換条件の秘密ってなんだったんですか?」
「えっ、それって今、訊く?」
「だって、気になりますよ。カケルさんの極秘を知ったということは遼綺さんも極秘を伝えたんですよね?」
「それは、、、俺の口からは言えないから、カケルさんから聞いてよ」
「でもカケルさんは代打が終わると全ての人との連絡を断つんです」
「分かった。教えるけど今は、まだ待ってくれるか?」
「はい。いつでも隣で待ってます」
私がニコニコしながら言うと、遼綺さんは私の頭を撫でた。
大きな手は温かくて凄く安心できる。
「恋愛なんて何年くらいしてないんだろう? 何をすればいいのか分からないんだが?」
「そんなの、私達は私達の恋愛をすればいいんです。ただ一緒にいたいなら一緒にいればいいんです」
「そっか。それなら今夜、ディナーに誘ってもいいかな?」
「えっ、嬉しいです」
「接待で行った場所で、キミが気に入ってくれそうなお店があるんだ」
「楽しみです。でも今は、もう少しだけこのままで」
「うん」
彼の手から大好きが溢れてくる。
だから私は、この手が好きなんだ。
そう実感した。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
~次話予告~
最終話 「代打になりたくないし、代打になんてならない。あなたの隣では」




