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代打のカケルさん~恋も仕事もカケルさんのおかげです~  作者: 来留美


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16/18

16、最後の日のカケルさん

楽しくお読みいただけましたら幸いです。


~前話あらすじ~

カケルさんがいなくなるまで残り数日。

カケルさんロスが起きそうだけどカケルさんは望んでいない。

それよりも戻ってくる女性社員の心配をする。




「カケルさん、本当にありがとう。お世話になりました」

「私もお世話になりました」


 今日は、朝からカケルさんへの最後の言葉を言いに沢山の方(かた)がカケルさんの所へやってくる。

 そして、その殆(ほとん)どが女性。


 他の部署の方(かた)、取引先の方(かた)、それにお掃除のおばちゃんまでもがカケルさんに一言を伝えに来ている。


 最初は、カケルさんは好かれていないと思っていたけど、それは間違いだった。

 カケルさんは女性の味方で女性には慕われていた。


 男性社員が多い、この部署では、それに気付けなかった。

 でもカケルさんって人を知れば、好かれないわけがない。

 カケルさんは人に好かれる神様かも。




「皆、集まってくれ」


 課長が定時になる少し前に皆を集めた。

 課長の隣にはカケルさん。

 本当に今日が最後なんだ。


「カケルさんは今日が最後です。そして来週からは育児休暇を終えて俺達の仲間が帰ってきます。彼女が戻って来やすいように、皆が協力をしていたのは知っています。でも気を遣いすぎるのも良くないので、お互いに気を付けましょう。それではカケルさんから一言もらおうか」


 課長に目で合図をされたカケルさんは皆の顔を見る。


「皆さん、お世話になりました。私からは以上です」


 えっ。

 皆が驚いて固まっている。

 私も。


「カケルさん、それだけ? 一年も一緒に働いたのに?」


 女性社員が悲しそうに言っている。

 でも私も彼女と同じ気分。

 もう少し何か言ってくれてもいいと思う。


「私は代打ですので」


 カケルさんは胸を張って堂々と言った。

 その一言には沢山の意味が込められている。

 でもそれを知っている人は多分、私だけ。

 もう少し、分かりやすく言ってほしい。


「カケルさん、その言葉では足りないよ。ここにいる皆は、カケルさんが思うような人達じゃないよ。それはカケルさんが一番、知っていると思うけどな?」


 課長がカケルさんに言う。

 まるでカケルさんの全てを知っているかのように。


「皆さん、どうか戻ってくる彼女を腫れ物扱いしたり、邪魔者扱いしたり、私と比べたりしないでください」


 カケルさんの心からの言葉に皆が黙る。


「しないわよ。彼女には子育てがあるんだから私達が手助けできるようにカケルさんから仕事を教わったのよ」

「そうだ。彼女が子供の病気で休んでも大丈夫なように、俺達だって自分でできるものは自分でするって決めたんだ」

「私は彼女の子供の話も旦那さんの話も聞きたいし、彼女が戻ってくるのが楽しみなんだよ」


 皆が次々と思っていることを口にする。

 その言葉は全てが優しくて温かい。


「私は、まだ会ったことはないですが、その先輩のやる気が失くならないように、見張っておきますよ。カケルさんの話をしながらです」


 私は決めた。

 この会社に残る。

 カケルさんと仕事はしたい。

 でも、この会社で、この優しい人達と一緒に働きたい。


「そう。皆さん、これからは戻ってくる彼女を温かく見守ってください」


 カケルさんが頭を下げて言うと、皆が当たり前と言いながらカケルさんを囲む。

 カケルさん。

 これが、あなたの望む会社の形ですよね?





「あっ、カケルさん、いた~」


 私は帰る前にカケルさんと話がしたくて探していた。

 カケルさんは屋上にいた。

 そして空を見上げていた。

 私は静かにカケルさんの横に並んだ。


「杏(あんず)ちゃん、帰ってなかったの?」

「当たり前です。カケルさんに、ちゃんと伝えなきゃいけないので」

「もう、分かっているからいいのに」

「いいえ。ちゃんと伝えたいんです」

「そう。それならどうぞ」


 カケルさんはクスクスと笑った後、私を見た。


「私は、この会社に残ります。そして、この会社でカケルさんがやってきたことを私が皆に伝えます。そして、この会社で私が不必要になったら、カケルさんと一緒に他の女性を救うために働いてもいいですか?」



「杏(あんず)ちゃん、あなたを選んで良かったわ。やっぱり杏(あんず)ちゃんは新人だった頃の私よりもできる子よ。だって自分で動こうとしているんだもん。そんなこと殆(ほとん)どの人ができないわよ」


 カケルさんは私を抱き締めて言った。

 カケルさんは少し震えていた。

 もしかしたら泣いていたのかもしれない。


「でも、どっちが先かな?」

「えっ、どっちとは?」

「ん? 杏(あんず)ちゃんが私の会社で一緒に働くか、杏(あんず)ちゃんの代打で私が、この会社に戻ってくるかよ」

「私の代打?」

「課長と、、、」

「かっ、カケルさん!」


 私と課長の子供?

 そんなの、まだまだ先のことだよ。

 って、まだ課長とは始まってもないわよ。


「でも、カケルさんの事情を課長も知ってる様子でしたね?」

「そうね。交換条件だったからね」

「交換条件?」

「そうよ。私の秘密を言う代わりに課長の秘密を教えてもらったのよ」

「えっ、課長の秘密ですか? まさか、内縁の妻がいるとかですか?」

「違うわよ。ちょうどいいわ、本人に訊いたらいいわよ」


 カケルさんが私の後ろに視線を向けた。

 もしかして課長が後ろにいるの?


「カケルさん、光(ひかる)さんを借りてもいいかな?」

「どうぞ。私は帰りますから」


 そしてカケルさんは帰っていく。

 カケルさんの背中が小さくなっていく。

 カケルさんとは、これでお別れなの?




お読みいただき、誠にありがとうございます。


~次話予告~

カケルさんが本当に願う事とは、、、。

それを知った私はカケルさんは救世主なんだと思った。

そして課長との関係も変わる。

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