14、私の顔を見ただけで何かに気付くカケルさん
楽しくお読みいただけましたら幸いです。
~前話あらすじ~
大役を成功させた私は課長に頭を撫でてもらい癒された。
課長にも同じ気持ちになってほしくて頭を撫でた後、課長に質問された。
ハル君と別れて後悔はしていないのかと。
「あっ、すまない。プライベートのことなんて訊かれたくないよな?」
「えっ、そんなことは、、、」
「忘れてくれ。キミに癒されて上司の立ち場を忘れてしまったみたいだ」
「それじゃあ今は、私も課長も立ち場を忘れましょうよ」
「えっ」
「ですので、さっきの質問の答えを伝えてもいいですか?」
「あっ、うん」
私はハル君への気持ちを隠すことなく伝えた。
ハル君は良い友達。
これからも、ずっと変わらない。
「私はハル君と別れたことに後悔はしていません。今も関係は友達です」
「そう」
課長は私の言葉を聞いて嬉しそうに笑った。
どうして嬉しいの?
その顔は、どういう意味なの?
「さぁ、仕事に戻ろうか。その前に社長に謝らないとな」
「えっ、どうしてですか?」
「勘違いをして社長に冷たく言ってしまったからね」
「それなら私がハル君に説明しますよ」
「いやっ、説明は俺がするから光さんは、この会議室の片付けをしてくれるかな?」
えっ、私も一緒に行きたいのに。
そんな風に思っていると課長がクスッと笑って言う。
「キミが居ると社長を呼ぶだろう?」
「呼ぶ?」
「名前で」
「ハル君?」
「そう。それが俺が呼ばれてるように感じて毎回ドキッとするんだよ」
ハル君の名前を呼ぶとドキッとする?
どうして?
「俺の名前は遼綺なんだ」
「遼綺って読むんですね。給湯室で女性の先輩達と何と読むのか話題になったことがあるんです」
「俺の話?」
「そうですよ。課長は女性社員に人気なんですから、話題になって当たり前ですよ」
「それって喜んでいいのか?」
「いいんです!」
課長は私が迷いなく自信を持って言い切ったのが面白かったのかクスクスと笑った。
「じゃあ、俺は社長の所に行ってくるよ」
「はい。いってらっしゃい。ハル、、、さん」
「えっ」
「今は私も課長も立ち場を忘れているんですよね?」
「そっか。じゃあ、いってくる。杏」
そして課長は会議室を出ていった。
私は課長に初めて名前で呼ばれ、舞い上がりすぎて片付けを始めるのが遅くなってしまった。
洗い物を持って給湯室に行くとカケルさんがいた。
カケルさんは私の顔を見てニコッと笑った。
「その顔は、良い事があったわね?」
「えっ」
「でも忠告しておくわ。職場恋愛は難しいわよ」
「えっ」
「それに上司と部下は、もっと難しいわよ」
「カケルさん、何を言っているんですか?」
「え? 課長と、、、」
「えっ、そんな、課長と私が? そんな課長が嫌がりますよ。私なんて、こんな小娘が」
私はカケルさんの言葉を遮り、恥ずかし過ぎて早口言葉のように言葉を並べて言った。
そんな私にカケルさんは“はい、はい”と言って私を宥めてくれた。
「でも職場恋愛は難しいけど、職場を変えれば普通の恋人になれるわよね?」
「カケルさん、そう言って私をカケルさんの会社で働かせようとしないでくださいよ」
「えっ、いいじゃん。杏ちゃんも私も得しかないでしょう?」
「そうですかね? だって仕事をしてる姿も見れないし、仕事を教われないし、いつでも同じ空間にいられないんですよ?」
「そう? でもね、仕事で失敗をして怒られている姿を見たり、一人前になれば仕事は教わらないし、家でも職場でも一緒だったら自分の時間が欲しくなるかもよ?」
カケルさんの言っていることも一理ある。
でも、それは全ての人に当てはまるわけじゃない。
私と課長なら、、、。
「カケルさん。ちょっと待ってくださいよ」
「何? 待つわよ」
「私、付き合ってません」
「えっ、デカ盛りチャレンジ? そういえばランチタイムのデカ盛りチャレンジは最近してないかもね」
「違います。私、課長と付き合っていません」
「うん。知ってるけど?」
「えっ、それなら、どうして付き合っている前提で話をしているんですか?」
「そんなの、、、」
「カケルさん」
カケルさんが言おうとした時、女性社員がカケルさんを呼び、給湯室に来た。
そしてカケルさんは女性社員に連れていかれた。
カケルさんは何て言いたかったんだろう。
気になる。
「杏」
考えながら洗い物をしていたら後ろから声がした。
えっ、課長が、また私を名前で呼んでくれたの?
私は急いで振り向く。
そして相手の顔を見る。
「なんだ、ハル君か」
「何で、そんなに落ち込んでんだよ?」
「だって、私の予想が外れたんだもん」
「声で分かるだろう?」
「考え事をしていて、ちゃんと聞いてなかったのよ」
「プロジェクトを進める時は、しっかりしてくれよ」
「分かっているわよ。課長もいるし、大成功間違いなしだからね」
「あっそ」
ハル君は興味なさそうに言い捨てた。
「何よ。そんなに興味なさそうに言わなくてもいいじゃん」
「いやっ、カケルさんって人気者なんだなぁって思ってたんだよ」
ハル君の見ている方向を見ると、カケルさんの周りに人が集まり皆が何か頼んでいる。
「だって、神様のカケルさんだよ?」
「神様?」
「そう、どんな仕事もできるカケルさんだから神様なのよ。雲の上の人、、、だけど私達に寄り添ってくれる人」
「カケルさんと一緒に働けたら経験値が上がりそうだな?」
「うん、そうかも。私も他の社員さんも仕事がスムーズに進むようになったかも」
「そうか。それじゃあ、俺は帰るわ。カケルさんは忙しそうだから帰るって伝えてて」
「うん、じゃあね」
「うん」
そしてハル君は帰っていった。
ハル君ったら、カケルさんの魅力に気付いちゃった?
お読みいただき、誠にありがとうございます。
~次話予告~
カケルさんがいなくなるまで、あと数日。
みんながカケルさんへ仕事を教わりにいく。
この会社でカケルさんロスが起きるかもしれない。




