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LAVeLESS  作者: 神矢
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82/90

白熱

 先に踏み込んだのはレイ。


 右拳。


 セルバは左腕で受ける。


 そのまま身体を沈め、右拳を返した。


「っ――!」


 レイは首を傾ける。


 拳が頬を掠めた。


 すぐさま左を返す。


 セルバの頬へ直撃。


「ぐっ……!」


 顔が横へ弾かれる。


 だが。


 足は動かない。


 すぐに視線だけを戻し。


「いい拳だ。」


「そりゃどうも……!」


 もう一発。


 セルバは僅かに身を引く。


 空を切った。


 その瞬間。


 踏み込んでいたレイの懐へ、セルバが一歩入る。


「――ッ!」


 腹部へ拳が突き刺さった。


「ぐっ……!」


 身体が浮く。


 続けざま。


 頬。


 ――ドンッ!!


「がっ――!」


 レイの身体が大きく吹き飛んだ。


 数メートル。


 地面へ叩きつけられ、そのまま何度も転がる。


「ピエロ選手ぅぅぅ!!」


「今度はセルバ様の拳が炸裂ぅぅぅ!!」


 レイは仰向けになったまま、大きく息を吐いた。


「……っはぁ。」


 数秒。


 腕をつく。


 身体を起こし。


 そのまま立ち上がった。


 セルバは動かない。


 拳を構えたまま待っている。


「どうした。」


「もう終わりか?」


 レイは口元の血を拭った。


「まさか。」


 再び拳を構える。


「今のは効きましたけどね……!」


 地面を蹴る。


 再び。


 二人が激突した。


 拳。


 拳。


 拳。


 レイの右がセルバの頬を捉える。


 顔が弾かれる。


 続けて腹。


「ぐっ……!」


 セルバの身体が僅かに沈む。


 それでも倒れない。


 返しの拳。


 レイが腕で受ける。


 そのまま身体を回し、左を振るう。


 セルバが避ける。


 今度は右。


 頬へ直撃。


「ぬっ……!」


 血が飛ぶ。


 それでも。


 セルバの拳が返ってくる。


「っ……!」


 レイの顎を掠める。


 身体が揺れた。


 その隙へ。


 もう一発。


「ぐぁッ!」


 レイが後方へよろめく。


 踏み留まる。


 すぐに前へ。


「おおおおおおおお!!」


「凄まじい!!」


「両者、一歩も引きません!!」


「これは本当にエキシビションマッチなのでしょうかぁぁぁ!!」


 レイの拳がセルバの腹へ沈む。


「ぐっ……!」


 セルバの口元から、血が滲む。


 レイは止まらない。


 左。


 右。


 セルバも返す。


 互いの拳が頬を捉える。


「ぐっ!」


「っ……!」


 二人の顔が同時に弾けた。


 それでも。


 どちらも退かない。


「はは……!」


 レイが笑う。


「やっぱ強ぇな……!」


 セルバも血の滲んだ口元を吊り上げた。


「当然だ。」


 次の瞬間。


 再び拳が交差する。


 時間が経つほど。


 打撃の数は増えていった。


 レイの拳がセルバを捉える。


 一発。


 二発。


 何度受けても。


 セルバは倒れない。


 身体を揺らし。


 血を流し。


 それでも。


 踏み留まる。


「……っ!」


 そして。


 僅かな隙を見つければ。


 必ず拳が返ってくる。


 ――ゴッ!!


「がっ……!」


 レイが地面へ倒れる。


 すぐに起き上がる。


 また向かう。


 殴る。


 殴られる。


 倒れる。


「はぁ……!」


 立ち上がる。


 再び拳を構える。


 セルバの頬も。


 口元も。


 すでに血に濡れていた。


 呼吸も荒い。


 それでも。


 一度として膝はつかない。


「まだ来るか。」


「……当たり前だろ。」


 レイが踏み込む。


 拳がセルバの顔面へ入る。


「ぐっ……!」


 頭が大きく揺れた。


 レイはさらに踏み込む。


 右拳。


 だが。


 セルバが僅かに身体を沈めた。


「――ッ!」


 空を切る。


 直後。


 拳がレイの脇腹へ突き刺さった。


「がっ……!」


 膝が落ちる。


 そこへ。


 もう一発。


 頬。


 ――ドンッ!!


 レイの身体が横へ弾けた。


 地面を転がる。


 一度。


 二度。


 三度。


 止まる。


「…………。」


 観客席から。


 大きな歓声が響いている。


 レイは地面へ手をついた。


「っ……。」


 腕が震える。


 それでも。


 身体を起こす。


 膝を立て。


 また。


 立ち上がった。


 セルバは無言でその姿を見つめる。


 レイは荒い息を吐きながら。


 もう一度。


 拳を構えた。


 そして。


 真正面から、セルバへ向かっていった。



 貴賓席。


 ティアは瞬きも忘れたように、闘技場を見つめていた。


 セルバの拳が、ピエロの頬を捉える。


 身体が大きく傾く。


 それでも倒れない。


 足を踏み締め、もう一度拳を構える。


 そして真正面から、王国最強へ向かっていく。


 その姿を見つめているうちに。


 ティアの脳裏へ、遠い日の光景が蘇った。

 

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