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LAVeLESS  作者: 神矢
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トップ二人の重大会議

 決着後の貴賓席。


 セルバは腕を組んだまま、微動だにしない。


 隣のアルフォンスも、無言で闘技場を見つめている。


「…………。」


「…………。」


 しばらくの沈黙。


 やがてセルバが、小さく口を開いた。


「……夜道。」


 アルフォンスも真剣な表情のまま頷く。


「闇討ちか。」


「ああ。」


「一発だけなら……。」


 眉間に皺を寄せる。


「……いや。」


「余は国王。」


「お前は軍総統だ。」


「さすがに立場がまずい。」


 セルバも静かに頷いた。


「……そうだな。」


「では、どうする。」


 二人は再び腕を組み、本気で考え始める。


「…………。」


「…………。」


 まるで国の行く末でも話し合っているかのような、重苦しい沈黙。


 その時だった。


 アルフォンスの眉間から、ふっと力が抜ける。


 そして。


 国王とは思えないほど間の抜けた顔で、口を開いた。


「……あっ。」


 セルバが視線を向ける。


「どうした。」


 アルフォンスは、思いついたことをそのまま口にするような軽い調子で言った。


「こうすればいいじゃん。」


「エキシビションマッチ、ティアの代わりにお前が出ればいい。」


 セルバは目を見開いた。


「…………。」


「…………。」


 数秒。


 アルフォンスの顔を見つめ続ける。


「……お前。」


「天才か。」


 アルフォンスは静かに頷いた。


「ああ。」


「合法だ。」


 セルバも力強く頷く。


「合法だ。」


 二人の口元に、ほぼ同時に笑みが浮かんだ。


 国王と軍総統には到底似つかわしくない、何とも悪い笑みだった。


 互いの顔を見合わせたまま。


 二人は満足そうに、もう一度頷き合った。


 その様子を見ていたティアは、小さく苦笑した。


「……お二人とも。」


「本当に大人気ありませんね。」


 隣のレオンも思わず苦笑する。


「父上……。」


「セルバ殿まで……。」


 アルフォンスはすぐに立ち上がった。


「ティア。」


「悪いが、エキシビションマッチはセルバと交代してくれ。」


 ティアは肩をすくめる。


「やっぱりそうなりますか。」


「分かりました。」


「私は構いません。」


 アルフォンスは満足そうに頷くと、そのまま大会運営席へ向かって歩き出した。


 セルバも当然のように後をついていく。


 レオンは、そんな二人の背中を見送りながら小さく息をつく。


「……父親って、ああいうものなんでしょうか。」


 ティアは優しく微笑んだ。


「ええ。」


「きっと、ああいうものなんでしょうね。」


 そう呟きながらも、その表情にはどこか呆れたような笑みが浮かんでいた。


 闘技場。


 レイは大歓声の中、深く息を吐いた。


「……っはぁ。」


 崩れた地面の上で力を抜く。


「やっぱりヒナは強すぎるわ……。」


 試合の終了を確認した術式が、レイの身体を包み込んだ。


 鼻先の傷。


 脇腹を掠めたレイピアの痕。


 戦闘によって受けたすべての損傷が、光の中で消えていく。


 そのまま、闘技場から消えた。


 光が収まる。


 レイは、いつの間にか控え室の中央に立っていた。


 目の前には、何とも言えない顔をしたルコがいる。


「気持ち悪い。」


「あ?」


 レイが鼻先へ手を触れる。


 傷は消えている。


 だが、掠められた部分の化粧だけが少し乱れていた。


「何言ってんだ、お前。」


「いや、何だよあれ。」


 ルコは闘技場を映す魔導モニターを指差した。


「怖いんだけど。」


「土系譜の上位第五級だろ。」


「そういう話じゃねぇよ。」


 ルコは頭を抱える。


「普通の上位第五級は、自分の周りの地面を少し崩す程度なんだよ。」


「何で闘技場の半分が消し飛んでんだ。」


「ああ。」


 レイは何でもないことのように答える。


「範囲と魔力量だけなら、第二級くらい使ったからな。」


「俺、土系譜は得意じゃねぇし。」


「その分、多めに魔力を流した。」


「多めで済ませるな。」


 ルコは呆れたように息を吐く。


「つーか、あれだけ使って平気なのか?」


「ごっそり持ってかれたよ。」


 レイは椅子へ身体を投げ出した。


「怪我は戻っても、魔力は戻らねぇからな。」


「それにしても、ヒナはやっぱり強ぇわ。」


「正体を隠しながらじゃなかったら、もう少し楽だったけど。」


「それでも面倒だった。」


「お前が言うと、嫌味にしか聞こえねぇよ。」


 ルコは苦笑しながら、レイの肩を軽く叩いた。


「まぁ、お疲れさん。」


「次の試合も、かなり期待できそうだな。」


 レイは顔を上げた。


「は?」


「もう決勝、終わっただろ。」


 ルコが目を瞬かせる。


「お前、知らねぇの?」


「何を。」


「このあと、しばらく休憩したらエキシビションマッチだぞ。」


「優勝者と、ギルドナイト序列十一位様の対戦。」


 レイの動きが止まった。


「……序列十一位?」


「ああ。」


 ルコは楽しそうに笑う。


「ティア様だ。」


「…………。」


 数秒の沈黙。


「はぁぁぁぁぁぁ!?」


 控え室中へ、レイの絶叫が響き渡った。


「何でだよ!!」


「俺、勝っただろ!!」


「ティアさんと戦って勝てるわけねぇだろ!!」


「いや、勝ち負け以前に、あの人絶対本気で来るじゃん!」


「ふざけんな!!」


 ルコは腹を抱えて笑っている。


「安心しろって。」


「もう優勝は決まってる。」


「ただの余興だよ。」


 レイはルコの肩を掴んだ。


「賞品は!?」


「俺が負けても、魔女の口づけはもらえるんだろうな!?」


「もらえる、もらえる。」


「エキシビションは大会結果と関係ねぇよ。」


 レイはその場で大きく息を吐いた。


「……よかった。」


 椅子へ崩れ落ちる。


「それならいい。」


 しばらく天井を見つめたあと。


「いや、よくねぇよ。」


「どうやっても勝てる光景が見えねぇ。」


 首を垂れて項垂れるレイ。


 優勝は決まった。


 目的だった賞品も手に入る。


 残るのは、ギルドナイト序列十一位。


 ティアとの、ただのエキシビションマッチ。


 ――少なくとも。


 レイは、そう思っていた。


 その頃、貴賓席では。


 ヒナファンクラブに所属する親バカ二人による、あまりにも大人気ない策略が、着々と進められていた。


 対戦相手は、序列十一位のティアから。


 序列二位のセルバへ。


 レイの知らないところで。


 エキシビションマッチは、合法的な制裁の場へと姿を変えつつあった。


 ルコは満面の笑みを浮かべた。


「ご愁傷様。」


 もっとも。


 この時のルコもまだ、その言葉が洒落では済まなくなることを知らなかった

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