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LAVeLESS  作者: 神矢
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本戦開始

 本戦出場選手専用控え室。


 二次予選を勝ち抜いたレイは、扉を開けるなり大きく息を吐いた。


「お、帰ってきたか。」


 ソファに寝転がっていたルコが、手をひらひらと振る。


「さすがだなぁ。」


「余裕のご帰還で。」


 レイは返事をする前に、自分の派手な衣装を見下ろした。


「……なあ。」


「やっぱり、この格好おかしくねぇか?」


「ん?」


 ルコは改めて、レイの全身を上から下まで眺めた。

数秒見つめた後――


「いやいやいやいや。」


 吹き出しそうになる口元を押さえながら首を振る。


「似合ってるぞ。」


「絶対笑ってるだろ。」


「笑ってねぇって。」


「目が笑ってる。」


「気のせいだ。」


 ルコは顔を逸らした。


 肩だけが小刻みに震えている。


「……。」


 レイは深いため息を吐いた。


「まあ、防具禁止で仮面も駄目だからな。」


「仕方ねぇか。」


 近くのソファーへ座る。


「それより。」


「本戦出場者の情報、教えてくれ。」


「はいはい。」


 ルコは待ってましたと言わんばかりに身を起こした。


「まず第一回戦。」


「グランフェルナ代表。」


「お前と仲良しの――」


「おい。」


 レイが即座に口を挟む。


「あんなわがまま女と仲良しなわけねぇだろ。」


「はいはい。」


 ルコは苦笑する。


「セルバさんの愛娘。」


「ヒナ・ヴィルガルム。」


「対戦相手はサイルケン王国代表。」


「ブライト・シンゲージ。」


「アマチュアハンターだが、実力は高い。」


「まあ……。」


 肩をすくめる。


「ヒナちゃんが勝つだろうな。」


「まあ、そりゃそうだ。」


 レイも迷わず頷く。


「たぶん、決勝はヒナだろ。」


「次。」


 ルコは指を一本立てる。


「第二回戦。」


「メルキア連邦代表、パリス・ナリアン。」


「シベルート王国代表、メイア・タルナーヤ。」


「……まあ、お前とは当たらねぇ。」


「省略。」


「雑だな。」


「興味ないだろ?」


「まあ。」


 否定はしなかった。


「そして第三回戦。」


 ルコの表情が少しだけ真面目になる。


「デビルース帝国代表。」


「シルフィード・リザーブ。」


 その名前を聞き、レイの眉が僅かに動いた。


「……ああ。」


「あのイケメン勇者か。」


「お前、嫌いだもんな。」


「別に嫌いじゃねぇ。」


「あの張り付けたような笑みが、気に食わないだけだ。」


「十分嫌いじゃねぇか。」


 ルコは苦笑した。


「十八歳。」


「シルバーナイト唯一の十代。」


「風に愛されし天才。」


「有名な話だが、S1ランクの嵐龍を単独討伐してる。」


「風を操って空まで飛ぶ。」


「俺は絶対勝てねぇ。」


「対戦相手はメリナード共和国代表。」


「シンドラ・マブラクス。」


「自国大会の優勝者だ。」


「メリナードは戦争はしねぇ。」


「その代わり、競技としての魔法戦闘に特化した国だからな。」


「試合形式なら、かなり厄介だろう。」


「シルバーナイトか……。」


 レイは腕を組む。


「空飛ばれるのは面倒だな。」


「最後。」


「第四回戦。」


 ルコはレイを指差した。


「お前の初戦だ。」


「相手はバルブード公国代表。」


「アラン・ケードリス。」


「プロハンター。」


「身長は二百二十センチくらい。」


「武器は鉄の棍棒。」


「見た目通りパワーもあるが、それ以上にスピードが異常だ。」


「見た目に騙されんなよ。」


「一撃が重い。」


「お前でも直撃したら、結構ヤバいんじゃねぇか?」


 レイは静かに頷いた。


「分かった。」


「一番しんどいのはヒナちゃんだろうけどな。」


 ルコは天井を見上げる。


「本気出さねぇと危ねぇんじゃね?」


「俺なんか一分も保たねぇ。」


「あの重力魔法に捕まったら抜け出すだけでも一苦労だ。」


「……だよなぁ。」


 レイは苦笑する。


「しんど。」


 その一言に、ルコは吹き出した。


「お前でもそう思うんだな。」


「思うわ。」


「面倒くさいもん。」


 やがて、試合開始を告げる鐘が鳴り響く。


 第一回戦。


 ヒナ・ヴィルガルム。


 対するブライト・シンゲージ。


 勝負は、誰もが予想した通りだった。


 圧倒的な重力魔法。


 近づくことすら許さない戦い方で、ヒナが危なげなく勝利を収める。


「やっぱ強ぇな。」


 レイは腕を組んだまま、小さく呟く。


 続く第二回戦。


 メイア・タルナーヤが勝利。


 第三回戦。


 シルフィード・リザーブ。


 風を自在に操り、空中から一方的に攻撃を浴びせる戦い方で、勝利を収める。


「飛行か。」


 レイはその戦いを静かに見つめる。


「……やっぱり面倒だな。」


 そして。


 司会の声が闘技場へ響き渡った。


「さあ!」


「第四回戦です!!」


「バルブード公国代表!」


「身長二メートルを超える巨漢!」


「プロハンター、アラン・ケードリス選手!!」


 巨大な棍棒を肩へ担いだ大男が、観客席へ向かって拳を掲げる。


 歓声が上がる。


「対するは!!」


「二次予選を圧倒的な強さで勝ち抜いた謎のピエロ選手!!」


 レイは静かに闘技場へ歩き出した。


「こちらの選手ですが、情報はほとんどありません!」


「プロハンターであることは確認済み!」


「現在グランフェルナ在住!」


「潜入任務が多いとのことで、特例として匿名での出場となっています!」


「正体を知るのは大会運営幹部の中でもごく僅か!」


「私も全く情報を持っていません!」


「なんと国王陛下ですら、この選手のお名前をご存じないとのことです!!」


 観客席がざわつく。


「謎に包まれた選手!」


「だからこそ実力は未知数!!」


「それにしても、この身長差!!」


 実況が二人を見比べる。


「体重は倍以上違うでしょう!」


「細身のピエロ選手が、この巨漢を相手にどう戦うのか!」


「十代プロハンター同士の一戦!!」


「それでは――」


 闘技場を包む空気が張り詰めた。


「始めぇぇぇぇぇっ!!」

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