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LAVeLESS  作者: 神矢
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72/90

10代最強を決める戦い

 ズドォォォォォン!!


 合図と同時。


 闘技場の中央で、巨大な爆発が巻き起こった。


 爆風が吹き荒れる。


 砂煙が舞い上がり、何人もの選手が光に包まれ、その場から姿を消した。


「おぉーっと!!」


「開始早々、どでかい爆発だぁぁぁ!!」


 司会の女性が楽しそうに叫ぶ。


「ちなみに戦闘不能となった選手は、傷だけが治療された状態で控え室へ転送されます!」


「命の心配はありませんので、皆さん安心してお楽しみくださーい!!」


 煙の中から、さらに爆発音が響く。


「今の一撃で、およそ二十名が戦闘不能!!」


「ですが、魔法を放った選手も一斉に狙われているーっ!!」


 開幕から大魔法を放った男へ、周囲の選手たちが一斉に襲いかかる。


 数秒後。


 その男も光に包まれ、控え室へ転送されていった。


(ルコから、たぶんバトルロイヤルになるって聞いてたけど)


 レイは飛んできた火球を僅かに身体を傾けて避ける。


(いきなりあんな魔法を使って蹴散らすとはなぁ)


 火球は後方にいた別の選手へ直撃した。


(まあ、発動した奴もすぐにやられてたけど)


 戦場の中央では、既に至るところで戦闘が始まっている。


 剣と剣がぶつかり合う。


 炎と水が衝突する。


 地面が隆起し、風の刃が舞う。


 その混乱に紛れ、レイは闇系譜の隠蔽魔法を使った。


 気配を薄める。


 魔力の漏出を抑え、他の選手たちの意識から外れるように、静かに闘技場の端へ移動する。


 派手なピエロ姿であるにもかかわらず、誰一人としてレイへ目を向けない。


(とりあえず、人数が減るまで隠れてるか)


 レイは壁際へ腰を下ろした。


 目の前では、若者たちが本戦出場を懸けて必死に戦っている。


 七十人。


 五十人。


 三十人。


 実力の足りない者たちは次々と転送され、最後まで残った者たちも、既に大量の魔力を消費している。


 残りは二十人を切っていた。


「そろそろか」


 レイは静かに立ち上がる。


「さすがに、このまま最後まで隠れてたら終わらないしな」


 腰に差していた短剣を抜く。


 刀は持ってきていない。


 この地方で刀を使う者は極めて少なく、それだけで正体を疑われる可能性がある。


 雷魔法も派手には使えない。


 普段と同じ戦い方を見せるわけにはいかなかった。


「ッ!?」


 一人の選手が、突然現れたレイに気付く。


「なんだ、こいつ!?」


 その声に、周囲の選手たちも一斉に振り向いた。


「ピエロ?」


「今までどこにいた!?」


 レイは短剣を軽く構えた。


(十人くらいでいいか)


 地面を蹴る。


「な――」


 一人目。


 短剣が首筋へ触れる。


 光に包まれ、転送。


 二人目。


 振り下ろされた剣を最小限の動きで避け、そのまま懐へ潜り込む。


 短剣の柄で顎を打ち抜く。


 三人目。


 放たれた風の刃を、倒れた選手の陰へ入り込んでやり過ごす。


 そのまま間合いを詰め、首を斬る。


「こいつ、速いぞ!」


「囲め!」


 残った選手たちが、レイへ向かって一斉に動き出す。


 だが。


「消え――」


 声を上げた時には、レイは既に背後へ回っていた。


 一人。


 二人。


 三人。


 次々と光に包まれ、闘技場から姿を消していく。


 十人近くを倒したところで、レイはそれ以上追うのをやめた。


(このくらいでいいだろ)


 残った選手たちは、別の二人によって倒されていった。


 やがて。


 広い闘技場に立っているのは、三人だけとなった。


「ついに三名まで減りましたぁぁぁ!!」


 司会の声が響く。


「ですが、あのピエロ選手は今までどこにいたのでしょうか!?」


「突然姿を現したかと思えば、一瞬で十名近くを撃破!!」


「ピエロのくせに、ずっと隠れていたのかーっ!?」


 観客席から笑い声が上がる。


(ピエロのくせにってなんだよ。)


 レイは僅かに眉をひそめた。


「そして!」


「惜しくも帝国代表決定戦で優勝を逃したものの、前大会では本戦へ出場しているバクロム選手!」


 大柄な青年が剣を肩へ担ぐ。


「さらに!」


「今大会初出場!」


「メリナード共和国魔法学園を首席で卒業した、シュレード選手!」


 杖を持った細身の青年が、静かにレイを見つめている。


「圧倒的な強さを見せた三名!」


「最後に勝ち残るのは、いったい誰だぁぁぁ!!」


 シュレードはレイから視線を外さず、隣に立つバクロムへ声をかけた。


「バクロム。」


「貴方も私も、お互いの実力はある程度知っているはずです。」


「だが、あのピエロは違う。」


 レイを睨む。


「今まで気配すら感じませんでした。」


「突然現れ、あの身のこなし。」


「得体が知れません。」


 バクロムは黙って話を聞いている。


「ここは一時的に手を組みませんか?」


「まずは二人で、あのピエロを倒す。」


(得体の知れない相手を残す方が危険だ。)


(バクロムの戦い方なら知っている。)


(ピエロを倒した瞬間に、こいつも消せばいい。)


「ふん……。」


 バクロムは鼻を鳴らした。


「いいだろう。」


「俺も同じことを考えていた。」


(何も考えてなかったけど。)


(とりあえず、あのピエロを倒した瞬間にシュレードも倒せばいい。)


「一瞬で決めるぞ!」


 二人が同時に走り出す。


 一人は右。


 一人は左。


 挟み込むように、レイへ迫る。


(まあ、そう来るよなぁ。)


 レイは小さく息を吐いた。


(じゃあ、サクッと。)


 脚へ僅かに雷魔力を纏わせる。


 派手に見えない程度。


 ほんの一瞬だけ。


 地面を蹴った。


 バチッ――。


「え――」


 シュレードの目の前から、ピエロの姿が消える。


 次の瞬間。


 首筋へ冷たい感触が走った。


「がっ……。」


 身体が光に包まれる。


「速……。」


 言葉を最後まで発するより先に、シュレードは控え室へ転送された。


「なっ!?」


 バクロムが慌てて足を止める。


 視線を巡らせる。


 だが、レイの姿を見つけることができない。


「どこだ!?」


「後ろですよ。」


 耳元で声が聞こえた。


「――ッ!」


 振り返ろうとした瞬間。


 短剣が首筋を斬る。


「ま、まさか……。」


「この俺が、目で追えないなんて……。」


 バクロムの身体も光に包まれ、闘技場から姿を消した。


 残ったのは、一人。


 派手なピエロだけだった。


「……。」


 観客席が静まり返る。


 司会の女性も、何が起きたのか理解できずに目を丸くしていた。


 数秒の沈黙。


 そして。


「な――」


 司会が我に返る。


「なんとぉぉぉぉ!!」


「一瞬!!」


「本当に一瞬です!!」


「僅かに電撃が迸ったため、雷魔法を使用したことは分かりましたが――」


「速すぎる!!」


「あの二人を、まったく寄せ付けませんでした!!」


 観客席から、割れんばかりの歓声が上がる。


「本戦出場を決めたのは――」


「謎のピエロ選手です!!」


「「ワァァァァァァァァ!!」」


 数千人の歓声が、闘技場を揺らす。


 レイは短剣を腰へ戻した。


「……。」


 自分へ向けられる大量の視線。


 鳴り止まない歓声。


 司会は何度もピエロの名を叫んでいる。


「目立たないために変装したはずなんだけどな。」


「これ、余計に目立ってないか?」


 大歓声に見送られながら、レイは一人、闘技場を後にした。

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