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LAVeLESS  作者: 神矢
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70/90

ホワイトカウビットの肉

 イベントが終わり。


 広場から少し離れた場所。


「まあ。」


 レイは抱えている箱を見る。


「結果的には助かった。」


「そうね。」


 中には、優勝賞品。


 ホワイトカウビットの肉がたっぷりと詰められている。


「ルコ。」


「ん?」


 少し前を歩いていたルコが振り返る。


「最後のやつ。」


「あぁ。」


「……まあ、ありがとな。」


 レイが少しだけ言いづらそうに言う。


 隣でヒナも頷いた。


「私からも。あのままだと、後々かなり面倒だったでしょうし。」


「いいよいいよ。」


 ルコは軽く手を振る。


「俺が参加させたことにしとけば、別に問題ないだろ。」


「そうね。」


「まあ。」


 ルコが二人を見る。


「本当に付き合ってないとは思わなかったけど。」


「お前最初から分かってただろ。」


「分かってたよ。」


「じゃあ言うな。」


「でも。」


 ルコが笑う。


「お似合いだぞ。」


「…………。」


「…………。」


「じゃ、俺こっちだから。」


「逃げたな。」


「逃げてない逃げてない。」


「ルコ!」


「またなー!」


 ヒナの声を背中に受けながら、ルコはそのまま人混みの中へ消えていった。


「…………。」


「…………。」


 残された二人。


「腹立つな。」


「えぇ。」


「まあいいか。」


「……そうね。」


 ヒナも小さく息を吐く。


 そして。


 レイが抱えている箱を見る。


「それより。」


「あぁ。」


 二人の表情が変わる。


「帰るか。」


「えぇ。」



 夕方。


「ただいまー。」


「おかえり。」


 レイが家へ戻ると、ちょうどアイリスも学園から帰っていた。


「ヒナもいる。」


「お邪魔します。」


「うん。」


 アイリスが二人を見る。


 そして。


 レイの持っている大きな箱へ視線を向けた。


「それ、何?」


「聞いて驚け。」


 レイが箱を持ち上げる。


「ホワイトカウビット。」


「…………。」


 アイリスの目が少し大きくなる。


「本物?」


「本物。」


「一頭分よ。」


「…………すごい。」


「だろ?」


 レイが得意そうに笑う。


「今日、ヒナと取ってきた。」


「取ってきた?」


「まあ色々あってな。」


 ヒナが横からレイを見る。


「色々で済ませるの?」


「説明すんの面倒だろ。」


「それはそうだけど。」


「?」


 アイリスが首を傾げる。


「まあ。」


 レイは箱を抱え直した。


「細かいことはいい。」


「いいの?」


「いい。」


 そのまま厨房へ向かう。


「せっかくだし、今日食おうぜ。」


「全部?」


「全部は無理だろ。」


「そうね。」


 ヒナも後をついていく。


「どの部位からにする?」


「まず焼くだろ。」


「煮込みもいいわよ。」


「それ明日にしようぜ。」


「じゃあ今日は焼きね。」


 アイリスも二人の後ろを歩く。


「手伝う。」


「おう。」



 しばらくして。


 食卓には、厚めに切って焼かれた肉が並んでいた。


 表面には綺麗な焼き色。


 切れば中から肉汁が溢れる。


「…………。」


「…………。」


「…………。」


 三人がそれぞれ一口食べる。


「うま。」


「美味しい……。」


「…………おいしい。」


 少しの間。


 誰も喋らなかった。


「苦労した甲斐あったな。」


「……そうね。」


 ヒナがもう一切れ取る。


「またあったら出る?」


「賞品次第。」


「私も。」


「何の話?」


 アイリスが聞く。


「気にするな。」


「気になる。」


「そのうちな。」


「…………。」


 アイリスは少しだけ不満そうな顔をした。


 だが。


 すぐに目の前の肉へ戻る。


「これ、もう一枚食べていい?」


「もちろん。」


「私ももらうわ。」


「お前もう三枚目だろ。」


「あなたに言われたくないわよ。」


「俺は働いたから。」


「私も働いたでしょう!」


「…………。」


 アイリスが二人を見る。


 少しだけ。


 笑った。


 いつもの家。


 いつもの食卓。


 ただ今日は。


 少しだけ、肉が豪華だった。

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