愛を見せて!
そして。
残った四組が、広場の中央へ並んだ。
『さあ皆様! いよいよ最終審査です!』
司会の声に、観客から大きな拍手が起こる。
『一次審査では、お互いをどれだけ理解しているのか!』
『二次審査では、二人の連携を見せていただきました!』
司会が四組を見渡す。
『ですが!』
一拍。
『最後に見るものは一つだけ!』
「…………。」
「…………。」
『――二人の愛を見せてください!!』
「…………。」
「…………。」
レイとヒナが固まった。
「愛?」
「……そう言ったわね。」
『方法は自由です! 言葉でも! 行動でも! お二人らしい形で構いません!』
「…………。」
レイがヒナを見る。
「何する?」
「私に聞かないでよ。」
「俺も分かんねぇよ。」
「考えなさいよ。」
「お前も参加者だろ。」
『それでは、一組目から参りましょう!』
「始まったぞ。」
「分かってるわよ。」
最初の二人が前へ出る。
若い男女だった。
互いに少し照れながら向かい合う。
「いつもありがとう。」
「……私も。」
男が手を差し出し。
女性がその手を取る。
「これからも、一緒にいてください。」
「もちろん。」
「おぉー!」
観客から拍手が起こる。
「…………。」
「…………。」
「普通だな。」
「普通でいいのよ。」
二組目。
少し年上の男女。
「愛を見せればいいんですよね?」
『もちろんです!』
「なら。」
男が女性の腰へ手を回した。
「え?」
そのまま引き寄せる。
ちゅっ。
「おおおおお!!」
会場が一気に沸いた。
「…………。」
「…………。」
ヒナの表情が固まった。
「キスありなんだな。」
「見れば分かるわよ。」
三組目。
こちらも負けじと抱き合い。
最後には頬へ口づける。
「おぉー!」
「仲良いな!」
「いいぞー!」
「…………。」
ヒナが黙っている。
「次、俺らだぞ。」
「…………。」
「ヒナ?」
「分かってる。」
『さあ! 最後はこのお二人!』
名前を呼ばれ。
二人が前へ出る。
『一次審査、全問一致!』
拍手。
『二次審査では驚異の二百四十五点!』
さらに大きな拍手。
『レイさん! ヒナさんです!』
「…………。」
「…………。」
二人で中央に立つ。
『それでは!』
司会が笑顔で手を向けた。
『お二人の愛を、存分に見せてください!』
「…………。」
「…………。」
何をすればいい。
レイがヒナを見る。
ヒナもレイを見る。
「…………。」
「…………。」
沈黙。
観客席から声が飛んだ。
「さっきの二人みたいにやれよー!」
「キスしろキスー!」
「ここまで来たんだから見せろー!」
「…………っ。」
ヒナの顔が赤くなる。
「早くそこの二人もキスしろよ!」
「で、できるわけないでしょ!!」
叫んだ。
「…………。」
会場が一瞬静かになった。
「なんで?」
「…………っ!」
ヒナが止まる。
「…………。」
付き合っていないから。
とは。
言えない。
「こ……。」
「?」
「こ、こんな人前でなんて!!」
「…………。」
「…………。」
会場の空気が変わった。
「あ。」
「…………いい。」
「いいな。」
「めっちゃ恥ずかしがってる。」
「かわいい……。」
「…………。」
ヒナの顔がさらに赤くなる。
「ち、違っ……。」
「何が?」
レイが横から聞く。
「あなたは黙ってて!」
「はい。」
観客から笑い声が上がった。
『なるほど!』
司会も楽しそうに笑う。
『これはこれで、お二人らしいですね!』
「らしくないわよ!」
『では、審査員の皆様! お願いいたします!』
「…………。」
ヒナが何とも言えない顔のまま審査員席を見る。
一人目の審査員が笑った。
「いやぁ、面白かったですね。」
「…………。」
「ここまで三つの審査を見てきましたが、ずっと言い合ってるんですよ、このお二人。」
観客から笑いが起こる。
「でも、不思議と嫌な感じがしない。」
一度、二人を見る。
「一次審査では相手のことをよく知っていましたし、二次審査ではほとんど言葉が必要ないほど息が合っていた。」
「…………。」
「最後はこれです。」
少し笑う。
「私はかなり好きですよ。」
拍手が起こる。
「次の方!」
受付を担当していた女性だった。
「はい。」
ヒナを見る。
「まず。」
胸を張る。
「ヒナ少佐は素晴らしかったです!」
「ありがとうございます……。」
「当然です!」
「…………。」
続いて。
レイを見る。
「そして。」
「はい。」
「…………。」
少し間。
「私はヒナ少佐のファンクラブに入ってるんですがね。」
「え。」
周囲の審査員が笑う。
「正直。」
レイを見る。
「最初はかなりショックでした。」
「…………。」
「でも。」
二人を見る。
「ここまでのお二人の活躍を見て……。」
少しだけ笑った。
「応援したくなりましたよ。ははは。」
「…………。」
ヒナが僅かに目を見開く。
「ありがとうございます。」
「…………どうも。」
レイも頭を下げた。
「ただし。」
「?」
「ヒナ少佐を泣かせたら許しませんからね。」
「なんで俺だけ。」
「当然でしょう?」
「…………。」
『ありがとうございます!』
そして。
司会が最後の一人へ顔を向けた。
『そういえば、ルコさんはお二人とかなり仲がいいんですよね?』
「ん?」
ルコが顔を上げる。
「そうなんですよ。」
「…………。」
「…………。」
嫌な予感がした。
『お二人とは、どういうご関係なんですか?』
「二人とも友人です。」
「ルコ。」
「何?」
「…………。」
レイは黙った。
「それでですね。」
ルコが楽しそうに続ける。
「彼らが初めて出会ったのは、森の中だったそうです。」
『森ですか?』
「はい。」
観客も耳を傾ける。
「お互い別々に魔物討伐をしてる最中だったみたいですよ。」
「…………。」
「そこで方針が合わなくて。」
ルコが笑う。
「大喧嘩したそうで。」
観客から笑いが起こる。
「余計なことを……。」
「言わせときなさい。」
「お前平気なの?」
「平気じゃないわよ。」
『そこから今のような関係に?』
「いやいや。」
ルコが手を振る。
「それからも色々ありまして。」
一度、二人を見る。
「強大な敵と一緒に戦ったり。」
「…………。」
「なんやかんや酸いも甘いもあり。」
「…………。」
「今ではご覧の通り。」
にこやかに笑う。
「仲良しです。」
「おぉー……。」
「いいじゃん。」
「最初は喧嘩だったのか。」
「そこから一緒に戦って……。」
観客が勝手に盛り上がり始める。
「…………。」
「…………。」
レイとヒナは黙っていた。
別に。
間違ったことは言っていない。
『なるほど……!』
司会も感心したように二人を見る。
『それを聞くと、今日のお二人の様子も少し違って見えますね!』
「そうでしょう?」
「…………。」
ヒナがルコを睨む。
ルコは気づいているくせに、笑顔のままだった。
『ではルコさん、最終的な評価はいかがでしょう!』
「そうですねぇ。」
二人を見る。
「まあ。」
少しだけ笑う。
「お似合いだと思いますよ。」
「…………。」
「…………。」
『ありがとうございます!』
司会が中央へ戻る。
『それでは!』
四組を見渡した。
『審査員の評価! そして観客の皆様の声を合わせ――今年最高のカップルを決定いたします!』
「…………。」
「…………。」
レイとヒナが顔を見合わせる。
「いけるか?」
「勝つわよ。」
「だな。」
『それでは――結果発表です!!』




