二人羽織
一次審査を通過した八組が、再び広場の中央へ集められた。
『それでは皆様! 続いて二次審査へ参りましょう!』
係員たちが運んできたものを見て。
「…………。」
レイが眉を上げる。
「マグーラ叩き?」
「また?」
少し前。
二人で勝負したばかりである。
『ただし! 今回は普通のマグーラ叩きではありません!』
司会が大きな布を広げた。
『二人羽織で挑戦していただきます!』
「二人羽織?」
『前の方はマグーラを見て、後ろの方へ指示! 後ろの方は前が見えない状態で木槌を操作していただきます!』
観客から楽しそうな声が上がる。
『制限時間内に獲得した点数で勝負! 上位四組が最終審査へ進出です!』
「なるほど。」
ヒナが競技台を見る。
九つの穴。
左上から順番に番号が振られている。
一、二、三。
四、五、六。
七、八、九。
『なお、どちらが前を担当するかは自由です!』
「私が前ね。」
「だな。」
即決だった。
マグーラを見て位置を伝える。
それならヒナの方がいい。
「番号で言うぞ。」
「えぇ。」
「余計なこと言わなくていい。」
「分かってるわよ。」
⸻
競技が始まった。
『まずは一組目!』
前の女性が声を上げる。
「右! 右!」
「どこ!?」
「そっちじゃない!」
木槌が空を切る。
「あぁ! もう引っ込んだ!」
観客から笑い声が上がった。
結果。
五十二点。
二組目。
「左上!」
「これ!?」
「違うわよ!」
「じゃあどこだよ!」
六十一点。
三組目。
四十八点。
「思ったより難しいな。」
「見えないんだもの。当然でしょう。」
その後も。
七十三点。
五十九点。
八十六点。
かなり息の合った組でも百点には届かない。
『続いて――レイさん、ヒナさん!』
「来たぞ。」
「えぇ。」
二人が前へ出る。
レイがヒナの後ろへ座り。
大きな布が二人を覆う。
ヒナの横から、レイの腕だけが出る。
「…………。」
木槌を握る。
「準備はよろしいですか?」
「はい。」
「あぁ。」
『それでは――開始!』
最初のマグーラが飛び出した。
「二。」
バンッ!
「…………。」
ほぼ同時だった。
次。
「七。」
バンッ!
「四。」
バンッ!
「九。」
バンッ!
次々と叩かれていく。
「…………。」
観客の声が少しずつ小さくなる。
「三。」
バンッ!
「六、次一。」
バンッ! バンッ!
「早くない?」
「今、指示とほとんど同時だったぞ。」
「…………。」
ヒナは前を見たまま。
番号だけを告げる。
「五。」
バンッ!
「八。」
バンッ!
レイの木槌に迷いはない。
ヒナの声を聞いてから探しているようには、とても見えなかった。
「…………。」
ヒナが僅かに眉を動かす。
「……あなた。」
「何?」
「いえ。」
今はいい。
「二。」
バンッ!
『終了ー!!』
最後の一体を叩いた直後。
鐘が鳴った。
「ふぅ。」
レイが木槌を置く。
布が外される。
『得点は――』
表示を確認した司会が止まった。
『…………二百四十五点!?』
「おぉぉぉぉ!?」
広場が一気に沸いた。
「二百!?」
「さっきの最高八十六だぞ!?」
「次元違わない?」
「ほとんど外してなかったよな?」
「ていうか、あの二人――」
誰かが笑う。
「以心伝心じゃん!」
「…………。」
「…………。」
レイとヒナが顔を見合わせた。
「だってよ。」
「そうね。」
「まあ、連携は完璧だったな。」
「…………。」
ヒナは何とも言えない顔でレイを見た。
舞台横。
審査員席でも騒ぎになっていた。
「これは……すごいですね。」
「すごいどころじゃないでしょう。」
受付を担当していた女性が胸を張る。
「ヒナ少佐なら当然です!」
「いや、でも二百四十五点ですよ?」
「それに。」
女性はレイを見る。
「ヒナ少佐の彼氏なら、これくらいやってもらわないと困りますね。」
「…………。」
隣の審査員が苦笑した。
「いや、これくらいって……。」
「当然です。」
「…………。」
ルコだけが口元を押さえていた。
「何笑ってんだ、あいつ。」
「放っておきなさい。」
その後。
残りの組の競技も終わり。
『それでは結果発表です!』
上位四組の名前が順番に呼ばれていく。
『そしてもちろん! 二百四十五点! 圧倒的第一位――レイさん、ヒナさん!』
大きな拍手が起こる。
「よし。」
「当然ね。」
二人は揃って前へ出た。
これで。
残るは四組となった。




