二人は仲良し?
しばらくして。
参加受付が締め切られた。
『それでは皆様! お待たせいたしました!』
広場に司会の声が響く。
中央に設けられた舞台の前。
参加者たちが集められていた。
「結構いるな。」
「そうね。」
レイが周囲を見る。
全部で十五組。
若い男女もいれば、かなり長く連れ添っていそうな二人もいる。
緊張している者。
楽しそうに話している者。
すでに腕を組んでいる者まで様々だった。
「…………。」
ヒナが隣を見る。
「何?」
「別に。」
「?」
レイは気にせず前を見る。
『今年もたくさんのご参加、ありがとうございます!』
司会が大きく手を広げる。
『今回集まっていただいたのは、十五組三十名! この中から――今年最も素晴らしいカップルを決定いたします!』
観客から拍手が起こる。
「…………。」
「…………。」
レイとヒナも、とりあえず拍手した。
『もちろん! 優勝したお二人には――』
「…………。」
「…………。」
『先ほどご紹介した、ホワイトカウビット一頭分のお肉を贈呈いたします!』
「絶対勝つぞ。」
「当然よ。」
小声だった。
『それではまず、審査員の皆様をご紹介しましょう!』
「審査員?」
「いるのね。」
舞台の横。
少し高く作られた席へ視線が集まる。
数人の男女が座っている。
そして。
「…………。」
「…………。」
その中に。
見覚えのある男がいた。
ルコだった。
「審査員なのかよ。」
「本当に何してるのよ、あの人。」
当の本人は二人の視線に気づいたらしい。
「…………。」
にこっ。
「…………。」
「…………。」
レイが目を逸らした。
「見るな。」
「私に言わないで。」
『それでは早速! 一次審査へ参りましょう!』
広場の端から、係員たちがいくつもの小さな板と紙を運んでくる。
『一次審査はこちら!』
司会が一枚の札を掲げた。
『――相互理解審査!』
「相互理解?」
『カップルにとって大切なのは、やはりお互いをどれだけ知っているか!』
参加者の何組かが頷く。
係員が二人一組の前へ、それぞれ回答用の板を置いていく。
『ルールは簡単です! お互いの答えが一致していれば一点!』
「なるほど。」
『まず一人の方に、質問への答えを書いていただきます! もちろん相方には見えないように!』
『その後、もう一人の方にも同じ質問へ答えていただきます!』
『お二人の答えが一致していれば合格です!』
『次の質問では回答する順番を交代! これを繰り返し、お二人がどれだけ互いを理解しているか審査いたします!』
「簡単そうだな。」
「どうかしら。」
『答えが一致すれば一点! 次の質問では回答する順番を交代します!』
『これを繰り返し、獲得点数の高いカップルが一次審査通過となります!』
会場から声が上がる。
『なお今回は十五組と大勢ですので、五組ずつ三つの組に分かれて行います!』
係員が参加者を順番に分けていく。
『そして公平を期すため、それぞれの組で質問内容も変更いたします!』
やがて。
「レイさん、ヒナさんはこちらへお願いします。」
「あ、はい。」
「分かりました。」
二人も指定された場所へ移動する。
五組。
横一列。
舞台からも、観客からもよく見える場所だった。
「…………。」
ヒナが周囲を見る。
「人、多いわね。」
「今さら?」
「言わないで。」
「はいはい。」
『それでは、こちらの五組から参りましょう!』
司会が参加者たちを見渡す。
『最初の質問に答えを書いていただくのは――女性の皆様です!』
「私からね。」
「あぁ。」
ヒナが渡された紙とペンを取る。
『男性の皆様は、合図があるまで答えを見ないようお願いいたします!』
「…………。」
ヒナが隣を見る。
「何?」
「…………別に。」
レイは何食わぬ顔で前を向いている。
ヒナは少しだけ目を細めた。
『それでは――!』
司会が最初の札を手に取った。
『最初の質問です!』
司会が札を掲げる。
『女性側が、一番得意な屋台遊戯は何でしょう!』
「…………。」
レイが横を見る。
「簡単だな。」
「見ないで。」
「見てねぇよ。」
ヒナが紙へ答えを書く。
伏せる。
『それでは男性の皆様、お答えください!』
五人がそれぞれ紙へ書いていく。
レイは迷わなかった。
『では、同時にどうぞ!』
回答が掲げられる。
ヒナ。
『輪投げ』
レイ。
『輪投げ』
『一致です!』
観客から拍手が起こる。
「まあ、これはな。」
「何度もやってるものね。」
『続いて第二問! 今度は男性側が先に答えてください!』
レイが紙を受け取る。
『男性側が、下級区の屋台でよく選ぶ食べ物は?』
「…………。」
少し考える。
書く。
『女性の皆様、お願いします!』
ヒナもペンを走らせる。
『では、どうぞ!』
二人の紙が上がった。
『肉の串焼き』
『肉の串焼き』
『またまた一致!』
「さっきも食ってたしな。」
「あなた、だいたいお肉でしょう。」
「お前も食ってただろ。」
「私は色々食べるわよ。」
『第三問です!』
再び女性側へ紙が渡される。
『今度は少し難しくいきましょう!』
「難しく?」
『女性側が一番好きな花は何でしょう!』
「…………。」
ヒナの手が止まった。
「へぇ。」
「何よ。」
「いや。」
ヒナは少し考えてから、紙へ書いた。
『それでは男性の皆様!』
「…………。」
レイはすぐに答えを書く。
その様子を。
ヒナが横目で見ていた。
『一斉にどうぞ!』
紙が上がる。
ヒナ。
『紫桔梗』
レイ。
『紫桔梗』
『一致です!!』
「おぉ!」
観客から、先ほどより大きな声が上がった。
『これは素晴らしい! 三問連続!』
「…………。」
ヒナは自分の紙を見る。
次に。
レイを見る。
「…………。」
「何?」
「私、好きな花なんて話したことないわよね?」
小声だった。
「あぁ。」
「…………センス使ってないでしょうね?」
「禁止って言われた?」
「…………卑怯者。」
「ルールは守ってる。」
「……そう。」
ヒナが呆れたように前を向いた。
『では第四問! 今度は男性側です!』
「次来たぞ。」
「はいはい。」
『男性側が、勝負に負けた時に最初にすることは?』
「…………。」
レイがヒナを見る。
「何だよ。」
「別に。」
「絶対なんかあるだろ。」
「早く書きなさいよ。」
レイが紙へ書く。
ヒナも回答する。
『では、どうぞ!』
レイ。
『言い訳』
ヒナ。
『言い訳する』
「おい。」
『一致です!』
「待て。」
「何よ。」
「俺そんな言い訳する?」
「するでしょう。」
「しねぇよ。」
「さっき輪投げでしてたじゃない。」
「してないだろ。」
「七本入れたからプレッシャーになるって。」
「あれは事実を言っただけだ。」
「ほら。」
「何がだよ。」
『仲が良いですねぇ!』
司会の声に、観客から笑いが起きた。
「…………。」
「…………。」
二人は前を向いた。
『第五問!』
女性側が再び先に答える。
『相手と一緒にいる時、一番よくすることは?』
「…………。」
ヒナが少し考える。
書いた。
レイも続けて答える。
『では、どうぞ!』
ヒナ。
『口喧嘩』
レイ。
『喧嘩』
「…………。」
「…………。」
『これは――一致でいいでしょう!』
会場から笑いと拍手が起きる。
「他になかったの?」
「お前こそ。」
「だって一番多いでしょう。」
「まあ、多いな。」
『そして最後の問題です!』
「最後か。」
『今度は男性側から!』
レイが紙を構える。
『今、この会場で一番欲しいものは何でしょう!』
「…………。」
「…………。」
レイが書く。
ヒナも。
ほとんど迷わなかった。
『では――どうぞ!』
二人同時に紙を上げる。
『ホワイトカウビット』
『ホワイトカウビット』
『一致!!』
「よし。」
「当然ね。」
『なんと六問すべて一致! 満点です!!』
観客から大きな拍手が起こった。
他の四組からも感心したような声が上がる。
「楽勝だったな。」
「…………。」
ヒナがレイを見る。
「何だよ。」
「半分くらいあなたの実力じゃないでしょう。」
「勝ちは勝ちだ。」
「…………。」
「何。」
「別に。」
『それでは続いて、次の五組へ参りましょう!』
二人は係員に促され、端へ移動する。
その後も審査は続いた。
質問は組ごとに変わる。
好きな料理。
苦手なもの。
休日の過ごし方。
相手が喜ぶ贈り物。
答えが一致するたび歓声が上がり。
外れるたびに笑いが起きた。
やがて。
三組すべての審査が終わる。
『それでは、集計が完了いたしました!』
広場へ再び参加者が集められた。
『一次審査を通過するのは――上位八組!』
「八組か。」
「半分くらいね。」
『まず一組目――!』
順番に名前が呼ばれていく。
そして。
『六問すべて一致! 文句なしの満点! レイさん、ヒナさん!』
「よし。」
「当然ね。」
二人は揃って前へ出た。
舞台横。
審査員席では。
「…………。」
ルコが二人を見ながら笑っていた。
「…………。」
「…………。」
「絶対なんか企んでる顔だな。」
「見ない方がいいわよ。」
「そうだな。」
こうして。
十五組いた参加者は、八組まで絞られた。




