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LAVeLESS  作者: 神矢
PR
66/87

好物の代償

 二人はそのまま、広場の東側に設けられた受付へ向かった。


 簡易的な机がいくつか並び、その前には参加を希望する男女が列を作っている。


「結構いるな。」


「そうね。」


「まあ、関係ないけど。」


「あら。随分自信があるのね。」


「お前もだろ。」


「当然。」


 しばらく並び。


「次の方、どうぞー!」


 二人の番が来た。


「参加希望です。」


「はい! では、お二人のお名前を――」


 受付をしていた女性が顔を上げる。


「…………。」


 ヒナを見る。


「…………え?」


「?」


「あの。」


「はい。」


「ヒナ少佐……ですよね?」


「えぇ、そうです。」


「やっぱり!」


 受付の女性の表情が一気に明るくなる。


「私、何度か軍の式典でお見かけしたことがあって……!」


「そうなんですね。」


「はい! まさかこんなところでお会いできるなんて……。」


「今日は休みなので。」


「そうなんですか!」


 受付の女性は嬉しそうに頷き。


 ふと。


 隣にいるレイを見る。


「…………。」


「?」


 もう一度ヒナを見る。


「……彼氏、いたんですね。」


「…………。」


 ヒナの表情が僅かに固まった。


「…………。」


 レイを見る。


 受付を見る。


「う……。」


 否定する。


 その言葉が喉まで出かかり。


「…………。」


 カップルイベント。


「えぇ。」


 僅かな間。


「……まぁ、そうね。」


「そうだったんですね……。」


「…………。」


 受付の女性が、ゆっくりレイを見る。


「…………。」


「…………。」


 なんだ。


 その目は。


 明らかに恨めしそうだった。


「……どうも。」


 とりあえず会釈する。


「…………。」


 返事がない。


「おい。」


 レイが小声でヒナへ寄る。


「なんか俺、めちゃくちゃ睨まれてない?」


「気のせいじゃない?」


「絶対気のせいじゃないだろ。」


「知らないわよ。」


「お前のせいじゃん。」


「何で私のせいなのよ。」


「ヒナ少佐。」


「はい?」


「こちらにお名前をお願いします。」


「あ、はい。」


 二人が申込書へ名前を書いていると。


「あれ?」


 聞き慣れた声がした。


「ん?」


「?」


 二人が振り返る。


「…………。」


「…………。」


 ルコだった。


「あっ……。」


 レイの声が漏れる。


 ヒナも僅かに目を見開いた。


 ルコは二人を見る。


 受付を見る。


 申込書を見る。


 そして。


 もう一度、二人を見る。


「…………。」


 少しだけ間があった。


「二人とも。」


「…………。」


「…………。」


「おめでとう。」


「あ、あぁ……。」


「あ、ありがとう……。」


「へぇ。」


 ルコが二人を交互に見ながら笑う。


「お似合いだなぁ。」


「…………。」


「…………。」


 二人とも何も言えない。


「ルコさん。」


 受付の女性が顔を上げた。


「お二人とはお知り合いなんですか?」


「あぁ。二人とも友人。」


「そうなんですね。」


「うん。」


 ルコは当然のように続ける。


「めちゃくちゃ仲良いから、こいつら。」


「…………。」


「…………。」


 受付の女性がレイを見る。


 先ほどまでの露骨に恨めしそうな目が、ほんの少しだけ和らいだ。


「……そうなんですか。」


「あぁ。下級区でもよく二人で遊んでるぞ。」


「ルコ。」


「何?」


「…………。」


 レイは黙った。


 何も言えない。


 ヒナも同じだった。


「まあ。」


 ルコは二人の申込書を見る。


「こいつら普通に優勝しちゃうんじゃね?」


「そんなにですか?」


「あぁ。」


 二人を見る。


「勝負事は二人とも強いし。」


 少し笑って。


「相性もいいからな。」


「…………。」


「…………。」


 受付の女性は、改めて二人を見る。


 先ほどよりは納得したようだった。


「……なるほど。」


「だろ?」


「でも。」


 もう一度、レイを見る。


「…………。」


「なんですか。」


「別に。」


「絶対何かありますよね?」


「ありません。」


「…………。」


 まだ少し。


 視線が痛かった。


 受付を済ませ。


 二人は少し離れた場所まで歩いた。


「…………。」


「…………。」


 しばらく無言。


 先に口を開いたのはヒナだった。


「……なんでルコがいるのよ。」


「知らねぇよ。」


 レイは振り返り、遠くの受付を見る。


 ルコはまだそこにいて、何やら係員と話していた。


「まあ、あいつならこういうイベントの運営側にいてもおかしくねぇけど。」


「それは……そうね。」


 人脈は広い。


 祭りや催し物にも、いつの間にか関わっていることがある。


 そこについては別に不思議でもない。


「…………。」


 ヒナが足を止めた。


「どうした?」


「忘れてた。」


「何を?」


「ファンクラブ。」


「…………あぁ。」


 レイも思い出す。


「聞いたことあるな。」


「…………。」


「会員かなりいるんだよな?」


「知ってたなら先に言いなさいよ!」


「なんで俺が言うんだよ!」


「普通気づくでしょう!」


「お前のファンクラブだろ!」


「私は許可してないわよ!」


「知らねぇよ!」


 レイは呆れたように息を吐く。


「そもそも勝手に作られてるもんなんだから、今さらだろ。」


「今さらじゃないわよ。」


 ヒナは眉間を押さえた。


「さっきの人だって、明らかに私のこと知ってたじゃない。」


「まあな。」


「ということは。」


「ん?」


「今日ここに私が参加してることも、普通に広まる可能性があるってことでしょう?」


「…………。」


 レイが少し考える。


「まあ、あるかもな。」


「しかも。」


 ヒナがレイを見る。


「あなたと。」


「…………。」


「何。」


「別に。」


「言いたいことがあるなら言えよ。」


「ないわよ。」


「なら睨むな。」


「睨んでない。」


「睨んでるだろ。」


「…………。」


 ヒナは小さく息を吐いた。


「まあ……いいわ。」


「いいの?」


「今日だけでしょう?」


「あぁ。」


「終わった後に、別れたってことにすれば――」


 そこまで言って。


「…………。」


 止まった。


「どうした?」


「…………待って。」


「何?」


「それ、まずくない?」


「何が?」


「今日ここで優勝したとして。」


「あぁ。」


「一番カップルらしいって評価された直後に。」


「あぁ。」


「すぐ別れたことになるのよ?」


「…………。」


「…………。」


 レイも考える。


「……確かに。」


「でしょう?」


「何があったんだってなるな。」


「それだけならまだいいわよ。」


 ヒナが顔をしかめる。


「下手したら、私が何かしたと思われるじゃない。」


「俺が何かした可能性もあるだろ。」


「あなたはどうでもいいのよ。」


「酷くない?」


「私は立場があるの!」


「俺にもあるわ!」


「近所の犬のお散歩でしょう?」


「まだ言うか!?」


「事実でしょう!」


「プロハンターだよ!」


「知ってるわよ!」


「…………。」


「…………。」


 また少し睨み合う。


 やがて。


「まあ。」


 レイが先に目を逸らした。


「まだ始まってもないし。」


「そうね。」


「終わってから考えればいいだろ。」


「…………。」


「まず肉だ。」


「…………。」


 ヒナも少し考え。


「そうね。」


 今考えたところで答えは出ない。


 何より。


 まだ優勝すらしていない。


「まずは勝つわよ。」


「あぁ。」


「絶対に。」


「当然。」


 二人は再び広場へ向かって歩き出した。


受付を済ませ。


 二人は少し離れた場所まで歩いた。


「…………。」


「…………。」


 しばらく無言。


 先に口を開いたのはヒナだった。


「……なんでルコがいるのよ。」


「知らねぇよ。」


 レイは振り返り、遠くの受付を見る。


 ルコはまだそこにいて、何やら係員と話していた。


「まあ、あいつならこういうイベントの運営側にいてもおかしくねぇけど。」


「それは……そうね。」


 人脈は広い。


 祭りや催し物にも、いつの間にか関わっていることがある。


 そこについては別に不思議でもない。


「…………。」


 ヒナが足を止めた。


「どうした?」


「忘れてた。」


「何を?」


「ファンクラブ。」


「…………あぁ。」


 レイも思い出す。


「聞いたことあるな。」


「…………。」


「会員かなりいるんだよな?」


「知ってたなら先に言いなさいよ!」


「なんで俺が言うんだよ!」


「普通気づくでしょう!」


「お前のファンクラブだろ!」


「私は許可してないわよ!」


「知らねぇよ!」


 レイは呆れたように息を吐く。


「そもそも勝手に作られてるもんなんだから、今さらだろ。」


「今さらじゃないわよ。」


 ヒナは眉間を押さえた。


「さっきの人だって、明らかに私のこと知ってたじゃない。」


「まあな。」


「ということは。」


「ん?」


「今日ここに私が参加してることも、普通に広まる可能性があるってことでしょう?」


「…………。」


 レイが少し考える。


「まあ、あるかもな。」


「しかも。」


 ヒナがレイを見る。


「あなたと。」


「…………。」


「何。」


「別に。」


「言いたいことがあるなら言えよ。」


「ないわよ。」


「なら睨むな。」


「睨んでない。」


「睨んでるだろ。」


「…………。」


 ヒナは小さく息を吐いた。


「まあ……いいわ。」


「いいの?」


「今日だけでしょう?」


「あぁ。」


「終わった後に、別れたってことにすれば――」


 そこまで言って。


「…………。」


 止まった。


「どうした?」


「…………待って。」


「何?」


「それ、まずくない?」


「何が?」


「今日ここで優勝したとして。」


「あぁ。」


「一番カップルらしいって評価された直後に。」


「あぁ。」


「すぐ別れたことになるのよ?」


「…………。」


「…………。」


 レイも考える。


「……確かに。」


「でしょう?」


「何があったんだってなるな。」


「それだけならまだいいわよ。」


 ヒナが顔をしかめる。


「下手したら、私が何かしたと思われるじゃない。」


「俺が何かした可能性もあるだろ。」


「あなたはどうでもいいのよ。」


「酷くない?」


「私は立場があるの!」


「俺にもあるわ!」


「近所の犬のお散歩でしょう?」


「まだ言うか!?」


「事実でしょう!」


「プロハンターだよ!」


「知ってるわよ!」


「…………。」


「…………。」


 また少し睨み合う。


 やがて。


「まあ。」


 レイが先に目を逸らした。


「まだ始まってもないし。」


「そうね。」


「終わってから考えればいいだろ。」


「…………。」


「まず肉だ。」


「…………。」


 ヒナも少し考え。


「そうね。」


 今考えたところで答えは出ない。


 何より。


 まだ優勝すらしていない。


「まずは勝つわよ。」


「あぁ。」


「絶対に。」


「当然。」


 二人は再び広場へ向かって歩き出した。

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