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LAVeLESS  作者: 神矢
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真面目な生徒たち

月曜日。


「すみません先生。今週だけ、魔法を使う練習には参加できません。」


「……何?」


「課題なんです。」


「誰からの?」


「レイ先生です。」


「…………。」


 魔法研究部。


 顧問は困惑しながら生徒を見る。


「何の課題だ?」


「魔力操作です。」


「魔力操作……?」


「はい。」


「一週間、魔法を使わずに?」


「はい。」


「…………。」


 意味が分からない。


 だが、部活動そのものを休むわけではなかった。


 座学には参加する。


 研究もする。


 魔法を使わない範囲の訓練もする。


 ただ、魔法を発動する時だけ参加しない。


「……まあ、一週間だけなら。」


「ありがとうございます。」


 別の部活でも。


「今週は魔法を使えません。」


「どうしてだ?」


「戦闘魔法術の課題です。」


「……魔法を使わないことが?」


「はい。」


「…………。」


 顧問たちは揃って首を傾げた。


 何をさせているんだ、あの臨時講師は。



 授業中。


 一年Sクラスの生徒たちは、教師の話を聞きながら魔力を身体の内側で動かしていた。


 右手から。


 左足から。


 肩から。


 頭から。


 それぞれ指定した場所だけから、しゅぅううう、と細く魔力を放出している。


 ほとんどの教師は、最初こそ怪訝そうにしながらも黙認していた。


 だが、中にはそうでない者もいた。


「君たち。」


 教授が授業を止める。


「さっきから何をしている。」


「魔力操作の訓練です。」


「訓練?」


「はい。」


 教授は教室を見渡した。


 全員が身体のどこかから細く魔力を漏らしている。


「意味の分からないことをするのはやめなさい。」


「すみません。それはできません。」


「……何?」


「課題なので。」


「誰の課題だ。」


「レイ先生です。」


「…………。」


 教授の眉間に皺が寄る。


「今は私の講義中だぞ。」


「はい。」


「なら、その課題はやめて講義を聞きなさい。」


「聞いてます。」


「…………。」


 教授はしばらく黙った。


「では――今説明した内容を、簡潔にまとめてみろ。」


「はい。」


 指名された生徒は少し考え、教授が今説明した内容を要点だけ抜き出して答える。


「……以上です。」


「…………。」


「合ってますか?」


「……合っている。」


「ありがとうございます。」


 そして生徒は、何事もなかったように魔力操作を続けた。


 しゅぅううう。


「…………。」


 教授は何とも言えない顔で授業を再開した。



 一週間。


 生徒たちは言われた通りに過ごした。


 授業を受ける。


 食事をする。


 友人と話す。


 部活動にも参加する。


 その間も、レイに教えられた魔力操作を続ける。


 最初は意識しなければできなかった。


 話しかけられれば止まる。


 本を読めば乱れる。


 歩きながらでは上手くいかない。


 だが。


 レイの予想通り。


 休みの一日で、全員が殆ど意識せずできるようになっていた。


 更にそこから、少しずつ難度を上げ、慣れていく。


 授業を聞きながら。


 食事をしながら。


 廊下を歩きながら。


 身体の中で魔力を動かし、指定した場所からだけ放出する。


 そして、魔力が回復すればまた繰り返す。


 誰も、自分が強くなったなどとは思わなかった。


 まだ魔法を使っていない。


 確認する方法がない。


 ただ――。


 昨日よりはやりやすい。


 それだけは全員が感じていた。


 一方。


 生徒たちがそんな一週間を過ごしている頃、学園側では別の問題が持ち上がっていた。


「あの臨時講師は、いったい何をやっているんだ?」


 職員たちの間で、レイの授業について話題になり始めていた。


「授業中に妙な魔力操作をさせているらしい。」


「それだけじゃない。今週は魔法を使うなと指示したそうだ。」


「魔法を?」


「あぁ。部活動でもだ。魔法を使う訓練だけは参加するな、と。」


「ここは魔導学園だぞ?」


 当然の疑問だった。


 魔法を学ぶための学校で、魔法を使わせない。


 しかも一週間。


「何を考えているんだ。」


「生徒から苦情は?」


「……それが。」


 一人の教授が言いにくそうに口を開く。


「ない。」


「何?」


「あの強さに厳しいSクラスが?」


「あぁ。」


「…………。」


「…………。」


「ただし、教師側からは何件か出ている。」


「教師から?」


「授業中まで、あの妙な魔力操作を続けているらしい。」


「止めさせなかったのか?」


「止めようとはした。」


 別の教授が苦い顔で口を挟む。


「私も注意したよ。講義中に別の訓練をするな、と。」


「それで?」


「……聞いていると言うから、その場で説明した内容を答えさせた。」


「答えたのか?」


「簡潔に、ほぼ完璧にな。」


「…………。」


「授業を聞いていないなら強く言えるんだが……聞いている以上、それ以上はな。」


 何とも言えない沈黙が落ちる。


 一年Sクラス。


 学園でも特に優秀な生徒が集められたクラスである。


 当然、教師を見る目も厳しい。


 前任の講師が辞めた原因の一つも、彼らとの関係にあった。


 その生徒たちが――。


「たった一日だぞ?」


「そうなんだが……。」


「…………。」


 気に食わない。


 ただでさえプロハンターというだけで、急遽連れてきた臨時講師だ。


 それが学園の教育方針から外れたことを始めている。


 授業中に妙なことをさせ。


 一週間、魔法まで使わせない。


「とにかく、あの男にいつまでもいてもらっては困る。」


「しかし、正規講師がまだ……。」


「…………仕方ない。」


 しばらく考えた末、一人が口を開いた。


「軍に頼もう。」


「軍に?」


「あぁ。あまり恩を売りたくはなかったが……仕方ない。」


 王立魔導学園の教師に求められる水準は高い。


 まして一年Sクラスの戦闘魔法術を任せられる人材となれば、簡単には見つからない。


 だが、軍まで伝手を広げれば話は別だ。


「正規講師を見つける。」


「……分かった。」


「本人には誰かに伝えさせろ。」

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