グランフェルナ王立魔導学園
七月中旬。
「――じゃあ、今日はここまで。」
「「「ありがとうございました!」」」
「おう。また来週な。」
講義を終え、レイは教室を見渡した。
何人かは残ってノートを見直している。
今日の内容について話し合っている者もいれば、分からなかったところを質問しに来る者もいる。
レイはそれに一つずつ答え、教室を出た。
「…………。」
廊下を歩きながら、ふと思う。
「何も問題ないんだけどなぁ……。」
一年Sクラス。
学園から聞いていた話では、かなりの問題児たちらしい。
確かに最初は、少し試されもした。
だが、それだけだ。
こちらが実力を見せれば素直に認めた。
講義を始めれば真面目に聞く。
課題もこなす。
分からないことがあれば質問する。
教えたことを自分たちで考え、次までに試してくる。
「普通に優秀なんだよな。」
少なくとも、レイには問題児には見えなかった。
それなのに。
気づけば七月中旬。
レイは未だに毎週、この学園へ来ていた。
「いつまで続くんだ、本当に……。」
一度は終わった仕事だった。
正規の講師が見つかったと言われ、そのまま学園を去った。
ところが二週間後。
突然呼び戻された。
学園で問題が起きている。
生徒たちは自分に懐いているようだから、講師として入って様子を見てほしい。
何かあれば対応してほしい。
大体そんな話だった。
だから引き受けた。
講師というのも、あくまで生徒たちの中へ自然に入るための名目みたいなものだと思っている。
実際、自分は教師ではない。
何でも屋だ。
依頼を受けて、学園の問題を解決するために来ている。
――そのはずなのだが。
「…………。」
何も起きない。
最初の頃から、生徒たちはレイの講義を素直に聞いていた。
その後も問題を起こす様子はない。
他の講義について何か相談されることもない。
学園から新しい指示が来るわけでもない。
ただ毎週土曜日に来て。
戦闘魔法術を教えて。
帰る。
それをずっと繰り返している。
「……経過観察って、こんな長くやるもんか?」
レイは首を傾げる。
まあ、学園側にも何か考えがあるのだろう。
今のところ大した手間でもない。
報酬も出る。
頼まれている以上は、仕事としてやる。
それはいい。
ただ。
「もう解決してないか?」
何も問題が起きていないのだから。
「…………。」
少し考えて。
「まあ、そのうち終わるか。」
深く考えるのをやめた。
――終わる予定など、とっくになくなっているとも知らずに。




