ラヴェレス誕生秘話 終
それから。
何でも屋には、少しずつ依頼が入るようになった。
荷物運び。
掃除。
修理。
探し物。
時には魔物退治まで。
そして。
ある日の昼下がり。
「あそこの何でも屋。」
「態度最悪だよね。」
「あー。」
「分かる分かる。」
「いっつも。」
『めんどくせぇ……。』
「って言ってる。」
「そうそう。」
「やる気ありませーん、って感じ。」
「あはは。」
「でも。」
「腕はいいんだよねぇ。」
「それはそう。」
「この前、棚の修理頼んだら。」
「一時間くらいかかると思ってたのに。」
「十分で終わったよ。」
「私も。」
「荷物運んでもらったけど。」
「一人で全部持ってった。」
「しかも走って。」
「何なの、あの人。」
「分かんない。」
「あと安いよね。」
「あぁ。」
「それ。」
「この前なんて。」
『思ったより早く終わったから。』
『これでいいです。』
「って。」
「勝手に安くされた。」
「商売する気あるのかねぇ。」
「ないんじゃない?」
「依頼するたびに嫌そうだもん。」
「でも。」
「アイリスちゃんはいい子なのにねぇ。」
「あぁ。」
「あの子はほんといい子。」
「いつもちゃんと挨拶するし。」
「困ってる人いたらすぐ手伝うし。」
「営業もあの子がやってるんでしょ?」
「そうみたい。」
「じゃあ。」
「主人の方いらないんじゃない?」
「いや。」
「あいつが仕事するんだよ。」
「あははは!」
「確かに。」
「じゃあ、もう頼まなきゃいいのに。」
「……。」
「……。」
一瞬。
全員が黙る。
「でも。」
「頼んじゃうんだよねぇ。」
「分かる。」
「私。」
「あの『めんどくせぇ』聞くの好き。」
「あははは!」
「私も!」
「今度、庭の手入れ頼もうかな。」
「いいじゃん。」
「絶対嫌な顔するよ。」
「見たい見たい。」
楽しそうな笑い声が。
昼下がりの街へ響いていた。
⸻
「レイ。」
「ん?」
「依頼追加。」
「お。」
アイリスが一枚の依頼書を差し出す。
レイは受け取り、内容へ目を通した。
「いつ?」
「三日後。」
「三日後……。」
壁に掛けられた予定表を見る。
「午前は荷物運び。」
「昼から修理。」
「その後か。」
「うん。」
「分かった。」
レイは予定表へ新しい依頼を書き込む。
そして。
少しだけ手を止めた。
「……。」
「最近。」
「依頼多すぎない……?」
「そう?」
「あぁ。」
「最初こんなんじゃなかっただろ。」
アイリスは少し考え。
「私の営業が。」
「上手いのかも。」
「……。」
レイはアイリスを見る。
どこか得意げだった。
「……そうか。」
「うん。」
「……。」
レイは何も言わず。
予定表へ視線を戻した。
そこには。
いくつもの依頼が並んでいる。
レイを外へ出すために、始めた。
何でも屋 《ラヴェレス》。
今日も。
大繁盛だった。




