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LAVeLESS  作者: 神矢
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39/90

本当の再会

 瞼を開く。


 見知らぬ天井。


「……。」


 レイはゆっくりと身体を起こした。


 全身が痛む。


 特に、顔が痛い。


「……あの野郎。」


 小さく呟き。


 辺りを見回す。


 知らない部屋だった。


 ベッドと椅子。


 小さなテーブル。


 それ以外にはほとんど何もない。


 そして、すぐ側。


「……。」


 ベッドへもたれかかるように。


 一人の少女が眠っていた。


 銀色の髪。


 長い耳。


「アイリス……。」


 レイは、しばらく何も言わず。


 その寝顔を見つめる。


 静かな寝息。


 身体に目立った傷はない。


 ちゃんと、ここにいる。


 レイは手を伸ばした。


 銀色の髪へ触れる。


 ゆっくりと、頭を撫でる。


「……よかった。」


 小さく。


 本当に小さく呟いた。


 その時、扉が開く。


「おっと。」


 聞き覚えのある声。


「邪魔したか。」


 レイが振り返る。


 そこには、顔を腫らしたリュウが立っていた。


 そして。


 ニヤリと笑う。


「幼女好き。」


「なんだと?」


 レイの眉が動く。


「ガキはママのおっぱいでも飲んでろ。」


「あぁん?」


 リュウの眉も動いた。


「ママンはいねぇよ。」


「死んだ。」


「あっ……。」


 レイは一瞬だけ黙る。


「……わりぃ。」


「ん?」


 リュウが目を丸くする。


「やけに素直だな。」


「お前もあれか。」


「母親いねぇのか。」


「あぁ。」


「……。」


「……。」


 少しだけ。


 静かな時間が流れる。


 リュウは頭を掻いた。


「じゃあ。」


「俺ら。」


「ちょっと寂しいな。」


「……そうだな。」


 それだけ言って。


 二人とも黙った。


 だが。


 次の瞬間、リュウの口元が。


 ニヤリと吊り上がる。


「そういや。」


「さっきの喧嘩。」


「俺の勝ちだったよな?」


「あ?」


 レイの目付きが変わる。


「俺の方が倒れるの遅かったじゃねぇか。」


「は?」


 リュウも睨む。


「気絶するのは俺の方が遅かった。」


「あ?」


「やんのか?」


「上等だ。」


「表出ろ。」


 二人が、同時に立ち上がろうとした。


 その時。


「……ん……。」


 小さな声。


 二人の動きが止まる。


 レイが振り返る。


 アイリスの瞼が、僅かに動いていた。


「……。」


 ゆっくりと。


 銀色の瞳が開く。


 ぼんやりと、周囲を見回し。


 そして。


 すぐ目の前にいる男を見つける。


「…………レイ?」


 レイは静かに微笑んだ。


「ああ。」


「おはよう。」


 その一言だけだった。


 アイリスは呆然とレイを見つめる。


「……。」


「……。」


 夢。


 そう思った。


 だって。


 もう二度と会えないと思っていた。


 また会いたい。


 そう願い続けた人が。


 今。


 目の前で笑っている。


「……ほんとに?」


 掠れた声で呟く。


「ほんとだ。」


 レイは優しく答えた。


「もう。」


「終わった。」


 その言葉を聞いた瞬間。


 アイリスの瞳から、大粒の涙が溢れた。


「っ……!」


 堪えようとしても。


 止まらない。


「レイ……。」


「レイっ……!」


 椅子を倒す勢いで立ち上がる。


 そして。


 迷うことなく。


 レイへ飛び込んだ。


「うわっ。」


 勢いよく胸へ飛び込んできた小さな身体を。


 レイはしっかりと受け止める。


「よかった……。」


「よかったぁ……。」


 服をぎゅっと掴み。


 顔を埋め。


 子供のように泣きじゃくる。


「もう会えないかと……。」


「私……。」


「私……。」


 言葉にならない。


 ただ。


 泣くことしかできなかった。


「……悪かった。」


 レイは静かに呟く。


 銀色の髪を、そっと撫でる。


「迎えに来るの。」


「遅くなった。」


 アイリスは何度も首を横へ振る。


「違う……。」


「違うの……。」


「来てくれた……。」


「それだけで……。」


「それだけでいいの……。」


 レイの服を掴む力が、少しだけ強くなる。


 レイは何も言わず。


 ただ優しく。


 その小さな背中を抱き寄せた。


 部屋の入口で。


 その光景を見ていたリュウは。


 ふっと口元を緩める。


 何も言わない。


 静かに扉を閉め。


 二人だけの時間を残して、部屋を後にした。

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