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LAVeLESS  作者: 神矢
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拳と拳

「おい。」


「離してやれ。」


 護衛達が一斉に手を離す。


 その瞬間。


 レイが動いた。


 横にいた護衛を拳一つで吹き飛ばし。


 床を蹴る。


 一直線。


 躊躇なく。


 右拳を振り抜いた。


 ――ドゴォォォッ!!


 全力の右ストレート。


 リュウの身体が。


 壁際まで何度も跳ねながら吹き飛ぶ。


 最後に石壁へ激突した。


 部屋中が静まり返る。


 シュロの顔から。


 血の気が引く。


(……は?)


 リュウは。


 ゆっくり立ち上がる。


 頬を押さえ。


「……いってぇ。」


 口元の血を親指で拭う。


「踏ん張ってなかったから。」


「吹っ飛んじまった。」


 そして。


 心底楽しそうに笑った。


「お前。」


「魔力使ってねぇよな。」


「その細腕。」


「どんな力してんだよ。」


 肩を回す。


「ははっ……。」


「いい。」


「最高だ。」


 次の瞬間。


 床が砕けた。


 二人は同時に踏み込む。


 拳。


 拳。


 拳。


 避けない。


 受ける。


 殴る。


 蹴る。


 吹き飛ぶ。


 立つ。


 また殴る。


 その一撃一撃は。


 石壁を砕き。


 床を割り。


 部屋そのものを揺らしていた。


 拳が交わる。


 殴る。


 殴られる。


 蹴る。


 蹴り返す。


 互いに一歩も引かない。


 避けようともしない。


 ただ。


 真正面から。


 力の限りぶつかり合う。


 轟音が何度も響き。


 石壁が砕け。


 床には無数の亀裂が走っていた。


 誰も。


 止めようとはしない。


 止められなかった。


「はぁ……。」


「はぁ……。」


 二人とも。


 息は荒い。


 頬は腫れ。


 口元から血が流れている。


 それでも。


 笑っていた。


「はぁ……。」


 リュウが肩で息をしながら笑う。


「初めてだ……。」


「こんな熱い奴。」


「お前。」


「俺の部下にならねぇか?」


「アホな事言ってんじゃねぇ。」


 レイも笑いながら息を吐く。


「マフィアなんて。」


「かっこ悪い職業。」


「誰がやるか。」


「……雑魚。」


 一瞬。


 静まり返る。


「…………。」


 リュウの額へ。


 青筋が浮かんだ。


「あー。」


「死亡決定。」


「ハゲ。」


「ハゲはお前だろ。」


 レイは鼻で笑う。


「生え際。」


「大丈夫か?」


「ちょっと心配になるわ。」


「このハゲ。」


「ハゲハゲうっせぇぞ!!」


 リュウが踏み込む。


「チビのくせに調子乗ってんじゃねぇ!!」


「お前。」


「目大丈夫か?」


 レイも踏み込む。


「俺の拳で視界まで吹っ飛んだか?」


「どう見ても。」


「お前の方がチビだ。」


「うっせぇチビ!!」


「死ね!!」


「お前が死ね!!」


 まるで。


 子供の喧嘩だった。


 だが。


 その度に。


 建物が揺れる。


 壁が砕け。


 床が陥没する。


 誰一人。


 口を挟めなかった。


「……はぁ。」


 レイが膝へ手をつく。


 肩が上下する。


 リュウも同じだった。


「……はぁ。」


「……はぁ。」


 互いに。


 もう拳が上がらない。


 それでも。


 どちらからともなく笑った。


「……楽しいな。」


 リュウが呟く。


「……アホか。」


 レイも笑う。


「お前だけだ。」


「こんな状況で楽しんでんの。」


「お前も。」


「笑ってるじゃねぇか。」


「……。」


 レイは何も言わない。


 否定もしなかった。


 リュウが拳を構える。


「最後だ。」


 レイも。


 ゆっくり拳を握る。


「ああ。」


 二人は同時に踏み込んだ。


 右拳。


 右拳。


 真正面。


 互いの顔面へ。


 ――ドゴォォォォォッ!!


 鈍い衝撃が。


 部屋中へ響き渡る。


 二人の身体が。


 その場で止まる。


 一瞬の静寂。


 そして。


 同時に。


 仰向けへ倒れた。


 ドサッ――。


 誰も動かない。


 静まり返る部屋。


 シュロも。


 警備員達も。


 言葉を失っていた。


 地下街ラクエン。


 その日。


 【地砕の暴君】リュウ・リスタードと。


 レイ。


 二人の男は。


 互いを認め合うように。


 同時に気絶した。

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