メロリアの役目
土曜日の朝。
レイは講義で使う資料を鞄に入れていた。
アイリスも制服に着替え、玄関で靴を履く。
「今日、講義が終わったらメロリア先生に呼ばれてる。」
「研究の相談?」
「ああ。それと、うちの屋上を貸してほしいんだって。」
「屋上?」
「中級区から天体観測をしたいらしい。」
「うん。わかった。」
「今日は帰り、一緒にならないかもな。」
「分かった。私、先に帰る。」
レイが鞄を持ち上げる。
「じゃあ、行くか。」
「うん。」
二人は並んで家を出た。
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メロリアは戦闘魔法術の教室へ向かっていた。
今日はアイリスに頼まれている。
レイをしばらく学園に引き止めて、十九時頃に家へ連れて帰る。
研究の相談なら、話したいことはいくらでもあった。
一日の講義を終えたレイが教室から出てくる。
「お疲れさまです、レイ先生。」
「お疲れさまです。研究室でいいですか?」
「はい。」
研究室に入ると、メロリアは一枚の星図を広げた。
「これ、どう思います?」
レイは星図を覗き込む。
「周りの星の動きに、少しずれがありますね。」
「そうなんです。」
メロリアは別の日の記録を並べた。
「観測の誤差かと思ったんですが、何度確かめても同じ方向へずれます。」
「近くに、まだ見つけていない天体があるんですか?」
「まずはそう考えました。でも、見える範囲にはありません。」
レイは二枚の記録を見比べた。
「……すごく重いものが、そこにあるとか。」
「ええ。私も、そう考えています。」
「ただ、それだけ周りに影響するなら、どうして見えないのかが分からなくて。」
レイは何気なく言った。
「光も逃げられないくらい、強く引きつけてるのかもしれませんね。」
メロリアの手が止まる。
「……光も?」
「いや、思いつきですけど。」
「星が潰れて、ものすごく小さく、重くなったら……そういうこともあるのかなと。」
「待ってください。」
メロリアは椅子を引き寄せた。
「星が潰れる、というのは?」
「大きな星にも、いつか終わりが来るでしょう。」
「その時に外へ散るものもあれば、内側へ潰れていくものもあるかもしれない。」
「内側へ……。」
メロリアは新しい紙を取り、計算を始めた。
レイも隣から覗く。
「今ある記録だけで、そこまで分かります?」
「分かりません。」
「でも、考えられます。」
メロリアは顔を上げない。
「レイ先生、こちらの星の動きも見てください。」
「これ、さっきの場所とは別ですよね。」
「はい。同じ考え方が使えるか確かめたいんです。」
二人は星図を取り替え、計算を続けた。
一つ疑問が出るたびに、メロリアが別の記録を引っ張り出す。
レイもいつしか椅子を寄せ、自分から紙に線を引いていた。
「もしその位置にあるなら、こっちの星にも影響が出ませんか?」
「……出ますね。記録を探します。」
「俺も手伝います。」
窓の外が暗くなっても、二人は机から離れなかった。
メロリアが時計を見たのは、星図を取りに棚へ向かった時だった。
「あ。」
「どうしました?」
「……もう、こんな時間です。」
十九時が近い。
レイを引き止める役目など、途中からすっかり忘れていた。
「続きは、また今度にしましょう。」
「そうですね。まだ記録も足りないですし。」
レイは書きかけの紙をメロリアへ返した。
「じゃあ、うちの屋上へ行きますか。」
「はい。」
メロリアは記録をしまい、レイと一緒に研究室を出た。
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家に着くと、レイはメロリアを外階段へ案内した。
「屋上へは、二階から上がれます。」
「はい。」
階段を上り、リビングの扉を開ける。
レイはそこで足を止めた。
壁には色とりどりの飾りがかかり、テーブルには料理が並んでいる。
その向こうで、アイリスとマリーが立ち上がった。




