ハッピーバースデー
「レイ、お誕生日おめでとう。」
「おめでとう、レイさん!」
「おめでとう!」
レナが笑い、ヒナもグラスを置いて振り向く。
「お誕生日おめでとう、レイ。」
「……おめでとう。」
メルはアイリスの隣から、小さく手を振った。
サリアも席に座っている。
「おめでとう、レイ君。」
「…………。」
レイは部屋を見渡した。
もう一度、アイリスを見る。
「……今日、俺の誕生日か。」
「うん。」
「忘れてた。」
「そうだと思った。」
アイリスは少し笑った。
レイは背後のメロリアを振り返る。
「先生、もしかして最初から?」
「研究の相談は本当ですよ。」
「屋上は?」
「そちらも、あとで見せてください。」
メロリアは楽しそうに笑う。
「でも、まずはお誕生日おめでとうございます。」
「……ありがとうございます。」
レイが部屋へ入ると、アイリスが近づいてきた。
「みんなで、レイのお祝いをしたかった。」
レイは彼女の顔を見て、それからもう一度、集まった人たちを見た。
「……そっか。」
鞄を下ろし、少し照れくさそうに笑う。
「ありがとな。」
「ほら、主役は座って。」
ヒナが空いている席を指した。
「主役って……。」
「今日はそうなの。」
レイが椅子に座ると、レナが料理の皿を少し寄せ、ヒナがグラスにワインを注いだ。
「いいのを持ってきたわよ。」
「ありがとう。」
レイがグラスを手に取ったところで、呼び鈴が鳴った。
「私、出る。」
アイリスが扉を開ける。
外階段の上に、ルコが立っていた。
「よう。間に合ったな。」
「ルコ?」
レイが席から振り向く。
「お前、今日は予定があるから飲みに行けねぇって言ってただろ。」
「ああ。お前の誕生日会。」
アイリスがルコを見た。
「なんで知ってるの。」
「俺が知らないことはない。」
「気持ち悪い。」
「ひど。」
「嘘。」
アイリスは少し笑った。
「ルコも誘おうと思ってたけど、事務所にもいなかったから。」
「安心しろ。」
「全部お見通しだ。」
「やっぱり気持ち悪い。」
「結局それかよ。」
ルコが笑いながら部屋へ入る。
「で、俺のグラスは?」
「来ると思ってなかったから、出してない。」
「ひどくないか?」
アイリスは棚からグラスを一つ取り出し、テーブルに置いた。
アイリスがルコのグラスを並べると、レイが立ち上がろうとした。
「俺も何か運ぶよ。」
「座ってて。」
アイリスがすぐに言う。
「今日は私たちがやるから。」
「……はい。」
レイが座り直すと、マリーが笑った。
「アイリスちゃん、ずっと準備してたんだよ。」
「マリーも手伝ってくれた。」
「メルもね。」
ヒナが言うと、メルが小さく頷いた。
「……野菜、切った。」
「ありがとうな。」
メルは少しだけ嬉しそうに、グラスを持ち上げた。
アイリスが料理を取り分け、レイの前に置く。
「これ、作ってみた。」
レイは一口食べた。
アイリスがじっと顔を見る。
「どう?」
「うまい。」
「よかった。」
アイリスは安心した顔で、自分の席に戻った。
「ケーキもあるよ〜。」
レナが奥に置いた箱を指さす。
「レイがいつも食べるチーズケーキと、みんなで選んだのを何種類か作ってきた。」
「何種類も? 大変だったろ。」
「楽しかったから平気。」
「シャルも選んだ。」
アイリスが言う。
「あいつも?」
「うん。夜は門限があるから来られないって、残念がってた。」
「あいつは未成年の貴族だもんな。」
レイはヒナを見る。
「ヒナと一緒でもダメなのか?」
「まあ、色々あるのよ。」
「そっか。」
レイはそれ以上聞かなかった。
「今度会ったら、お礼言っとくよ。」
レナが笑う。
「シャルちゃんが選んだのは、食べる時に教えるね。」
「分かった。楽しみにしとく。」
「ケーキの前に、まず乾杯だろ!」
ルコがグラスを上げた。
「まだ料理もあるんだから、落ち着きなさいよ。」
ヒナが言いながら、自分もグラスを持つ。
大人たちはワインを、アイリスたちは果実の飲み物を手にした。
「レイ。お誕生日おめでとう。」
アイリスの声に、みんなのグラスが上がる。
「おめでとう!」
「……ありがとな。」
グラスが触れ合い、賑やかな声が部屋に広がった。




