国への説明
翌日。
学園長室に、メロリア、バルテシア、レイが集まっていた。
「すごかったよ。君の研究が、やっと花を咲かせたね。」
「ありがとうございます。」
「私も嬉しかった。君の彗星を、ようやく見られたからな。」
バルテシアの言葉に、メロリアは笑った。
学園長の机には、王城から届いた書状がある。
「大臣たちが騒いでいてね。王から、早急に説明に来てほしいそうだよ。」
「それ、行かなきゃいけませんか?」
「私も行きたくないんだけどねぇ。」
「私もだ。」
「俺は行きません。」
レイが言うと、メロリアが振り向いた。
「どうしてですか?」
「国の仕事を頼まれる可能性を、できるだけ減らしたいので。」
「それなら、前みたいに変装すればいいです。」
「……またですか?」
「はい。王には私が説明します。レイ先生は隣で聞いていてください。」
「俺がいる必要、ないですよね。」
「私が一緒に来てほしいんです。」
メロリアは当たり前のように言った。
「二十年追いかけた彗星を、王に話すんですよ。」
「……。」
「変装なら、得意でしょう?」
レイは学園長とバルテシアを見る。
二人とも助けてくれそうになかった。
「分かりました。目立たないようにしますよ。」
「はい。一緒に行きましょう。」
メロリアは満足そうに頷いた。
学園長が書状を置く。
「そうそう。王は個人的には『とても素晴らしかった。また見たい』と仰っていたそうだよ。」
メロリアの顔が明るくなる。
「では、五歳の頃に見た話から、二十年分お話しします。」
「長くなりそうだな。」
バルテシアが笑う。
「はい。最後には王にもひれ伏していただきます。」
「あの王なら、本当にひれ伏しそうですけどね。」
レイが言うと、メロリアは嬉しそうに笑った。
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王城の会議室には、王と数人の大臣が集まっていた。
学園長が昨夜の経緯を説明し、続いてメロリアが彗星について話す。
窓の外には、昼の王都が広がっている。
「つまり、昨夜あの光が現れるまで、彗星はそこにあっても見えなかったのか。」
王が尋ねた。
「はい。」
メロリアは頷く。
「五歳の頃に、ほんの一瞬だけ光を見ました。」
「以来、二十年間追い続けていたんです。」
「二十年……。」
王はメロリアを見た。
「その間、ずっとか。」
「はい。」
「何度計算し直しても、軌道はそこにありました。」
「昨夜、ようやく皆さんにも見ていただけました。」
メロリアは嬉しそうに笑った。
王も頷きかけたが、大臣の一人が口を開く。
「研究の成果は理解しました。」
「しかし、あれほど大きな魔法を王都の上空へ放つなら、事前に知らせていただきたかった。」
「知らせたら、止められたでしょう?」
メロリアが即座に返す。
大臣が言葉に詰まった。
学園長が穏やかに間へ入る。
「そこは、こちらも手続きが足りなかったと思っています。」
「発動できる条件が揃ったのが昨夜でしたので、時間もありませんでした。」
「そもそも、王都に危険はなかったのか。」
別の大臣が尋ねる。
メロリアが答えようとしたところで、王の視線が彼女の後ろに向いた。
「君は先ほどから、ずっと術式の記録を見ているな。」
変装したレイが顔を上げる。
「はい。」
「メロリアの助手か?」
「研究を少し手伝いました。」
「なら、君からも聞かせてくれ。」
レイはメロリアを見る。
彼女が頷いたので、机に広げられた記録を王の方へ向けた。
「まず、昨夜の魔法は彗星を地上へ引き寄せるものではありません。」
「見えなくなっている原因に働きかけて、光が届くようにするための術式です。」
レイは記録の一部を指さした。
「こちらが、メロリア先生の計算した彗星の位置と軌道です。」
「そして、この部分で魔法が作用する範囲を絞っています。」
「範囲を絞る?」
「はい。」
「無関係な場所にまで作用しないよう、調整しました。」
「私も発動前に確認しています。少なくとも、王都の建物や人に作用する術式ではありません。」
王は記録に目を落とした。
「君が調整したのか。」
「メロリア先生と一緒に、何度か改良しました。」
「何度か、ではありません。」
メロリアが横から口を挟む。
「この方がいなければ、昨日の発動には間に合いませんでした。」
「先生の二十年の計算があったから、改良できたんですよ。」
レイが返す。
王は二人を見て、少し笑った。
「なるほど。よく分かった。」
今度はバルテシアが、用意してきた検証の記録を机に置いた。
「発動後に確認できた結果も、こちらにまとめてある。」
「術式の説明と照らし合わせながら見ていただきたい。」
大臣たちが記録に目を落とす。
質問はいくつも出た。
バルテシアが検証について答え、メロリアが彗星の軌道を説明する。
術式について聞かれれば、レイも記録を示しながら答えた。
やがて王が、記録を閉じた。
「皆、聞きたいことは聞けたか。」
大臣たちは互いに顔を見合わせ、頷いた。
「では、あとの手続きは学園長と詰めてくれ。」
王が言うと、側近が大臣たちを案内した。
扉が閉まる。




