研究者と酒と音楽と
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しばらくして、女将が座敷へやってきた。
「皆様、そろそろお時間ですが、いかがなさいますか?」
「今日はこの辺で。」
レイは女性たちを見た。
「この後、お散歩に行ける子は来ていいよ。」
四人が顔を見合わせる。
女将は笑って頷いた。
「それでは、お支度をしてまいりますね。」
レイがお会計を頼もうとすると、サリアが先に声をかけた。
「ここは私が払おう。」
「え?」
「食事も美味しかったし、楽しかったからな。」
メロリアがサリアを見る。
「サリアが、研究以外で楽しんでいるところなんて初めて見ました。」
「料理も酒もよかった。」
サリアは当然のように言った。
レイが尋ねる。
「いいのか?」
「うむ。気にしなくていい。」
「私は年上だ。」
「それを言ったら、私が一番年上だろう。」
バルテシアが口を挟んだ。
「ここは私が払う。」
サリアは少し考えてから頷く。
「では、次の店を頼む。」
「……そう来るか。」
「一番年上なんだろう?」
メロリアが笑い、レイもつられて笑った。
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二軒目は、地下街でもひときわ大きなバーだった。
奥にステージがあり、二階には大人数で使える貸切のフロアがある。
レイたちは女の子たちと一緒に二階へ上がった。
席からは、ステージ全体がよく見える。
階下の客席はすでに埋まっていた。
「ここにはよく来るのか?」
サリアが尋ねる。
「ああ。ショーが面白いんだよ。」
レイが答えたところで、店内の灯りが落ちた。
ステージの中央に光が集まる。
一人の少女が姿を見せると、客席から歓声が上がった。
音楽が始まる。
少女は軽やかにステージを駆け、曲に合わせて踊った。
大きく動いても、指先まで綺麗に揃っている。
メロリアは手すりに少し身を寄せた。
「すごいですね。」
「うむ。」
サリアもステージから目を離さない。
「踊りが上手い。」
「歌もこれからですよ。」
レイが言うと、二人はますます楽しそうに舞台を見た。
曲が進み、少女が歌い始める。
客席の歓声が少し静まり、今度はその声に聞き入った。
「……あの子は誰ですか?」
メロリアが尋ねる。
「ああ。ラクエンで一番人気のアイドル。」
レイはステージを見た。
「ニーナだな。」
曲が終わると、階下から大きな拍手が起きた。
メロリアとサリアも、並んで手を叩いた。
レイたちと一緒に来た女性も、拍手を送っていた。
「いつ聞いても素敵な声ですよね〜。」
「今日は特に調子がいいかも。」
バルテシアも立ち上がり、惜しみなく拍手する。
「感動した。素晴らしいパフォーマンスだ!」
バルテシアは立ち上がって拍手した。
「彼女の音盤を買うぞ!」
バルテシアが言うと、レイの隣にいた女性が笑った。
「後で販売会があると思いますので、その時に。」
「サインももらえますよ。」
「本当か!」
バルテシアは再びステージを見た。
「私も買おう。」
サリアが言う。
「私も欲しいです。」
メロリアも頷いた。
「今日は、知らない世界をたくさん教えてもらえて、とてもよかったです。」
メロリアは隣のサリアを見る。
「サリアも楽しんでいますし。また来たいですね。」
「悪くはなかったが、私はもう来ないぞ。」
「大丈夫。来るから。」
レイが当然のように言った。
「来ないと言っただろう!」
「来たら来たで楽しむだろ。」
「私は外の空気が毒なんだ!」
「今日も平気だったじゃん。」
サリアはしばらくレイを睨んだ。
「……諦めの境地だな。」
「俺はお前と遊びたいんだから、仕方ないだろ。」
その場にいた人たちが、一瞬だけ言葉を止めた。
サリアが少し目を見開く。
「友達だからな。」
「……うむ。」
サリアは照れくさそうに口元を緩め、ステージへ目を向けた。
メロリアは二人を見て、嬉しそうに笑った。
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販売会で音盤を買い、バルテシアはニーナからサインももらった。
店を出ると、レイは一緒に来た女性たちをムラサキまで送り届けた。
「今日はありがとうございました。」
以前レイと散歩をした女性が頭を下げる。
「こちらこそ。またな。」
「はい。お待ちしています。」
ほかの三人も、それぞれメロリアたちに挨拶をして店へ戻っていった。
四人だけになり、バルテシアが手にした音盤を見下ろす。
「まさか、こんなものを買って帰るとはな。」
「楽しそうでしたよ。」
メロリアが笑う。
「君もな。」
「はい。とても。」
サリアも、買った音盤を持っている。
「サリアは、家に帰ったらすぐ聞く?」
レイが尋ねた。
「いや。今日は十分に聞いた。」
サリアは音盤へ目を落とす。
「明日、研究の合間に聞く。」
「そっか。」
メロリアは、二人のやり取りを聞きながら夜の地下街を見回した。
知らない場所で食事をして、音楽を聞いた。
サリアとも、久しぶりに研究以外の時間を過ごせた。
「また来ましょうね。」
メロリアが言うと、レイが頷く。
「ええ。」
サリアは返事をしなかった。
けれど、音盤を手にしたまま、少し楽しそうに歩いていた。




