星をさがして
風呂から上がった後、二人はマリーの部屋で夜が更けるのを待った。
広いベッドの上には、寝間着ではなく外へ出るための服が並んでいる。
「そろそろ行く?」
「うん。」
マリーが部屋の扉を少し開け、廊下を覗いた。
誰もいない。
二人は靴を持って部屋を出た。
階段を下りる途中、マリーが何度か振り返る。
「アイリスちゃん、誰かいる?」
「……いない。」
「よかった。」
屋敷を出てから靴を履く。
夜の上級区は静かだった。
通りにはまだ灯りがある。
マリーは少し早足になり、アイリスも隣を歩いた。
「本当に星が増えてたら、どうしよう。」
「……数える。」
「そうだよね。まずは数えないと分からないもんね。」
学園の門には誰も立っていなかった。
二人が学生証をかざすと、門が開く。
昼間とは違い、敷地内はひっそりとしていた。
それでも、校舎のいくつかの窓には明かりがついている。
「まだ先生がいるんだね。」
「……研究してるのかも。」
二人は校舎へ入った。
廊下の先から足音が聞こえた時、アイリスがマリーの手を引く。
壁際に身を寄せると、研究室から出てきた先生が書類を抱えて通り過ぎていった。
マリーは足音が遠ざかるまで、息をひそめていた。
「……もう大丈夫?」
「うん。」
二人は再び最上階を目指す。
だが、階段へ続く扉の前で足が止まった。
魔法鍵がかかっている。
「どうしよう。別の階段、探す?」
「……開ける。」
アイリスが鍵に手を添えた。
錠が一瞬だけ光り、静かに外れる。
「えっ。今の、解錠魔法!?」
「うん。」
「それ、普通は使えないやつだよね!?」
「レイから教わった。」
「そんなことまで教わるんだ……。」
「悪用厳禁だって。」
「いや、これ悪用じゃないの?」
「星を見に来ただけだから。」
「そういう問題かな……?」
アイリスは扉を開け、マリーを先に通した。
最上階へ続く扉を抜け、二人は廊下を進んだ。
奥の教室から、淡い光が漏れている。
近づくにつれ、低い音が聞こえてきた。
アイリスが足を止める。
「……誰かいる。オーラ、消して。」
「えー……あれ難しいもん……。」
アイリスはすぐに自分のオーラを抑えた。
マリーは目を閉じ、少し時間をかけてから頷く。
「……できたと思う。」
「うん。大丈夫。」
二人は教室の扉へ近づいた。
隙間から中を覗く。
床には、いくつもの術式が重なるように広がっていた。
線を伝って光が走るたびに、低い音が響く。
その中心に、メロリアが立っていた。
「……メロリア先生?」
マリーが声をひそめる。
アイリスも頷いた。
星が一つ増えるという窓は、メロリアの向こう側にある。
だが、二人とも窓を見るのを忘れていた。
メロリアが術式を見下ろし、小さく笑った。
「……あと少し。」
「これが完成すれば、あいつをこの空に呼び出せる。」
マリーがアイリスの腕を掴む。
「ふふ……これで、人類を震え上がらせることができますね。」
メロリアは顔を上げた。
「王が私にひれ伏す姿まで、目に浮かびます。」
マリーの指に力が入る。
アイリスは教室の中をもう一度見た。
術式の光はまだ流れている。
だが、何をしようとしているのかは分からない。
「……戻ろう。」
アイリスが囁く。
マリーは何度も頷いた。
二人は足音を立てないよう、教室から離れた。




