リーベル孤児院
王都の下級区、その外れ。
人通りの多い通りから少し離れた場所に、《リーベル孤児院》はあった。
敷地はかなり広い。
大きな建物の前には、子供たちが走り回れるほどの庭が広がり、その一角には畑や物干し場も見える。
敷地の端には、小さな教会が併設されていた。
派手さはない。
けれど、綺麗に手入れされている。
庭からは子供たちの楽しそうな声が聞こえていた。
「こんにちはー。」
「あら。」
教会の司祭でもあるローズが顔を上げた。
「レイさん。」
「今日はお仕事の日じゃありませんよね?」
「あぁ。」
レイは少年と妹へ視線を向ける。
「前に話してた子。」
「一応、見学。」
ローズは優しく頷いた。
「もちろんです。」
妹の前まで歩き、ゆっくりしゃがみ込む。
「こんにちは。」
「私はローズです。」
「みんなには、お母さんって呼ばれてます。」
妹は少年の後ろへ隠れた。
ローズはそのまま微笑む。
「大丈夫。」
「今日は遊びに来たと思ってください。」
その時だった。
庭の向こうで、黒い猫耳がぴくりと動く。
黒い尻尾を揺らしながら、一人の少女がこちらへ歩いてきた。
少し離れた場所で立ち止まる。
こちらへ背中を向けたまま、小さく首を傾けた。
レイは思わず笑う。
「おい。」
猫耳がぴくりと動く。
「逃げるのか?」
その一言を待っていたように、黒猫獣人のメルは勢いよく駆け出した。
「おい待て。」
レイも笑いながら追いかける。
敷地の外へ出て。
路地を抜ける。
壁を蹴り、屋根へ飛び乗る。
振り返ったメルが、にやりと笑う。
そのまま屋根の端まで走り、勢いよく飛び出した。
レイは面白そうに笑う。
「おっ。」
「なるほどね。」
レイもそのまま屋根から飛び降りる。
地面へ着地する。
頭上。
屋根の縁から黒い尻尾がゆらりと揺れた。
メルがひょいっと身体を持ち上げる。
屋根の上から、にやりと笑い、小さく手を振る。
レイも笑う。
「新しい技使ったな!」
「危うく騙されるところだった。」
得意げに胸を張るメル。
レイはにやりと笑った。
「でも。」
「パンツ見えてるぞ。」
「──っ!?」
メルは慌ててスカートを押さえる。
顔を真っ赤にしてレイを睨む。
「ばかっ!」
ダッ。
全力で屋根の上を駆け出した。
「おい!」
「俺から逃げられると思うなよ!」
レイも笑いながら追いかける。
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少年は呆然と二人を見送る。
「……何だったんですか?」
ローズは思わず笑った。
「あの子。」
「レイさんとの追いかけっこが、一番の楽しみなんです。」
「毎回、どうやったら驚かせられるか考えてるみたいですよ。」
「へぇ……。」
少年は少し驚いたように笑う。
ローズは二人が走り去った方を眺める。
「でも。」
「最初からあんなだったわけじゃないんです。」




