ノア外伝 答え合わせ②
ゲルムの答え合わせ
では。
続いて。
情報調査部、調査隊隊長。
ゲルムの推理についても、答え合わせをしておこう。
彼は。
ノアと出会ってから、様々な推測をしてきた。
その答えは。
果たして、どれほど当たっていたのか。
ゲルム「大会優勝者は、トーリア家の関係者だ」
→ ある意味、正解です。
大会優勝者であるレイは。
確かに、トーリア家と関係があります。
ですが。
経緯が逆です。
トーリア家が大会優勝者を隠しているのではありません。
大会で目立ちたくなかったレイが。
自分の正体を隠すため、トーリア家に協力してもらいました。
結果だけ見れば。
「大会優勝者とトーリア家には繋がりがある」
という推理は当たっています。
なお。
普通に考えて、そんな経緯を予想できるわけがありません。
ここについては。
ゲルム。
あなたは悪くありません。
ゲルム「あんな若造が、あの奥様と……? いや、私の方が大人の魅力がある。…………あっ、諜報員か」
→ 違います。
諜報活動ではありません。
ノアくんは。
年上のお姉さんに好かれやすいだけです。
ただの不倫です。
ゲルム「月二百万ベルを提示した時、確かに驚いていた。だが、その直後には当然だという態度……やはり、最初の反応まで演技だったのか?」
→ 違います。
普通に驚いていました。
年収ではありません。
月収二百万ベルです。
現在、寮付きで15万ベルの給与なので。
ノアくんにとっては、とんでもない金額でした。
では、なぜ。
その直後に。
「まぁ、それくらいですよね」
などと言ったのか。
→ 格好をつけたかっただけです。
隊長補佐として誘われた人間が。
金額を聞いた瞬間に喜ぶのは、少しダサい。
そう思ったので。
知ったような顔をして。
「当然ですよね」
と言いました。
それだけです。
ゲルム「貴族のパーティーへの潜入を断ったのは……ルコを経由し、あの優秀な何でも屋と我々を繋げるためだったのか?」
→ 違います。
普通に。
「十七歳の令嬢の恋人として貴族のパーティーに潜入して、対象から情報を聞き出してください」
などという依頼を持ってきたゲルムを。
頭のおかしい人だと思いました。
自分には絶対にできないので。
断りました。
その結果。
ゲルムはルコへ相談し。
偶然。
何でも屋のレイへ辿り着きました。
ちなみに。
その何でも屋が。
あなたたちが喉から手が出るほど欲しがっている。
魔導大会優勝者です。
ゲルム「内容を聞く前に依頼を受けた……やはり、我々がこの案件を持ってくることまで把握していたのか?」
→ 違います。
何も知りません。
前回の依頼を断ったことを。
ノアくんは、少し申し訳なく思っていました。
なので。
「次の依頼は、できるだけ受けよう」
と思っていただけです。
結果。
内容も聞かずに。
「やります」
と言いました。
なお。
その後、短時間で依頼を達成できたのは。
不倫相手の友人と、たまたま繋がりがあったからです。
ノアくんは。
何もないところから、最初の手掛かりを見つける。
0から1を作ることは苦手です。
ですが。
一つでも手掛かりがあれば。
そこから人間関係や情報を繋ぎ。
次へ辿っていく。
1から2へ進むことは得意です。
これは。
本当にノアくんの才能です。
ゲルム「王城への潜入を断った……やはり、王家直属の人間だからでは?」
→ 違います。
ノアくんは。
王家直属ではありません。
王城に潜入しろと言い始めたゲルムを見て。
とうとう本当に頭がおかしくなったのかと思いました。
怖かったので断りました。
そして。
その王城潜入を代わりに完璧に達成した何でも屋。
また、大会優勝者です。
あなたたちは。
もう何度も。
探している本人へ仕事を頼んでいます。
ゲルム「会社への潜入自体は失敗した。だが、ノアさんは撤退を選ぶことで、こちらの損害を最小限に抑えてくれた」
→ 少し違います。
ゲルム「それに、完全に取り押さえられ、身動き一つ取れない状態から脱出した。私なら、あの状況では諦めるしかない」
→ 違います。
脱出していません。
捕まえた警備員から。
逃がしてもらいました。
なお。
その警備員は。
ビヨンド商会が以前から何度も仕事を依頼している。
何でも屋のレイです。
そして。
もうお分かりですね。
大会優勝者です。
レイは《センス》によって。
ノアの身体能力まで確認しました。
多少は鍛えている。
だが。
完全な素人。
危険な人間ではない。
そう判断した結果。
「ここ入っちゃダメだよ。早くこっちから出て」
と。
普通に逃がしてくれました。
多少の疑いはありますが、驚くほどビビっていたため。
それは、プロの侵入者ではなく。
夜中に学校へ忍び込むちょっとヤンチャな若者、のような印象を持ちました。
レイはわりと、そのくらいの可愛い悪いことに耐性があります。
「お前、何やってんだ。次来たらぶっ飛ばすぞ、はは(笑)」
くらいで終わってます。
ノアは。
その事実を。
何一つ隠していません。
「潜入直後、とんでもない警備員に取り押さえられました」
「全く気づけませんでした」
「身動き一つ取れませんでした」
「なんとか逃げてきました」
ほぼ全て。
正直に報告しています。
ゲルムが。
勝手に深読みしました。
ゲルム「全案件を共有した途端、案件処理速度が上がった。人材配置まで行い、現場の人間が経験を積めるよう考えている……」
→ 正解です。
おめでとうございます。
ここに来て。
ようやく。
ほぼそのまま正解です。
ノアには。
情報を整理し。
人と情報を繋ぎ。
適切な人間へ仕事を振り分ける。
管理職としての才能がありました。
ただし。
ゲルム「こちらから頼んでもいないのに、ここまでしてくださるとは……月三百万ベルでは、あまりにも安すぎる。早く増額を要求してくださればいいのだが」
→ そこも事実ですが、理由が違います。
ノアくんは。
あなたたちから全案件を渡されたことで。
「なるほど!」
「最初から管理職として採用されていたんだ!」
「現場の依頼は研修だったんだ!」
「研修が終わったから、正式に隊長補佐の仕事を任されたんだ!」
と。
全てを勘違いしました。
そして。
「こんなにもらっているんだから、ちゃんと働かないと」
と。
真面目に頑張っています。
ちなみに。
ノア本人が考えている自分の適正報酬は。
現在受け取っている金額より。
一桁ほど低いです。
そのため。
月三百万ベルでも。
未だに。
「こんなにもらっていいのかな……」
と、少し申し訳なく思っています。
一方。
ビヨンド商会は。
「月三百万ベルしか払っていないのに、ここまでしていただいている」
と、申し訳なく思っています。
双方。
申し訳なく思っています。
理由は。
全く違います。
そして。
ゲルム。
あなたが追い続けている。
正体不明の魔導大会優勝者。
貴族のパーティーへの潜入を依頼した何でも屋です。
王城へ潜入してもらった何でも屋です。
ノアを一瞬で取り押さえた警備員です。
あなたは。
何度も会っています。
何度も仕事を頼んでいます。
その度に。
完璧に仕事をしてもらっています。
そして現在も。
ノアが、その大会優勝者だと思っています。
以上。
ゲルムの答え合わせでした。




