第52話騎士は駆ける。
リン視点~
なぜ?あなたが?ここに?死んだはずなのに?
「なぁ、ニン、生きててくれよ。俺は、みんなを助けて、戻ってくるから!」
ハハッ、これじゃぁまるでニンが死んでしまう、みて~だなぁ。でも大丈夫だ。あいつは、強いから。それに、味方かは分からないが、一人の騎士が降りてくるのを見た。新手かは分からない。けど、あの騎士が、ミライ国王が言っていた、国の王ならば、見方のはず。ん? これは、風? あともう少しか、もう少しで外に、地上に出れる! ッ!
「なんだここは?」
そこは、一つの広い空間だった。いや、広いかも狭いかも分からない。天井? のようなところは、光っている。これは、魔力で出来ている? のか? 分からない。けど、おぞましい何かってことだけは分かる。それが何かは分からないけど。ふと、目に入る。それは、まるで祭壇のような、ッ! もし、これが黒龍の言っていた、″悪魔の祭壇″ だとすれば! それからは、ドス黒い魔力が漂っていた。いや、正確には渦巻いていた、かな? でも、俺の人として、生き物として、直感が言っている。これは、ヤバイと。不味いと。逃げろと、言っている。吐き出しそうだった言葉を飲み込み、自分に言い聞かせる。大丈夫だ。大丈夫だ。とね。それでも、治らない。背中に服がピタッと着くのが分かった。汗をかいている。顔が熱い。耳が赤くなっているだろうか? おそらく、なっているだろう。後ろから、感じたことのある、視線と、魔力が感じる。後ろを向く。気づいたら、向いていた。それは、無意識に起こしたものだった。見たことのある、髪。目。口。一つ違うのは、黒い服を着ていた。ロ~ブだろうか? 知りたくもなかった。なぜ? あなたが? ここに? 死んだはずなのに? 黒龍、お前は絶対に許さない。
「ドレサ王女。」
ああ、なぜだろう? こんな、生きた屍にも涙は流してしまうのか。死んでいると、分かっているのに! 期待をするのか。希望を捨てられないのか! 黒龍、お前人間を何だと思っているんだ? ああ、そう! 確かにお前からすれば、小さく、弱く、脆いだろう。それでも必死に生きているんだ! 足掻いて足掻いて足掻いて! 生きているんだ! なのに、なのに、どうして、こんな非道なことが出来る? 人の弱味に漬け込み、心を壊す。ハカセにもそうやって漬け込んだのか? 破壊をしたのか? ああ、黒龍。お前は生きる資格もない。生きる必要性もない。お前は、殺されるべきだ! 死ぬべきだ! 裁いてやる! 地獄の果てまで、裁いてやる!
「″リフレクトフラッシュ″」
鏡? ああ、お前はそんなことまでさせるのか。あの人の手まで汚すのか? あの人はな、攻撃の仕方なんて覚えていた。けど、しなかった。使わなかった。なぜだと思う? お前じゃぁ到底理解できないだろうな。あの人はな、傷つけたくなかったんだ。誰一人として。理不尽な死を嫌っていた。
「グッ!」
喰らってしまった。俺には、避ける資格もない。だけど、俺はもう覚悟をした! あなたと約束もした! 俺は、仲間のために、あなたを殺す! ドレサ!
「″神の裁き″」
胴体が消し飛んだ。これが俺の魔力。光だ。
俺の魔力は希少だった。だから、子供の頃から、よく期待をされた。けど、俺は、期待が嫌いだった。期待をすれば、間違えられたら、失望するだろう。だから、嫌いだった。俺には、親が居なかった。気づいたときには、王立の学校で暮らしていた。周りは期待ばかりする。期待しかしない。先生も、友達も、兵士も、町の住人も。全てが口をそろえ期待している! と言ってくる。そんな生活だったけど。一人だけは、違った。それがあなたですよ。ドレサ王女。あなたは、俺の中のたった一つの光でした。お疲れさまです。俺は、もう悲しみません。さようなら。
そう思っていたのに! どうして、また俺の目の前に出てくる? なぜまだ、手は震える? 自分が、憧れた人を。自分が、尊敬した人を。自分が、一生を誓って守ろうとした人を。自分が、殺したから? 違う。怖いんだ。自分が、自分じゃ無くなりそうな気がして。俺と言う存在意義がなくなる気がして。俺が、生きる価値が無くなりそうな気がして。怖くて、怖くて、仕方がないんだ。結局俺は、ただの怖がりだ。それでも、あいつは、俺のことを認めてくれるかな?無理かな?分からない。俺は、どうしたら良い? どう生きれば俺は、償える。どうしたら? どうしたら? どうしたら良いんだ! 俺は、俺は、自分の愛した、人を殺したんだぞ? どうすればいいんだよ。教えてくれよ、誰か、誰でも良いからさ。駄目だ。また、こんなことを考えた。良くないな。起こられる、またあの人に。もう一度だけ、優しい顔だけど、起こったら怖い顔になる。けど、気がつけば、泣いている。あの人に。もう一度だけ、怒られたいな。どう怒るだろう。殴られるかも知れないな。チョップをされるかも。正座させられ長い長い説教を喰らってしまうかも知れない。それでも、良い。だから、だから、もう一度だけ。目を開けたって良いじゃないですか? 理に反するかも知れない。それでも、それでも! 俺は、あなたと一緒に笑いたい。ドレサ王女は、消えて行く。きっとこの世の理に反したからだ。死んだのに生き返ってしまったから。今はもう屍もない。
約束のために。俺は、仲間を助ける。いつか、あの人にも届くように。




