第49話水の女王は静かに舞う。
魔人だけでも不味いのに、黒龍の魔力を取り込んでいるだなんて。ただでさえメチャメチャな魔力を持っている。でも、一つ彼を倒せる希望ならある。それは、彼には属性がない。それに黒龍の魔力″破壊″までは取り込めないはず。もしかしたら、私一人でも倒せるかも知れない!
「″アクアドルフィン″」
「無駄だ。」
魔力で、剣を作った! 魔力で、なにかを作ろうとすれば、魔力のコントロールが完璧じゃないと出来ない。つまり普通の人は出来ない。となると、それが教えられるのは王族。でも、一体誰が? いや、今はそんなことどうでもいい。まずは、目の前の相手に集中しなくては。魔力を斬ったとなると、魔力感知、または、本能感知が出切るという証拠。侮ってはいけない。
「″アクアトルネード″」
「だから無駄だと言っている。」
これもダメ。なら、
「″アクアシャボン″」
「シャボン玉? そんなのでなにができる?」
そうね。ただのシャボン玉じゃなにも出来ない。けど、ビックリシャボン玉だったら?
「″海蛇″」
「常に魔力感知を使えば、基本的な攻撃は避けれる。まぁ俺からすれば、斬るか、」
要らない付け足しをありがとうね。って言ってる場合じゃない。「″アクアウェーブ″」
「ほう。防御体制に入ったか。」
″アクアウェーブ″はそれだけじゃない! それは、私の魔力を″消す″ことができる。つまり、あなたの魔力感知には、引っ掛からない!それに、″アクアウェーブ″は霧も出す。
「目隠しか。だが、お前も見えないだろ! 逃げるのか? マーメイ王女よ!」
逃げる? そんなこと出来るはずがない。確かに今私は戦う必要はない。だって国民はみなビミオンに避難をしている。でも、それが? どうせ、逃げたってきっと追ってくる。それに、彼らに合わせる顔もなくなる。彼らの目的と私の目的は少し違うかも知れない。けど、″守る″という思いは、一緒よ。だから、逃げない。私はもう逃げない!
「″アクアショット″」
「クッ! 不意を突かれたか、だが、今ので貴様の場所は分かったぞ!」
分かった? なら、良し。こっちを向きなさい! 私が持てる最大火力を放ってあげるわ!
「そこだ~!!」
もっと、もっと近づきなさい! 確実に当てるために!
「終わりだ~!!」
「終わるのはあなたよ! ″アクアドラゴンブレイク″」
「不味いッ!」
吹き飛ばせた。これでできれば終わってほしい。もう魔力が残り少ない。
「ッ!」
何かが引き裂かれる音がした。ゆっくりと下を見る。ああ。お腹が引き裂かれたのか。なぜだろうか?引き裂かれているのに、なぜか、痛みを感じない。そう、思ったのは、一瞬だった。体に熱さが巡り、それと同時に足の爪の先から、寒さがよじ登って来る。なのに、頭は動く。痛みは感じる。考えろ!まずは、回復が先だ!
「″白鳥の眠り″」
「回復系統の技も使えるのか、さすが王女だな。だが、だ。俺と、貴様では、大きな違いがある。それはな! この破壊的衝動だよ! 貴様には、ないだろう! なぜならこの衝動は、黒龍様の祝福だからだ! ああ。黒龍様、我々の神よ! 見ていてください! 今からこの国の王女! 水の国の第三王女マーメイを! どうか、見届けてください!」
狂ってる! 確実に狂ってる。メチャメチャだ! どうしてあの忌々しい黒龍にそこまで仕える? どうして? 意味が分からない。国民を恐怖のどん底に落とした、あの黒龍を! なぜ! なぜ、あの黒龍を信仰できる?
「ああ。この忌々しい王女の首を今から落とします。地につかせます。見ていてください。」
そう言うと彼はその右手に持つ剣で私の首に向かって斬りかかった。が、私の前には一人の少年がたっていた。ああ。そう言えば、ミライ国王から聞いていた。ドラゴン団団長は、いつか英雄になると。けど、今の後ろ姿は、HEROよ。
「なに泣かせてんだ?待ってろ。今こいつをぶったぎる!」
どうやら、私は泣いているみたいだ。でも、すぐに泣き止むよ。君が、斬ってくれるから。




