第100話 殺意と偽善
二分間殴り通した。これで、
「甘いよ」
触られた。
「少し、話をしようか。何故君たちは戦うんだい? 何の為に? 誰の為に?」
答えるべきか?
「答えてよ~」
耳横で言ってきた。
「何、感じてるの?」
「んな訳あるか。それで、さっきの問いについてだが、さぁな。何で戦っているのだろうな」
そう答えてやると、笑顔で返してきた。
「そっか、そうだよね。分からないよね、僕は有るよ。家族の為に戦う。殺す。壊す。有り難う。君にはもう、用はないよ」
そう言った後だ。
「ダグス!」
ゲンだ。けれど、俺はもう。いや、違うな。言っとくか。
「後で一撃いれる、頑張れよ」
ゲンが慌てて駆け寄るが意味はない。なぜならヤツの手が離れたからだ。
「良い線行ってたよ」
「そりゃどうも」
どうにかして、助けに行くから、それまでは一人で頼む。
「起爆」
↑↓
血が飛び散る。ダグスは膝から落ちた、ヤツは笑っていた。ダグスを爆破し笑った。
「さてと始めたいところだけど、確実に殺んなきゃね」
そう言って倒れているダグスに手を添える。待て、それ以上やったら死んでしまう! 止めろ、止めろ、ヤメロ、
「ヤメロ!」
自分でも分からないようなスピードで駆け寄りヤツの顔面をブン殴っていた。
「良いね、その顔。サイコッ!」
右手でクイクイと挑発する。乗ってやる、その挑発に!
「ァァァァアアアア!!!」
俺は叫びながら殴り蹴りするが、全て避けられる。
「次はこっちの番だよ」
ッ! 触れられたら終わる。避けなきゃ、死ぬ!
「行くよ!」
突っ込んで来る。避けなきゃ、そう思って横に移動しようとしたが足が絡まり体勢が崩れる。
「あっ」
触られた。
「意外と早く終わっちゃうな~あっ! そうだ、彼を確実に仕留めなくちゃね」
不味い! ダグスが!
「動いたら爆発するよ。内部からだから避けることができない必中だから。そこで見守っていてよ」
何故? 何故動こうとしない? このままじゃダグスが死ぬのに、何故動かない。怖いから? 違う。失いたくないだろ? ああ。そうか、例え仲間だとしても、他人だから、自分以外だから。どうなっても良いのか。自分さえ生きていれば良い。そう思っているから、動かないのか。
「さてと、後は起爆するだけだ。ダグスだっけ? これで、死ぬよ。本当に動かないんだね?」
「・・・黙れよ。黙ってくれよ。頼むから、止めてくれ」
只、できるなら何も起きないで終わって欲しい。
「だったら止めに来いよ! 大切なんだろ! なのに、君は何もしないじゃないか! 何、勝手に諦めているんだよ!」
アイツの言う通りだ。俺は、俺は。
「ウワァァァァァ!」
俺は、叫びながら駆けて行く。
「起爆」
爆発した。俺だけが。
「ガッ」
何故だ? 何故、俺だけが起爆した? そうか、順番か。なら、もう一度起爆しない限りダグスは死なない! それと同時に次、触れられたら俺も、ダグスも死ぬ。
「留まった。もしかして、耐性が在るのか? そうか、君は炎の魔力を扱う。それに、その炎も特別製だから、爆発の炎に対しては耐性がある。つまり、威力が半減されるのか。一発終了でもないのか。初めてだ。これは気を抜く事はできないね」
一発じゃない。それでも気を引き締めないと、ここで確実に倒すために。
↑↓
「ドラゴン、頼む」
――ッ! 魔力量が増えた? そうか "契約" か。今の発言からするに魔力の供給量を増やしたのかな? さて、どう殺す? 彼はまだ迷っている。僕は、彼の全力と殺し合いたい。名乗っておくか? 彼、好きそうだし。
「僕の名は、ボム。君は?」
返してくるかな?
「・・・ゲン」
返しては来るけど、眼がいっちゃてるね。倒す気満々なんだ。でも、甘いよね。だから、死ぬんだ。
「倒す!」
見え見えなんだよ! 真っ向からの殴りなんて!
「クッ」
「だから、反撃される」
まだ、まだ触れない。彼の心が弱まるところで起爆するから。
「"火球"」
炎の球? 違う。中に何か。
「"蛇"」
球の中から蛇が飛んでくるのか。まっ避けれるけど。
「チッ」
舌打ちか~苛立っているね。恐らく何時僕が起爆するか分からないから早めに倒しておきたい。それに自分も触れられたくないんだろうね。結局は自分の安全を先にすると思うけどね。けれど、あまり馬鹿にしちゃいけないね。だってその苛立ちから戦闘スタイルが変わっている。さっきまでとは全然違う。中距離を保つ戦い方だ。蛇だってそうだ。二段構えにして、できるだけ自分が近づかないようにしてる。居るんだね、戦いの最中に進化する人間って。やっぱり良いね、人間は。さて、もうそろそろかな? 僕も突っ込むとしよう!
「疲れてるのかい?」
「フゥ」
無視、か。悲しいな。まずは殴りからいくか。
「ヘェ避けた」
身体能力も向上してるのか? 否、元より身体能力が高いだけだ。
「グッ」
反撃か。あれ? どこに行った? 視界から消えた。マズッ! 反応が遅れた。顔の横に足があった。回し蹴りだ。受けるか? ガードして受ける。
「ウ」
重いな。彼は三回転して、後ろに下がった。やっぱり一撃の魔力量が上がってる。う~ん、使うか、魔力を。でもな~確実に殺すにはまだなんだよな~どうしよっか。第二地下に行ってもいいよね・・・あっ良いこと思い付いた。
「まだまだ行くよ!」
きっと彼ならやってくれるはずだよ。
「試すか」
ほら、彼だってやる気だしね。僕は、彼の頭上から両手を振り落とした。彼は両手に火を纏い受ける。爆破の対象を変える方法。それは、両手に触れより強い魔力を流し強制的にその場で爆破させること。つまり、今この場で爆発する。
「ワオッ! 上手く行った」
地面が崩れる。さてと、叩き落とす。
「ウワッ、イッ! テメェ!」
良く喋るな~でも、頭から落ちたら喋る事すらできないか。
「よっと」
上手く着地できた。彼は、ヘェあの状態から立て直したのか、凄いね。
「あ? 地下か。でも、何で地下?」
考えてる、考えてる。理由なんて唯々一つ。彼が集中するようにしただけ。彼の頭にはやっぱりダグスの存在がある。けれど、人間は視界から消えればすぐに忘れる。それを使って彼を集中させるため。僕との殺し合いに全てを使って欲しい。そして、全てを使った人間を殺して、僕が人間になる。今日で人間になる。
「ゲームとか漫画、アニメでもあるでしょ? 第二ラウンド。それからここは地下二階だよ」
僕は、親切に教えてあげた。けれど、彼は
「ふざけてんのか?」
う~ん、不評だな。彼はさっき挙げた例を見たり読んだりしないのかな? 好きな人はこういう展開に熱くなったりするんだけど、まっそもそもが無いなら無理な話か。
「兎に角、再開しよっか」
そう言うと彼は猛スピードでこちらに向かってきたが、僕はそれを難なく避ける。先程とはまるで違う。何でだろう。あっ彼背中と腹から血が出てる。あ~前の殺し合いで怪我を負ったのか。
「面倒だ」
ん? 雰囲気が変わった? 違う、狂ってきてるんだ。良いよ、それでこそ本物の人間だ。
「ドラゴン ≪命令≫ だ。全部を出しきれ。アイツを倒すまでは魔力を流し続けろ、絶対だ」
↑↓
≪命令≫ か。無意識による物だろうな。俺とお前には ≪契約≫ がある。それの前には如何なる条件であっても絶対的な主従関係がつけられる。俺の立場は下だ。つまり、命令されれば行わなくてはいけない。だが、今回の命令に関して癪だがおとなしく従おう。何故なら俺もアイツを殺したいからだ。
↑↓
魔力の供給量だけじゃない、何かが違う。初めてだ。やっぱり、君は最高だよ。
「行くぞ」
来る! ――ッ! 速い! 避けれない!
「いててて~吹き飛んじゃた」
威力も上がってる。良いね、そうこなくっちゃ。
「絶対倒す」
猛攻。右からの蹴り、下からの殴り。避け用の無い攻撃。それに付け加え無数の魔力弾。ヤバイね。そろそろ魔力を使うか。
「ッ! 触りに来たって事は使うのか?」
「勿論!」
彼は避ける。避けまくる。さっきまでの威勢はどうした!
「アッ」
―――殺った。触れた。
「起爆!」
・・・
「グッ」
何だ?
「ハァハァまだ、やれるぞ」
何か、何かが違う。
「どうした!」
違和感。何故、何故起爆が遅かった! そうだ。僕は、彼に触る前に―――
「さんざ! ヤってくれたなぁ!」
上から降ってきた。ダグスが。不味い避けれない。
【ダグスの魔力は "闇" さらに彼の物はより特別なものである。それは何故か。彼の魔力は全てを飲み込む、闇そのものだから。故に、彼はボムの魔力を飲み込み、自身の物へと変え、爆発は変えず威力だけを上げた物にした。それが何を意味するか。それは、一度限りのボムに対しての特効である】
「ガハッ」
まさか自分の攻撃を喰らうなんてね。ハハッ、本当笑えるよ。
「後は任せた、ゲン」
「応」
ダグス、まだ生きてるんだ。生きてるけど、もう立てないだろうな。だって自分も巻き込まれてたもん、自殺行為だよ。けれど、それを躊躇なくしてたのは、信頼か・・・アッやっと分かった。何故彼が今まで来なかったのか。自分の物へと変える為に行う解析に時間が掛かるんだ。だから、僕が魔力を使ったタイミングに一気に解析したんだ。失敗してたら死んでたよ。違う。死んでも良かった。死んだらゲンは僕だけに集中できる。どっちに転んでも得しかないのか。本当、彼らは凄いな。本物の人間だ。でも、僕も諦めないよ。死ぬまでは。
「まだ立ち上がるのか?」
「ああ、僕は人間になりたいからね」
ここは? 僕は? ああ、そうか。作られたんだ。人間に。僕は、人形だ、偽物なんだ。あれ? でも、おかしいな。人間は僕を封じたはずだぞ? 失敗作だから。確か女だっけ? 人間、生物には性ってものがあったんだっけ? 興味ないから詳しくは知らないや。それで、どうして失敗作なんだっけ? ああ、そうだ。僕の魔力が人間を殺すような物だからだ。それで、怖くなって封じたんだ。なのにどうして今頃封印を解いたんだ?
「目が覚めたか」
誰だ?
「お前を封じて置くには勿体ないと思ってな。勝手に解かせてもらった。さて、手始めに聞いておくことがある。お前は何を望む? 俺はそれを叶えるのを手伝ってやる。何でも良いぞ? 複数有っても良い。語るのは勝手だからな」
何を望むか。そうだ、唯々一つだけ有る。
「人間になりたい。人形ではなく、人間に」
「そうか。良いではないか、付いてこい」
笑わないんだ。人間にも色んな種類があるんだ。良いね、最高だ。
昔の事を思い出すなんて、無かったのに。ああ、そうか。僕は今、生きているんだ。そして、なれる。人間に、なれるんだ。
「有り難う、ゲン。君に感謝するよ。僕は今、居心地が良い。生きていると実感できている。最高だよ、だから有り難う」
「・・・必要無いな。お前からの感謝なんて」
そっか、悲しいな。僕がせっかく感謝してるのに・・・だからこそ躊躇なく殺せるのか。
「・・・・・・ねぇ良い事教えてあげるよ。僕、人形なんだ。人工物って言った方が良い? 作られたんだよ、人間に。それから、僕を殺すには、核を壊さなくてはいけない。勿論、核は心臓の部分に位置するよ」
「何故、それを教えた?」
何でだろうね。唯々、君には知って欲しかったんだろうね。僕がどういう存在かを。そして、知った上で殺し合いをしたい。有り難う、こんなにも最高な場を作ってくれて。今日僕は、絶対に人間になる。
↑↓
ダグスは倒れた。ドラゴンにはお願いした。アイツの倒し方も知った。俺は、俺は、どうしたい? アイツを倒したいか? ああ、今ここで絶対に倒す。だが、ダグスはどうする? 違う、俺は頼まれた。だから、全うする。血はどうする? 止めなくて良い。一刻も早くアイツを倒したい。それで、俺自身はどうしたい? 結局は誰かの為じゃないか。何故、俺は自分以外の誰かの為に動かなくてはいけない? 夢のためだから? 約束のためだから? 違う。そうじゃない。今俺がしたいことは何だ? ハァそうか。俺は、何も考えていなかったんだな。知らなかったんだな。気付けもしなかった。俺が今、したいことを。何だろうな、俺がしたいこと。今は、そうだ。俺は、アイツを否定したいんだ。
「ここで、倒す」
火力の上がった炎を纏い殴る。それに合わせ相手も反撃に出る。クソッ! 当たる直前に魔力が乱される。
「当たった」
触られた。
「起爆」
口から血が出まくる。それに、体の中が痛い。しかし、俺は魔力を使って体を治すことができない。なら、魔力を体の内部に纏う事はできないのだろうか? ゆっくりで良い。確実に、纏え。
「フゥゥ」
できた。これで少しは威力が減るか?
「残念、無駄だよ。だって魔力の影響を受けないから」
速いし、触られた、それに無駄って。
「ガハッ」
吹き飛んだ。壁に行き良い良くぶつかる。斬られたところから、血が流れる。それに、魔力を使った。魔力は消費されたのにガードはできていない。魔力は減っただけ。意味がないのか。不可避の確定攻撃。これ以上戦っても俺が負ける。魔力が失くなってどうしようもなく。それなら、賭けてやる。次の一撃で終わらせる! 俺は、走った。唯々一点を捕え。
「終わりにするのか! 良いよ、付き合ってあげるよ!」
そう言ってヤツは右手で俺の左頬に触れ爆破させる。が、俺は止まらない。俺は右手で腹を殴った。しかし、それは届かなかった。止まられた。左手で。
「起爆!」
右手はもう使い物にならない。だが、お前は気付いていない。俺が、右手に魔力を、炎を纏っていないことに!
「終わりだ」
俺は炎を纏った左手でヤツの顔面を殴り吹き飛ばした。起きてくる様子はない。勝った。それじゃあ後はダグスの元へ。
「ダグス、起きてるか?」
俺は体を揺さぶってみる。
「グッ」
血を吐きながら起き上がる。
「勝ったんだろうな。アイツらの元へさっさと行くぞってお前ボロボロじゃねぇか」
ダグス、お前こそボロボロじゃねぇか。血も吐いてたし。でも、良かった。生きてて。これで、やっと
「ッ!」
何だこの膨大な魔力は! 俺は急いで振り返る。ヤツが立っていた。
「自爆だよ」
不味い、この魔力で爆発されたら辺り一面が吹き飛ぶ!
「ダグス! 上の階に登って魔力で防げるか!」
俺はダグスに背を向けながら言う。
「お前は!」
ダグスが聞いてくる。俺はアイツを、ボムを確実に殺る。
「行け」
心配そうな眼で見んな。大丈夫、絶対に殺すから。
「分かった」
ダグスはそれだけ言って上の階に行く。
「俺らも決着と行こうか?」
「そうだね、逝こうか?」
ボムがそう言った瞬間。地面が揺れ、爆音と共に落ちて行く。熱気が体を包み、瓦礫が当たりながら落ちる。
「決着の場だよ。これ以上、下に行くことはない。さぁ殺し合おう、死ぬまで!」
何故、俺はこんなにもボムの事を殺したいんだ? 何に突き動かされるんだ? 仲間を傷つけられたから? 違う。怒ったから? 違う。全部違う。単に、否定したいだけなんだ。何故、否定したがる? 俺の正義が許さないから? 俺の正義は誰かの悪になる。俺の悪は誰かの正義になる。なら、そこに在るのは偽善じゃないか。気楽に行こう、気楽に殺そう。気楽に否定しよう。だって俺を動かすのは偽善だから。全部を否定しよう。例外は認めない、俺が全て。俺だけの世界にしよう。
天
上
天
下
唯
我
独
尊
『ぶっ殺す!!!』
「壊すの間違いじゃない?」
「あ? アア、あ~どうでも良い」
お前を否定して、この世から消せれば何でも良い。
「どうでも良いって、大事なんだけどな~まっいっか。今ここで君を殺して人間になるし」
「・・・は? なに言ってんの? 頭沸いてんじゃん。馬鹿だな。人形が人間になれるわけないだろ? ボム、お前は人の形をした何かだよ。偽物が本物になれるわけないだろ? それに、人間を語るな」
俺は満面の笑みで言った。だってそうだろう。人形が人間になるなんて馬鹿げた話があるかよ?
「アッハッハッハッハ! 何だよその顔! キレてんの? 本気で言ってんだ。あ~死ね」
ボムは今まで出したことの無い速さで向かってくる。だが、遅い。手が届く前に顔面を殴った。ボムは狼狽え、動揺する。隙だらけになった胴体に連続で殴る。ボムは鼻から血を出していた。顔面を殴ったことによる出欠だ。血が出るんだ。人形なのに。
「クッ」
正気に戻った。これ以上殴ったら反撃を喰らうな、蹴り飛ばすか。俺は首に蹴りを入れ吹き飛ばした。
「雑魚がイキってんじゃねぇよ」
↑↓
違和感。さっきと動きが違う、明らかに違う。どうやら振り切ったみたいだね。それに、とことん僕の事を否定するみたいだ。なら、僕はとことん僕を肯定しよう。それにしても、振り切った事によって何か変化したのか? う~ん、一種のゾーンかな? 僕もあの状態になれば、ゲンと互角になる。ゲンは無意識に、僕は意識してあの状態に入る。そのためには、まず考え方を変えないとね。自問自答が一番かな? 僕はどうしたい? ゲンを殺して、人間になりたい。本当に? ・・・違う。僕は、人間になって、そうか。自分でも知らないことが分かるもんだね。僕は、そのために人間になる。それが僕の答えだ!
「死に候え」
【覚醒、それは存在の格上げである】
昔読んだことがあるぞ。覚醒とは様々条件があるが、皆が成るものではない。そして、歴史上覚醒した存在は唯々一つ。二代目魔王にして、最災の王。デストロイ。今となっては分からないけどね。う~んでも、そう考えたら、多分今の僕たちの状態は完全なる覚醒とは言い切れないな。完全なる覚醒の一歩手前と言ったところか。まっ互角だしそれに、殺し合いながら高めたら良い。だから、今はゲンを殺す事だけを考える。まずは、眼を潰す。眼を触って起爆。その後に首を起爆させたら良い。それだけで殺せる。
「来いよ、雑魚が」
後悔はしないでよ! 僕はゲンに向かって走り、手の届く範囲まで近づく。狙うは眼だけ。確実に触るために隙を作る。警戒されないように手を使う。僕はゲンの肩に向かって右手を突き出す。しかし、左手で上に弾かれる。
「ハッ! そんなものかよ!」
ゲンは右足で僕の腹に突き出す。が、避けない無い。僕は左手で右足を触り小規模の爆破をする。流れるようにゲンの前に移動し、両手でゲンの眼を触る。
「起爆」
両目を爆破させた。これで何も見えない。
「完全では無いけど、覚醒には変わり無いか」
回復能力が上がってる。眼の回りは傷一つも無い。皮膚を治したのか。覚醒による影響かな。それに、ゲンは気付いていない。平然と軽く、何事も無かったかの様に。笑った。笑いなから僕に殺意を向け、確実に殺すために僕の顔面に拳を振りかざす。僕はそれに対抗するためにゲンの首を絞める。それと同時に僕は吹き飛んだ。が、まだ壊れていない。仰向けになった僕は両手を上げ一度叩いた。有り難う、ゲン。君のお陰で僕は覚醒に至った。それに、僕の望みでもある人間になる事も達成できる。僕はこれから人形ではなく人間と呼ぶよ。本当に有り難う。
「起爆」
「死ね」
口から煙を出しながら倒れる。
「さようなら」
「ねぇ僕が人間になったらさ、君たちのこと家族って呼んで良い?」
僕は問いかける。
「もう、家族みたいなもんだろ?」
一人が返す。
「そうですね。我々は家族のようなものです」
また一人返す。
「貴方が家族と呼びたいのなら呼べば良い。神はきっと許すでしょう」
そっか。良いんだ。僕は自由だから。
「君は?」
僕を助けてくれた人間。
「何でも良い、好きなように呼べ。俺たちはそれに応えるだけだ。お前がそれを望むのなら、手伝ってやる」
・・・僕は最高だよ。君たちと一緒に生きれて。幸せ者だ。
「今日の僕は変だな。回想に浸る。まっいっか」
―――視線を感じる。狂気的な魔力。死を与える目線。
「誰だ!」
振り向く。ゲンが立っていた。何故。首を内部から爆破させた。何故生きることができる。違う。違う。ゲンじゃない。別の何かだ。
「中々面白い魔力を持っているな。貴様名乗れ」
冷淡に嗤いつつ聞いてくる。答えなければ死ぬ。
「ボム」
名乗ると不気味に笑う。機嫌が良くなったのか?
「そうか、そうか。良い名ではないか。覚えておこう。俺は今機嫌が良い。何か望みはあるか? 叶えてやろう」
望みならある。が、それは僕自身が叶えるものだ。だから、
「何も無い」
「・・・そうか。気に入った。力の片割れを魅せてやろう」
そう言った瞬間だ。滴位の大きさの魔力弾が放たれる。一瞬だ。一瞬で体中から血が出る。動くことも、抗うことも無駄だと感じた。気付けば膝を付いていた。終わったのか。
「二十秒耐えたか。誉めてやろう」
二十秒でここまでなるのか? 強者故にできること。この世の頂点に近いからできること。だからだろうか、聞いてみたい。死ぬ前に。
「偽物は価値があると思う?」
掠れた声で。核は壊され、手は何処かに飛び散り、足の間接から先は無い。そんな状態で聞いてみた。
「偽物は本物より価値がある。何故なら本物は本物にしかなれないが、偽物は本物にもなれる。故に可能性がある、価値がある」
そうか。良かった、肯定してもらえた。
「愉しかったぞ、人間」
化物でも無く、人形でもなく、人間。やっぱり人間になって良かった。生まれてきて良かった。ありがとう、みんな。僕は先に行くよ。
【帝国城内 王の御前】
「逝ったか。では、こっちも終わらせるとしようか? スズ」
「殺すまで終わらねぇよ、親父」
100話感想(後書き)は後日活動報告にて




