~面倒事⑥バーベキュー前編~
寒くなってきましたね。
執筆が遅くなり申し訳ありません。
気長にお待ちいただけると幸いです。
第9章ー7
はい、あれから十日ほど過ぎましたよ~。
来週は待望の夏フェスだし、そろそろ一つ一つ片付けて行こうかと本格的に動き出した私。そして今日はバーベキュー。
まず、光君の会社の社長・真鍋さんに連絡を取り、バーベキュー大会を開くことを通知してもらった。いつも仕事優先で納期前などは連日地獄の徹夜、家にも帰れないというブラックなイメージを払拭する為にも、福利厚生として家族同伴OKのバーベキューだ。ここぞとばかりに家族サービスをしてもらおう。
何せ現地まで貸し切りバスありの、全額会社負担ときたら参加者多数間違いなしでしょ。家計の負担なしで奥様は大助かりだし、夏休み中の子供達だって大喜びだ。
だが、実はここがミソだったのだ。
光君の会社は真鍋さんと二人で立ち上げたばかりの新会社だし、年配の社員は元々いない。ましてやオタク系の男性社員が多いため、未婚男子が八割を占めていた。経理事務は四十代のオバチャンだし、バイトには若い女性もいるがそういう子は彼氏持ちが多いようだ。なので、家族に関わらず恋人や友達、同じビルの知り合いも参加OKにしたのだ。
案の定、光君狙いの噂の女も参加してきたようだ。
セミロングで今時のオシャレなファッションに女らしさを醸し出し、さりげなくアピールをしている姿からは光君狙いだということが私にはハッキリと分かる。
同じ相手を想っているからだろう、敵の視線を追えば誰をどういう風に見ているか手に取るように分かった。
「いつも主人がお世話になっております」
数少ない既婚社員の奥さんが挨拶している。
「社長、私の彼氏です」
「俺、ここのゲーム好きなんすよ」
バイトの女の子が彼氏同伴でやって来ている。
「社長、本当に友達も連れてきて良かったんですか?」
独身の若手社員が男友達を誘ったようだ。
「あっ、英介見っけ!」
私は久しぶりの英介を見つけた。新入社員として光君の会社に入った矢野英介。頑張っているとは聞いてきたが、あの時よりは自信がついたのか明るい印象だ。
「久しぶり。元気してた?」
「あっ、典子さん。お久しぶりです」
うん、うん、以前よりしっかりしてるようだな。
「どう、仕事は? もう慣れた?」
「まだまだですけど、吉川さんを目標に頑張ってます」
「そっかぁ。若いんだから頑張って」
「はい、ありがとうございます」
と、私が光君の側をちょっと離れた隙に、さっそく動き出したようだ⋯⋯女狐が。
「真鍋社長、本日はお招き頂きありがとうございます」
「あれっ? 本郷さんも来たんだ?」
「いやだぁ~その言い方。私が来ちゃダメですか?」
「いや、そういうわけじゃないけど、アウトドアだし参加するなんて意外だなと思って⋯⋯」
「せっかくのフリー参加のイベントだし、皆さんと仲良くなるきっかけになればと思って来たのに、そんな言い方ひどいですよぉ~、ねぇ、吉川さん?」
さっそく私の光君にチョッカイ出してんな、あの女!
別に普通に接する分には問題ないんやで、私だって。
誰彼構わず排除するわけではないし。
ただし!
私のパートナーだと分かっててチョッカイ出してくるなら話は別や。ケンカ売ってんのと同じやからね?
さて、始めましょうか⋯⋯。
バーベキューと言えばまず準備が面倒なんだけど、そこは男性陣が頑張ってくれた。英介に聞いたところ、数少ない女性陣に良いところを見せたくて事前にネットなどで下調べしてきたらしい。
その間に私ら女性陣は食材の下ごしらえだ。
「この野菜を切って肉と交互に串に刺しますね?」
「こっちのウインナーは子供用でいいですか?」
「クーラーボックスの冷えた缶ビールは乾杯用として、ケースのビールは川で冷やしときますよ?」
次々と声をかけて動くのは私を始めとする主婦勢だ。子連れで参加した家族もいたが、子供は全員合わせても五人だった。そこで子供を監督してもらうお母さん一人をつけて、残りの主婦総当たりで食材の準備に取りかかっていた。役割分担を決め、手際よく支度をしている私たちを横目に、本郷とかいう女狐とその取り巻きらしき女共は、男性陣に名前を覚えてもらおうと必死でアピールしている。
ここから頭を使う嫌がらせを始めよう。
「皆さん家族サービスってことで参加したはずなのに、結局こんな風にお手伝いしてもらって何か申し訳ないです」
私は殊勝な顔で主婦の皆さんにお詫びの言葉を投げ掛ける。
「いえいえ、そんなことないですよ」
「そうそう。こんな風に誘ってもらわない限り、休みの日に家族サービスでお出かけなんて夢のまた夢ですからねぇ」
「こんなの何年ぶり? って感じですよ」
「それにバーベキューだと食材の買い出しから下ごしらえまで全部嫁に任せっきりで、自分達は飲んで騒いで子供らも放ったらかし。片付けする頃には完全な酔っ払いになってるから帰りの運転も無理。結局主婦は飲むこともできず、やってることは家よりひどいですからね」
「確かに! 家なら運転もないから飲めるし、子供らも安全だもんね。それに自分ちのキッチンと違って勝手が変わると手間もかかるってことがわからないのよねぇ、普段から何もやらない男共は!」
「それを考えると大勢で集まってるから役割分担できて一人の負担は少ないし、貸し切りバスのお陰で私らも飲めるし、子供らも狭いマンションじゃなく外で思いっきり走り回って遊べるし、大助かりですよ」
「何より参加費無料の全額会社負担ってとこが大きいわよねぇ」
「「「そう! ホントそれッ!」」」
おおぅ、ハモった。主婦のお財布事情はシビアだね。
「主人から聞いたんですけど、吉岡さんの提案なんでしょ?」
「そう、私も旦那から聞きましたよ。たまには社員に還元したら? って社長に提案してくれたんですってね?」
よしよし、いい感じの流れになってきてるぞ。
「いやぁ、うちも皆さんと同じですからついつい愚痴が出ちゃって。私たちはお互いバツイチで籍こそ入れてませんけど、夫婦同然の暮らしをしてるわけですよ。なのにパートナーは会社に泊まり込みで何日も家を空けるし、子育てが終わったはずの私には何故か大きな子供が二人の世話が増えてるんですから」
するとさっそく網にかかってくれた。
「大きな子供二人ってRyoと龍斗ですよね?」
「えぇ、手のかかる子供ですよ」
「えぇ~、うらやましい! あんな超絶イケメン!!」
「ホントホント! でも一緒に暮らすなんて私だったら緊張するわ、絶対!」
「普段はそこら辺の若い子と変わりませんよ? うちの息子と言うこと一緒ですもん。「今日メシ何?」ってね」
「「「「きゃぁ━━ッ! 言われてみたい~」」」」
そこで爆弾を落としてみる。
「もしかすると言われるかもしれませんよ?」
「「「「えっ?!」」」」
フリーズする主婦を見回して私は言った。
「確定じゃないですけど、「仕事が早く終わったら俺らも行っていい?」って聞かれましたから。「家族サービスなら俺らも参加できるよね?」だって。ダメかもしれないからまだ内緒ですよ?」
「「「「えぇぇぇ━━━━ッ??!!」」」」
ふっ、釣れたな⋯⋯。




