希望
この国は、4月1日と2日で学年が分かれる。
それが例え、3つ子でも。
「ユミ、聞いてよ〜」
「なになに〜」
なんて会話をしている普通の昼休み。
事件は突然起こった!
携帯から通知音が聞こえた。見ると、「銀鏡柚弦/ユズ」の表記。
私は慌ててメッセージを見た。用件の欄にはたった2文字で、
「発熱」
と簡素に書かれていた。
ユズちゃんらしい、ってそんな状況じゃない!
とりあえずモモくんに即連絡。私たちはユズちゃんの部屋に向かった。
部屋では、ユズちゃんが1人でうなされていた。
ユズちゃんは元々体が弱い。生まれた時も圧倒的に体が小さく、よく風邪をひく子だった。
だから、ユズちゃんのこんな姿を見るのは慣れている。それでも、私の胸は締め付けられた。
隣を見ると、モモくんが泣きそうな顔をしている。
そりゃそうだ。モモくんはユズちゃんが「だーいすき」なんだから!(昔モモくんがユズちゃん宛に書いた手紙の引用)
とりあえず私たちは教師に3人分の欠席連絡をした。
その後は、良くも悪くも手馴れた作業だ。
モモくんがお粥を作り、私がその間に熱を測ったり頭を冷やしたり。
温度計によると、体温は40度。
「おかしいなぁ」
と、突然ユズちゃんが言った。
「さっきまで、38度だったし、2人に、迷惑かけないように、1人で何とかしようと、思ってたんだけどなぁ」
苦しそうだ。息も切れ切れで、顔も真っ青だ。
「喋んないで、安静にしてて」
と言うと、ユズちゃんは目を瞑った。
そして、モモくんが特製のお粥を持ってきた。
ここ茜葉の寮にはキッチンがついているのだ。
こういう時にとても役に立つ。
モモくんに手伝ってもらってお粥を少し食べたユズちゃんは、ぽつりと
「ごめん」
と言った。なんで謝るんだろう。いちばん辛いはずなのに。
今だけじゃない。ユズちゃんはいつもいちばん頑張っている。
絶対に絶対の仲間がいる私たちと違って、ユズちゃんは常にひとりぼっちで知らない環境に放り込まれる。
そして、ユズちゃんなりにその中に馴染んでいく。
ユズちゃんは、自己評価は限りなく低いけど、内に秘めたポテンシャルは3つ子の中でダントツトップだ。姉が保証できる。
気付いたら、ユズちゃんは寝ていた。
最初よりはマシな寝顔だ。安心した。
モモくんは、いつもユズちゃんが1番だからまだ心配している。
「もう大丈夫だよ、この子は強いから」
と、小声でモモくんのこともなだめておいた。
そのあと、ユズちゃんの部屋をお借りして、今日の授業の分の勉強をしていると、ユズちゃんが
「ユミの......なり損ない......」
と寝言。
私のなり損ない。ピンと来た。
4歳のときのあの事件だ。
そういえばユズちゃん、あの頃から休日に友達と遊んだり、一緒になにかに挑戦したりしなくなった。
そっか、そういうことか。私はようやく理解した。
と同時に涙が出てきた。
モモくんがずっと泣いていたのは、言うまでもないかな。
「ユズちゃんは最強だよ。周りがなんと言おうと、ユズちゃんは、私たちの希望だからね。」
読んでくださりありがとうございます。
私は1話1雑談と決めているので、今回も雑談をお送りします。
私はみぞれいかと言うのですが、世の中の人は「みぞ/れいか」「みぞれ/いか」のどちらと受け取るのでしょうか。
答えはありません。ご想像にお任せします。
ではまた!




