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平凡と非凡

この国は、4月1日と2日で学年が分かれる。

それが例え、3つ子でも。

そんな制度に、私たちは翻弄されてきた。

長女、弓梨。しっかり者で、3つ子のまとめ役。

生徒会長もしている。

髪は焦げ茶で、肩下くらいの髪を下でツインテールにしている。目は臙脂色。

長男、桃矢。私たちのことを誰よりも一番に考えてくれるけど、口に出さないツンデレ。

副会長と弓道部部長を兼任している。

黒髪で、センター分けのストレート。目は芥子色。

そして次女は私、柚弦。

優秀なユミやモモを間近で見てきたから、自分に自信がない凡人。あがり症で顔を見られたくなくて、伊達メガネをしている。

チョコレート色で、金髪も混じっている髪をハーフアップにしている。目は瑠璃紺色。

私たちは三卵生の3つ子。意外と顔は似ているけど、伊達メガネの効果なのか存在感がないのか、モテモテのユミや裏ではモテるモモと違って、私は好意を寄せられることがない。そのくらい影が薄いのだ。

いや、学年のせいかもしれないが。

ユミとモモは4月1日生まれの3年生。対して私は4月2日生まれの2年生。

ハイスペック&ルックスの「双子」と名高いユミとモモの影に、隠れ続けてきて14年。

今や人に認識されたい、友達が欲しいという欲も消え失せた。

そんな私にも、たまたま出来た友達が1人。

茶道部所属、同じく図書委員の佐和山凛ちゃんだ。

凛ちゃんは、2年連続出席番号が前後で、しかも2人1組の寮の部屋も同じ。そんなこんなで常に一緒に行動する仲になった。実はユミの大ファン、らしい。

そのユミは今、私の、いや全前期生の前で堂々と話をしている。内容は、今年の公約について。

ステージの上のユミは、台本もなくスラスラと話している。時々こっちを向くのは気のせいだろう。

隣に座る凛ちゃんはユミに見入っている。目が完全にハートだ。

そのあと、モモが今日の放課後に行われる一斉部会の話をしていた。私は帰宅部だから関係ないが、寮にはユミ、モモと3人で帰るので、図書館で待つことにしている。モモも前を見て、ちょっとこっちを見て堂々と喋りきった。

というか、私なんて授業中の発言だけでも緊張するのに、ユミとモモはすごい。自慢の兄と姉だ。


放課後。自分への宣言通り、今私は図書館にいる。

凛ちゃんは茶道部の部会に行った。スキップしていたから、よほどお茶が好きなのだろう。もしかしたら、目当てはお茶菓子かもしれないが。

少なくとも、凛ちゃんは今ここにはいなくて、図書館にはほとんど人はいない。とても静かな空間だった。

そう、この時までは。

「ねぇ」

前を向くと、以前朝会で見たことがある顔が2つ。

「ねぇ、私たちと一緒に」


気付くと私は走っていた。運動部でもない私がここまで全力ダッシュするのは、小学3年生の時のクラス対抗リレー以来だろう。

図書館ではお静かにとか、そういうことは頭から抜け落ちていた。考えていたのは、「知らない人に話しかけられて怖い」。それだけだった。

一刻も早く2人の不審者から離れたくて、ユミたちを待たずに、私は寮へ帰った。


私は部屋にいた。

頭は定期テスト中より冷静で、心臓は以前迷子になった時より激しく脈打っていた。

よくよく考えてみれば、話しかけてくれた人に何も言わず逃げ去っていくのは失礼すぎたかもしれない。

しかも、勿忘草色のリボン。あれは、5年生のリボンだ。

私は記憶をたどってみた。絶対にいつかの朝会で見たのだ。

考えてみて気付いた。あの二人は、たしか......

とここでドアから物音が。さすがに追いかけてきたか〜と思い、ドアを開けようと近づいた。しかし音は下の方から聞こえてくる。

どうやら音の正体は、パニックになりすぎて投げ捨てたスクールバッグの中の携帯の着信音だったようだ。

画面に表示されたのは「銀鏡桃矢/モモ」という文字。

ここでようやく私は、2人を置いて帰ってきていたことに気付いた。

私は慌てて電話に出た。

「もしもし」

「ユズ、」

「ユズちゃん!良かった生きてた〜!」

モモからの電話なのにユミの声。モモの声が一瞬聞こえた気がしたのは気のせいだろう。

というか「生きてた」とはなんだ。確かに私は体が弱い方だし、それなりに熱を出す頻度は高いと自覚してはいるが、「生きてた」とはなんだ。

「ユズちゃん、どしたの?なんで図書館にいなかったの?」

私が考え込んでいると、ユミの声が。

ユミの声は少し低い。例えるなら熟練アナウンサーくらいだろうか。ほぼ標準だが、ユミはコンプレックスだと言っていた。

私は少し迷って

「あー、と、ちょっと部屋でしたいことができちゃって」

とはぐらかした。すると、

「おいユミ」

モモの声だ。声変わりしたモモの声は聞いてて安心する低さを保ちつつ温かみを帯びている。

「あんまり根掘り葉掘り聞くな」

「だって〜、ユズちゃんのこと心配だったんだもん!」

そっちだけで会話するな。

「モモくんもさんざん心配してたくせにぃ」

想像できる。モモは私とユミに、というか私に甘い。

「心配かけてごめん」

と言うと、ユミは安堵したような声で

「あ、それでね」

と続けた。

「さっきユズちゃんのこと探してる人がいたよ〜」

「確かあれ、クラギの部長と副部長だろ」

とモモが付け足す。

そうだ、合点がいった。

あれは確かに、月見里彩雨部長と栗木優副部長だ。我が校を代表する部活の1つであるクラギ、もといクラシックギター部は、度々朝会で表彰されている。見覚えがあったのはそういう事か。

「だ、大丈夫だよ」

と言っておいた。

「そう、ならよかった!また明日ね〜!」

電話が切れた。そしてそのまま、私は疲れのせいで寝てしまった。

読んでくださりありがとうございました!

ちなみに柚弦は、ひらがなで書くと「ゆづる」であり、どちらかというと「ユヅ」なのですが、文中では読みやすいようにユズと表現しています。

これからもよろしくお願いします!

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