白昼の緊迫デートと、氷山姫の狂おしい一閃
【シーン1:午後16時、駅前のおしゃれなパンケーキカフェ】
ガラス張りの明るい店内には、甘いメープルシロップと焼きたて生地の香りが漂っていた。
放課後、私服に着替えた二人は、駅前に新しくオープンした話題のカフェの奥まったテラス席にいた。
涼香はいつものクールなブラウス姿ではなく、胸元に控えめなリボンがあしらわれた淡いアイボリーのワンピース姿。
少し照れくさそうに裾をつまむその姿は、どこからどう見ても「恋人とデート中の美少女」そのものだった。
「……ねえ、樹くん。私……ヘンじゃないかしら?」
「全然! すごく可愛いよ、涼香。すごく似合ってる」
「……っ……もう、ストレートに言いすぎよ……」
涼香はぽっと頬を赤く染めると、運ばれてきた「極厚ふわふわイチゴパンケーキ」に目を輝かせた。
フォークで小さく切り分け、生クリームとイチゴをたっぷりのせると、迷わずテーブル越しに樹の口元へと差し出してきた。
「はい、樹くん。あーんして?」
「えっ、涼香!? ここ、お店の中だよ!? 周りに人が……」
「誰も見ていないわ。それに、私の手から食べないと……お仕置きなんだから」
上目遣いで甘く脅迫してくる涼香。
樹が赤面しながら口を開け、甘いパンケーキを頬張った——まさにその瞬間だった。
『——あれ? もしかして、夏目先輩……!?』
入り口の方から、聞き覚えのある甲高い声が響いた。
【シーン2:危機一髪! 完璧な『氷山姫』への瞬間変身】
樹の全身の血が引いた。
声の主は、生徒会で涼香の直属の後輩にあたる美咲だった。友達数人と一緒に入店してきたらしい。
(やばい……! 見られたら全校に『夏目副会長が男と密会している』って噂が広まる……!)
樹が青ざめてフリーズした瞬間——涼香の動作は完璧だった。
一瞬で表情から甘さが消え去り、瞳に氷のような冷徹な光が戻る。
彼女は滑らかな動作でフォークを皿に戻すと、背筋をピンと伸ばし、冷ややかな声で振り向いた。
「……美咲さん。大声を出さないでちょうだい。他のお客様の迷惑よ」
「っ……! す、すみません夏目先輩! あまりにも美しすぎて、つい……!」
美咲たちは涼香の圧に怯みつつも、その視線を涼香の向かいに座る樹へと向けた。
「あの……夏目先輩? そちらの男の人って……まさか、彼氏さんですか……!?」
店内の空気が凍りつく。
樹が緊張で呼吸を止めたその時、涼香は冷酷な笑みを口元に浮かべ、淡々と告げた。
「まさか。彼は生徒会の新しい資料整理を手伝ってもらっている『後輩』よ。今日の課題の進捗について、ここで報告を受けていたところなの」
「え……あ、そうだったんですね! 夏目先輩が男性と二人でカフェなんて珍しいから、勘違いしちゃいました……!」
「私は公私を混同するような人間ではないわ。……用がないなら、席に戻りなさい」
「はいっ! 失礼しましたー!」
美咲たちが恐縮しながら店の奥へと去っていくのを確認し、樹は胸をなでおろした。
「ふぅ……助かった……。涼香、切り替えすごすぎるよ……完璧な演技だった……」
しかし——樹が安堵したのも束の間。
【シーン3:テーブルの下の狂おしい甘やかしと、決意の告白】
「……演技? 誰が演技だと言ったのかしら、樹くん」
「え……?」
見上げると、涼香の琥珀色の瞳は、先ほどの冷酷さとは正反対の深すぎる愛と執着の熱でドロドロに蕩けていた。
テーブルの下で、涼香の華奢な足が樹のスラックスの裾をすりすりと撫で上げる。
そして、人目につかないテーブルの陰で、涼香は樹の手をギュッと力強く握りしめた。
「『ただの後輩』なんて言わされて……私、すごく傷ついたわ」
「り、涼香……?」
「私をあんな嘘をつくハメにさせた罪……重いわよ? 樹くん」
涼香は体を前に乗り出し、樹だけに聞こえる囁き声で、甘く、恐ろしいほどの溺愛を囁いた。
「家についたら……覚悟しておいてね? 今日は膝枕だけじゃ許さないわ。私が『私の旦那様』だって全身で分からせてあげるから……」
「っ……!」
「それにね……私、もう決めたの」
涼香は琥珀色の瞳を妖しく輝かせ、樹の指先を一つずつ愛おしそうに絡め合わせた。
「いつまでも『隠れて付き合う』なんて、もう嫌。近いうちに……生徒会のみんなにも、全校生徒にも、あなたが『私の愛する旦那様』だって宣言してあげる。……私から離れられないように、逃げ場を全部無くしてあげるわ」
冷徹な「氷山姫」が魅せた、狂おしいほどの独占欲と愛の誓い。
危機を乗り越えた二人の関係は、ついに「全校公認の甘々飼育」という超弩級の階段を駆け上がろうとしていた——!




