深夜の勉強会と、甘すぎる特別報酬
【シーン1:夜の21時半、樹の部屋のローテーブル】
「ねえ、樹くん。ここ、解き方が違っているわよ?」
トントン、とシャープペンシルの先でノートが叩かれる。
ローテーブルをはさんで向かい合っているのは、メガネをかけ、髪を軽く後ろで一つにまとめた涼香だった。
普段の大人っぽい雰囲気に「知的な眼鏡姿」が加わり、その破壊力は樹の心臓を容赦なく撃ち抜く。
「う……やっぱり? この経済学の計算式、どうしても途中で計算が合わなくなっちゃって……」
「ふふ、ダメね。公式の代入手順が逆になっているわ。……ほら、こっちにおいで? ちゃんと教えてあげるから」
涼香は自分の隣のスペースをぽんぽんと叩いた。
樹が言われるままに移動して隣に座ると、涼香は待ってましたとばかりに樹の左腕を抱え込み、ぴったりと密着してきた。
肩と肩が触れ合い、涼香の髪から漂う甘い柑橘系の香りがふわりと鼻腔をくすぐる。
「り、涼香……近すぎるよ。これじゃ集中できない……」
「何を言っているの? 教師と生徒の距離感なんて、これくらいが普通よ」
「絶対違うと思う……っ」
「いいから、ノートを見なさい。……ほら、このパラメーターをここに代入して——」
涼香の滑らかな指先がノートの上を滑る。
しかし、彼女の左手はしっかりと樹の服の裾を掴んだままで、時折、甘えるように樹の腕に頬をすり寄せてくるのだった。
【シーン2:夜の22時15分、ご褒美のひざまくらと甘いおねだり】
「——よし、これで問題集の第5章はすべてクリアね! すごいわ、樹くん」
「ふぅ……涼香の教え方が分かりやすかったおかげだよ。ありがとう」
樹が大きく伸びをして息を吐くと、涼香は満足そうにメガネを外し、ローテーブルの上に置いた。
そして、そのまま足を崩して畳の上に座り直すと、自分の太ももを優しくポンポンと叩いた。
「さあ、頑張った樹くんに『ご褒美』の時間よ。……おいで?」
膝枕。
もはや断る選択肢など存在しない。
樹がゆっくりと彼女の膝の上に頭を乗せると、柔らかい太ももの感触と包み込むような温もりが頭全体を優しく包み込んだ。
「ん……やっぱり、涼香の膝の上は一番落ち着くよ……」
「ふふ、素直で良い子ね」
涼香は愛おしそうに目を細めると、樹の髪に指を絡め、優しく頭を撫でまわした。
その心地よさに、樹の瞼がゆっくりと重くなっていく。
「ねえ、樹くん」
「ん……?」
「明日の放課後……少しだけ時間、あるかしら?」
涼香の声が、少しだけ遠慮がちに揺れた。
「特に予定はないけど……どうしたの?」
「あのね……駅前に新しいカフェができたでしょう? あそこのパンケーキがすごく美味しそうで……でも、一人で行くのは少し寂しくて……」
涼香は照れくさそうに頬を染めると、樹の頬にそっと自分の指先を滑らせた。
「……私と、デートしてくれないかしら? 『冷徹な副会長』としてじゃなくて……ただの『樹くんの恋人』として」
【シーン3:深夜23時半、布団の中の秘密の約束】
部屋の電気を消し、一つの布団の中に潜り込むふたり。
闇の中で、涼香は樹の胸元にしっかりと顔を埋め、全身で樹を抱きしめていた。
「……樹くん、さっきの答え……まだ聞いていないわ」
「ふふ、断る理由なんてないよ。明日、一緒にパンケーキ食べに行こうね」
「……本当……?」
「うん。涼香が甘いもの好きなの、知ってるし。僕も涼香とデートしたい」
「〜〜〜〜っ!」
涼香は嬉しさを抑えきれず、布団の中で樹の身体をぎゅーっと強く抱きしめ返した。
そして、樹の首元に鼻先をすり寄せ、甘い吐息を吹きかけてくる。
「……楽しみすぎて、今夜は眠れそうにないわ……。どうしてくれるの……?」
「それは涼香が楽しみすぎなだけでしょ(笑)」
「ズルい……。私ばっかり、こんなにドキドキさせられて……」
涼香は少しだけ拗ねたような声を出すと、樹の唇にそっと、深く愛を確かめるような接吻を落とした。
「……大好きよ、樹くん。明日も、明後日も……私をいっぱい甘やかしてね?」
「……うん。おやすみ、涼香」
「おやすみなさい、私の可愛い旦那様」
完璧な氷山先輩と、彼女に甘く飼い慣らされていく樹。
ふたりだけの特別な日常は、明日ももっと甘く、愛おしい時間を紡いでいくのだった——。




