樹の決意と、キャンパスでの再会を誓う春
四月中旬、新綠が眩しく輝く季節。
橘樹にとっての新しい年度――聖華高校での最後の1年である『高校三年生』の生活がスタートしていた。
生徒会の新學期準備や、高三特有の緊迫した進路指導。
放課後、樹は自分のデスクで模擬試驗の志望校記入欄を見つめていた。
『第一志望校:東京大學 文科一類』
黑黑的鉛筆痕跡,印證著他內心深處早已萌芽並茁壯的野心。
客觀來說,樹目前的偏差值距離 T 大的合格線還有相當一段距離。
但是,每當他想到那個在武道館前毫不猶豫宣告「他是我的旦那様」、在武道館上耀眼奪目的夏目涼香,樹的心中就湧現出無窮的力量。
(……涼香が私にくれた愛と努力に応えたい。ただ『年下の彼氏』で終わるつもりはない……!)
樹は力強く鉛筆を握り直し、模試の願書を提出箱へと投げ入れた。
午後六時半、夕暮れ時の新居。
樹が「ただいま」と鍵を開けて部屋に入ると、玄關からふわっと出汁の香ばしい香りが漂ってきた。
「あ、樹くん! おかえりなさい!」
パタパタと輕やかな足音を立てて迎えてくれたのは、薄黃色のカーディガンに新婚エプロンをつけた涼香だった。
手にはおたまを持ち、琥珀色の瞳を嬉しそうに輝かせている。
「涼香! おかえり……って、大學の講義は五期まであったんじゃないですか!?」
「ええ。でも講義が終わって速攻で電車に飛び乗ってきたわ。だって、あなたに『おかえりなさい』の口づけをしたかったんだもの」
涼香はつま先立ちをして、樹の頰にちゅっと可愛らしい熱い口づけを落とした。
T 大での高度な講義や課題に追われながらも、涼香は家事や樹のための夕飯作りを一切手を抜くことなく楽しんでいた。
かつて冷徹な『冰山姬』と呼ばれた少女は、今や樹を全力で愛し、支える「極上の新妻」として毎日を輝かせている。
「さあ、手をお洗いなさい? 今日は樹くんの好物の肉じゃがよ」
「……はい! すぐ洗ってきます!」
食卓に並べられた温かい家庭料理。
二人で並んで座り、「いただきます」と手を合わせる時間。
涼香は自分の肉じゃがを樹の器に取り分けながら、愛おしそうに樹の顏を見つめた。
「樹くん。高三になって、クラス替えや生徒会で疲れていないかしら?」
「全然大丈夫です。……むしろ、涼香がこうして待っていてくれるから、毎日がすごく充實しています。……でも、涼香こそT大の講義、すごく忙しいんじゃないですか?」
「ふふ、法學部の講義は覚えることが山積みで大変よ? でもね……」
涼香は樹の手をそっと握り、琥珀色の瞳を真摯に輝かせた。
「あなたのために作るお夕飯も、あなたと一緒に寢る夜も……全部私の活力なの。あなたと過ごす時間があるから、私はどんな難題も乗り越えられるわ」
夕食後、リビングの機嫌な燈光の下。
涼香が大学の分厚い専門書を開いて予習をしている隣で、樹も高三の標準問題集と格闘していた。
お互いの腕が触れ合うほどの距離で、カリカリとペンを走らせる音だけが靜かに響く。
涼香はふとペンを止め、樹が解いている問題集に視線を落とした。
「……樹くん。この數學の微分積分……志望校の傾向に合わせた解法ね。もしかして……」
樹は少し照れくさそうに頭をかきながら、ノートを隱すように胸に抱えた。
「……バレちゃいましたか」
「……樹くん。あなた、本氣で……?」
樹は涼香の瞳をまっすぐに見つめ、濁りのない力強い聲で言葉を紡いだ。
「はい。僕も……T大を目指します」
「……っ!」
「涼香が待っているあのキャンパスへ、僕も自分の力で辿り着きたいんです。『涼香の年下の彼氏』として甘えるだけじゃなく、涼香の隣に胸を張って並べる男になりたい。……一年後、あの赤門の下で、今度は『T大生どうしのカップル』として、堂々と涼香の手を握りたいんです!」
樹の真摯な決意。
涼香の胸の奥から、熱いものが一気にこみ上げてきた。
涼香は目から溢れ出る涙も拭わずに、樹の首元へ全力で飛びついた。
「樹くん……! 樹くん……っ!」
「涼香!?」
「嬉しい……っ! すごく嬉しいわ……! あなたが私のために、そこまで思ってくれていたなんて……っ!」
涼香は樹の胸元に顏をうずめ、溢れる愛おしさを全身でぶつけた。
「任せなさい……! 私があなたの専屬家庭教師になってあげるわ! 私の持っている勉強法も、T大の傾向も、全部あなたに叩き込んであげる……!」
涼香は顏を上げると、涙で濡れた瞳で樹の唇へ深く、深々と唇を重ねた。
「絶対に合格させるわ……! そして一年後、最高の春をまた二人で迎えましょう、私の最愛の旦那様……!」
「はい! 絶対に合格してみせます、涼香!」
春の夜空に輝く星々の下、二人だけの愛巢で交わされた新たな約束。
T 大生となった涼香と、T 大合格を目指す高三の樹。
二人の甘く情熱的な同居生活と、合格へ向けた二人三脚の奮鬥が、今まさに力強くスタートしたのだった。




