↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
159/169

本家の朝食と、公然たる『絶対飼育』の証明

◇


翌朝。夏目本家の朝は早い。

木造建築独特の静けさと凛とした秋の冷気が屋敷を包み込む中、私と涼香は大広間へと向かっていた。


昨夜、涼香の自室で交わした濃厚で甘い誓いの余韻が、今も私の身体の芯に温かく残っている。

私の手は涼香の細い指と隙間なく絡み合い、彼女の体温と、指先から立ち上る柑橘系のアロマの香りが冷えた廊下を優しく満たしていた。


「……樹くん、昨夜は少しお寝坊させてしまってごめんなさいね。お身体は痛むところはありませんか?」

「大丈夫だよ涼香……。でも、お義父さんや親族の皆さんが待ってるから、手を離さないと……」

「ダメです。この屋敷のどこにいようと、私があなたを愛し、守り、甘やかしているという事実を片時も隠すつもりはありません」


涼香は私の腕をさらに強く抱きかかえ、琥珀色の瞳を誇らしげに輝かせた。


◇


大広間に到着すると、長座卓には本家の料理人が腕を振るった豪華な和朝食がずらりと並べられていた。

上座には父親がドッサリと腰を下ろし、周囲には昨日厳しい視線を向けていた親族たちが静かに座っている。


「……おはようございます、父上、皆様」

「うむ。二人とも、よく眠れたか」


父親が重厚な声で頷く。

私たちが父親の案内に従って席に着いた瞬間――大広間全体の時が止まった。


涼香は自分の席に座るのではなく、ごく自然な動作で私のすぐ隣――というか、私の身体にすっぽりと腰を寄せる形で座り直したのだ。


「り、涼香……!? 席、隣にあるよ!?」

「何をおっしゃっているのですか、樹くん。私があなたの隣で直接お世話をしなければ、あなたが朝食を召し上がる際にお手に無駄な負担がかかってしまいます」


涼香は迷いなく箸を取ると、ふっくらと焼き上げられた甘い出汁巻き卵を一口サイズに切り分け、フォークで掬って私の口元へと運んできた。


「さあ、樹くん。お口を開けてください。あーん……♡」


「「「…………!?」」」


大広間にいた親族たちが一斉に目を見開き、飲んでいたお茶を吹き出しそうになる。


「こ、これ……! 夏目家の朝食の席で、そのような破廉恥な……っ!」

親族の一人が顔を真っ赤にして立ち上がろうとした、その時だった。


「――静かにしなさい」


父親の低く重い一声が広間を制した。

父親は腕を組み、真剣な眼光で涼香と私のやり取りを見つめている。


涼香は一切の怯みも見せず、堂々と父親と親族たちを見つめ返した。


「皆様。昨日もスケートボード……いいえ、ステージの上で宣言いたしました通り、これが私と樹くんの『日常』であり、解けることのない『愛の飼育』の形です。私は樹くんのお世話をすることで生きており、樹くんは私の手の中でダメ人間になることで幸せを感じてくださっています」


涼香は私の頬を愛おしそうに撫で上げ、耳元で甘く微笑んだ。


「私の命よりも大切な夫に、指一本動かす負担すらさせたくない……それのどこに、恥じる要素がありましょうか?」


圧倒的な絶対正妻の論理と、狂おしいほどの愛の威圧感。

親族たちはぐうの音も出ず、言葉を詰まらせて席に沈み込んだ。


父親はしばらく沈黙を守っていたが、やがて呆れたような、けれどどこか満足そうな笑みを漏らした。


「……フッ。見事なまでに飼い慣らされているな、樹くん。……だが、それほどまでに我が娘を惹きつけ、その重すぎる愛を受け止めきれる男は、世界中を探してもお前以外にはいまい」


「……お義父さん」


「涼香。思う存分、その男を甘やかすがいい。夏目本家は、お前たちのその『異常で美しい愛』を全面的に承認する」


「……っ! ありがとうございます、父上……っ♡」


涼香の顔に、世界で一番美しく晴れやかな笑みが咲き誇った。

彼女は嬉しさのあまり大広間の真ん中で私を力いっぱい抱きしめ、私の頬や唇へと幾度も感謝の口づけを落とした。


「見ましたか、樹くん! 本家公認です! これで誰に遠慮することもなく、私はあなたを一生、私の手の中で可愛がり続けることができますよ♡」


「う、うん……! 嬉しいよ、涼香……っ!」


親族たちの驚愕と感嘆の視線に包まれながら、私たちの絶対的な愛寵の関係は、夏目本家という揺るぎない盾を得て、さらに深く、永遠のものとなって昇華したのだった――!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

最後までお読みいただきありがとうございます!

「夏目先輩のギャップ萌えが可愛い!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、
ページ下部の【★★★★★】評価とブックマーク登録で応援していただけるとめちゃくちゃ励みになります!✨

※皆様の星とブックマークが作者の執筆の原動力です!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。