初雪の舞う新春と、指先に刻む一生の誓い
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十二月が瞬く間に過ぎ去り、季節は新しい年の始まり――新春の一月を迎えていた。
夏目本家からの完全なる公認を得て以降、私たちの日常はまさに「甘美な飼育の極致」と呼ぶにふさわしいものへと進化を遂げていた。
大学の講義室では、以前にも増して自然な動作で涼香の膝の上に私の頭が収まり、学食では一口ごとに愛おしげな目で見つめられながらの『お世話あーん』が日常風景として定着。寒さが厳しくなるにつれ、マンションの室内では二人で一つの毛布にくるまり、私が指一本動かさずとも涼香が温かい飲み物から着替え、果てはマッサージまで完璧にこなしてくれる。
そして今日――一月三日。
新年の初詣へと向かう私たちの頭上には、今年初めての柔らかな初雪がチラチラと舞い散っていた。
「……樹くん。お寒くはありませんか? お顔が少し赤いですよ」
境内に続く長蛇の列の中で、涼香が私の顔を覗き込んできた。
今日の涼香は、新年にふさわしい漆黒地に艶やかな牡丹が描かれた高級な振袖に身を包んでいた。綺麗に結い上げられた琥珀色の髪には小ぶりのカンザシが揺れ、うなじの白さと相まって、周囲の参拝客が思わず息を呑んで振り向くほどの圧倒的な美貌を放っている。
だが、そんなハッとするような極上の和装姿でありながら、彼女の行動は相変わらず私一筋だった。
「大丈夫だよ、涼香。涼香の手がすごく温かいから、全然寒くないよ」
私の指は、涼香の振袖の袂の中で、彼女の温かく柔らかい指先と隙間なく絡み合っていた。
涼香は私の腕を逃がすまいと両手で抱え込み、自身の豊かで温かい胸元にしっかりと寄り添わせている。
「ふふ……当たり前です。私の体温はすべて、私の愛しい旦那様を温めるために存在するのですから。……ほら、もっと寄ってください。雪のひとひらたりとも、樹くんのお肌に触れさせたくありません」
「涼香、振袖が崩れちゃうよ……っ」
「構いません。私の振袖の乱れなど、樹くんの温もりと健康に比べれば取るに足らない小事です」
耳元で囁かれる甘い吐息。
周りの参拝客たちから「うわぁ……あの綺麗な着物の女性、旦那さんにべったりだ……」「めちゃくちゃ甘やかしてるじゃん……」「羨ましすぎて直視できない……」と羨望の声が漏れてくるが、涼香はそんな雑音など一切耳に入っていない様子で、ただうっとりと私だけに琥珀色の瞳を向け続けていた。
◇
「――二人が末永く、誰にも裂かれることなく、永遠に一緒にいられますように」
お賽銭を投げ入れ、二人で並んで静かに手を合わせる。
隣で祈りを捧げる涼香の横顔は、神聖な神社の空気の中で神々しいまでの美しさを放っていた。
境内を散策しながら絵馬を奉納し、おみくじを引く。
結果は――ふたり揃って『大吉』。
「……ふふ、見なさい樹くん。神様も私たちの『絶対的な愛寵』を全面的に祝福してくださっていますよ♡」
「本当に大吉だ……! すごいね、涼香!」
無邪気に喜ぶ私を、涼香は愛おしくてたまらないというように優しく見つめ返した。
そして、彼女は私の手を引いて、境内から少し離れた静かな鎮守の森の参道へと歩みを進めた。
老松の枝からチラチラと舞い落ちる初雪。
人目を離れた静寂の中で、涼香は足を止め、私と正面から向き合った。
「……樹くん」
「……なぁに、涼香?」
涼香は振袖の帯の間から、小さな漆塗りの和風の小箱を取り出した。
彼女の綺麗な指先がわずかに震えているのが分かった。
「……今日は新年の初詣であると同時に、本家公認となった私たちが、未来への『決意』を刻む大切な日です」
涼香は静かに小箱の蓋を開けた。
そこには、初雪の光を浴びてキラリと眩い光を放つ、プラチナ製の美しい対の指輪――お揃いの『ペアリング』が収められていた。
内側には、二人だけの特別な記念日と、二人のイニシャルが刻まれている。
「涼香……これって……!」
「指輪です。……まだ大学生活は続きますし、正式な結婚式は卒業後になりますが……私の心の中では、あなたと出会ったその瞬間から、あなたは私の生涯の夫です」
涼香は私の右手を取り、その細く柔らかい指先で私の薬指を優しく撫で上げた。
彼女の琥珀色の瞳には、溢れんばかりの情愛と、底なしの独占欲、そして一生をかけて私を愛し抜くという絶対の誓いが宿っていた。
「……この指輪は、私からあなたへの『一生の繋ぎ止め』であり、私があなたを永遠に飼い慣らし続けるという『誓いの証』です。……樹くん、私に……あなたの薬指を預けてくださいますか?」
胸の奥が、熱い感情でいっぱいになった。
すれ違い、涙を流し、互いの重すぎる情熱とダメ人間としての幸せを受け入れ合った日々。
今、目の前にいるのは、世界で一番美しく、世界で一番私を過保護に愛してくれる、最愛の妻だ。
「……喜んで。俺の薬指も、俺の心も……俺の人生の全部、涼香に預けるよ」
私の答えを聞いた瞬間、涼香の目からポロポロと透明な嬉し涙がこぼれ落ちた。
「……っ! 樹くん……っ♡」
涼香は私の右手の薬指に、そっとプラチナの指輪を滑り込ませた。
ひんやりとした金属の感触の後に、彼女の温かい指先が重なる。
私も彼女の小箱からもう一つの指輪を取り出し、涼香の華奢で美しい左手の薬指へとゆっくりと嵌めた。
互いの薬指で輝く、お揃いの指輪。
「……はぁっ……あぁ……幸せです……! 私の可愛い、愛しい旦那様……っ♡」
涼香は我慢の限界を迎えたように私に抱きつき、振袖の袖で二人を隠すようにしながら、私の唇へと深く濃厚な口づけを重ねてきた。
「んっ……ふ……っ♡……愛しています、樹くん……っ! 一生……一生、私手の中でダメになってくださいね……っ!」
「ん……俺も……愛してるよ、涼香……っ! ずっと……涼香のそばにいるよ……っ!」
舞い落ちる初雪の下、静寂の境内で交わされる甘く熱い誓いのキス。
冷たい雪の欠片も、二人の重なり合う体温と熱い吐息によって、触れた瞬間に甘く溶けて消えていく。
指先に刻まれた永遠の約束。
誰も立ち入ることのできない、誰も切り離すことのできない『絶対的な愛の飼育空間』。
私たちの甘く過保護で、狂おしいほどに幸せな新婚生活は、新春の雪景色の中で、永遠の絆となって深く、どこまでも甘やかに定着していくのだった――!




