妹のキャンパスライフと、過保護すぎる「義兄嫂」の影
【シーン1:春の午後13時00分、都内大学のキャンパス(大学生活と葵のモテ期)】
桜の舞い散る、大学のキャンパス。
大学生になった葵は、髪を少し伸ばし、大人っぽいコーディネートに身を包んでいた。
高校時代の幼さはすっかり抜け、キャンパス内でも「あのかわいい1年生は誰?」と密かに話題になるほどの美少女へと成長していた。
「あ、あの! 葵ちゃん! この後、サークルの新歓コンパ……一緒にどうかな?」
講義棟の前のベンチで、葵は同じ学部のイケメン先輩から声をかけられていた。
「あ、えっと……すみません。今日はこの後、家族と約束があるので……」
葵が申し訳なさそうに断ろうとした、その時。
「——そこまでよ」
カツン、カツンと高級感のあるヒールの音が響き渡り、日傘をさした超絶美人が現れた。
上質なオフィスカジュアルに身を包み、知的なメガネをかけた——そう、社会人になった樹 涼香である。
「え……っ!? 涼香さん……ううん、涼香お義姉さん!?」
「ふふ、お姉さんと呼びなさい、葵ちゃん」
涼香は優雅に日傘をたたむと、葵の隣にすっと立ち、琥珀色の瞳でナンパ男を冷たく射ぬいた。
「申し訳ないけれど、うちの可愛い妹(義妹)に手を出すのは遠慮してもらえるかしら? この子には……過保護な『お兄ちゃん』と、もっと過保護な『お義姉さん』がついているの」
「な、なんだこの美人……っ!? 姉妹……!?」
ナンパ男が威圧感に気押されていると、後ろから高級外車のドアが開き、スーツ姿の樹が走ってきた。
「葵! 大丈夫か!? ヘンな男に絡まれてないか!?」
「お兄ちゃんまで!? なんでふたりで私の大学に来てるのよーっ!?」
葵の叫び声がキャンパスに響き渡った。
【シーン2:午後14時00分、キャンパス近くのカフェ(義兄嫂の過保護取調べ)】
「……で? なんでふたりで私の大学に乗り込んできたわけ?」
カフェのテーブル席で、葵は腕組みをして呆れ顔でふたりを睨んでいた。
「ふふ、だって葵ちゃんが『大学で男子に声をかけられた』ってLINEで言っていたでしょう? 心配になって仕事の昼休みに二人で見に来たのよ」
涼香は優雅にカフェラテを一口飲むと、樹の手をぎゅっと握りしめた。
「そうだよ葵! 大学の男は狼ばかりだからな! 簡単に連絡先教えちゃダメだぞ!」
「お兄ちゃん、完全に娘を心配する父親の顔になってるからね……!?」
葵は頭を抱えたが、自分を大切に思ってくれている二人の温かさに、胸の奥がキュッと温かくなった。
「もう……大丈夫だよ。私はもう子供じゃないんだから。お兄ちゃんたちのこと、安心させられるくらい立派な大人になるもん」
「葵……」
樹が感無量といった表情で目頭を押さえると、涼香はクスッと微笑んで葵の手を優しく包み込んだ。
「ええ、知っているわ。葵ちゃんがとても魅力的で、強い女の子だってこと。……でもね、家族なんだから、少しは心配させてちょうだい?」
「……もうっ、涼香お義姉さんには敵わないなぁ」
葵は照れくさそうに笑った。
【シーン3:午後16時00分、大学の図書館(白鳥先輩との再会と、新しい予感)】
樹と涼香を何とか送り返した後、葵は大学の図書館へと向かった。
資料を探していると、奥の閲覧スペースでノートPCを猛スピードで叩いている女性の姿があった。
綺麗な黒髪ロングにメガネ——文芸部名誉OGの白鳥 麗華だった。
「白鳥先輩!?」
「あら……葵ちゃん? 奇遇ね」
白鳥先輩はメガネを持ち上げ、ニヤリと妖しい笑みを浮かべた。
「また新作の取材ですか?」
「ええ。あの二人の甘々結婚生活をモデルにした『続・氷山副会長の過剰飼育日記』が大ヒットしてね。今はその続編を書いているのよ」
「相変わらず商魂たくましいですね……」
葵が苦笑いすると、白鳥先輩はふっと優しい表情になり、葵の隣の席を指さした。
「座りなさいよ。……どう? キャンパスライフは楽しい?」
「はい! すごく楽しいです。……お兄ちゃんたちの過保護には参りますけど」
「ふふ、愛されている証拠じゃない。……ねえ、葵ちゃん?」
白鳥先輩はノートPCを閉じると、葵の目をじっと見つめた。
「そろそろ……あなた自身の『新しい物語』を始めてみたらどうかしら? ほら、あそこであなたをずっとチラチラ見ている、文芸部期待の新入生くん……なかなか筋がいいわよ?」
白鳥先輩が指さした先には、本棚の陰で照れくさそうに葵を見つめている、眼鏡をかけた真面目そうな男の子がいた。
「えっ……!? や、やだ先輩! 変なこと言わないでくださいっ!」
顔を真っ赤にする葵。
「ふふ、初恋を乗り越えた女の子は美しくなるものよ。……応援しているわ、私の可愛いモデルさん♪」
【シーン4:夕暮れの帰り道(家族の絆と、明日への一歩)】
図書館を出て、夕陽に染まるキャンパスを歩く葵。
スマホが『ピコン』と鳴った。
見ると、樹と涼香から写真付きのLINEが届いていた。
『葵、今日の夜ごはんは葵の好きなハンバーグだよ! 涼香と一緒に作って待ってるから、早く帰っておいで!』
添付されていたのは、エプロン姿で仲良く並んで微笑む樹と涼香の写真。
葵はスマホを胸に抱きしめ、夕空を見上げてクスッと笑った。
「ふふ……本当に、世界一おせっかいで、世界一温かいお兄ちゃんとお義姉さんだな」
初恋は終わったけれど、自分の後ろにはいつも温かい「家族」がいる。
そして、自分の前には無限に広がる新しい未來と、素敵な恋の予感が待っている——。
葵は鞄をしっかりと持ち直すと、大好きな家族が待つ「家」に向かって、軽やかな足取りで走り出したのだった。




