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氷山妻(元・副会長)の風邪と、過剰な逆飼育(甘え)

【シーン1:週末午前8時00分、新婚生活のベッド(天下の氷山妻、不覚の風邪)】


「……んぅ……樹くん……」


休日の朝。いつもなら樹より早く起きて愛妻朝食を作っているはずの涼香が、布団の中から出ずに小さく唸っていた。


「涼香……? どうしたの、体調悪い……?」


樹が心配そうに覗き込むと,涼香の頬はぽっと赤く染まっており、琥珀色の瞳はトロリと潤んでいた。


「……ううん、大丈夫よ。ただの……ちょっとした熱だから。すぐ起きて……朝ごはん作るわね……」


涼香はふらふらと起き上がろうとするが、樹がすかさず肩を優しく押さえてベッドへ戻した。


「ダメだよ! 38度もあるじゃないか……! 今日は僕が涼香のお世話をするから、おとなしく寝ていて」


「えっ……樹くんが……お世話……?」


涼香は目を丸くした後、熱のせいか、それとも嬉しさのせいか、頬をさらに赤くして布団を頭までかぶった。


「……ダメよ。あなたをダメ人間にして飼い慣らすのが私の仕事なのに……お世話されるなんて……格好がつかないわ……」


「格好なんてどうでもいいの! いつも涼香に甘えっぱなしなんだから、今日くらい僕に頼ってよ!」


樹が頼もしく胸を張ると、涼香は布団から目だけをひょっこり出して、愛おしそうに樹を見つめた。


「……本当? 本当に……今日だけは、甘えてもいいの……?」


「うん、いくらでも甘えて!」


この時の樹はまだ知らなかった。

普段「飼育員」である涼香が本気で「被飼育者(甘えん坊)」になった時の恐ろしい破壊力を——。


【シーン2:午前10時00分、キッチンとベッド(慣れないお粥と極致の『あーん』)】


樹がクックパッドと格闘しながら作った、少し不恰好だが愛情たっぷりの「たまごお粥」。


お盆に乗せて部屋へ運ぶと、涼香はベッドの上でポツンと座って待っていた。


「涼香、できたよ。お粥、食べられる……?」


「……うん。樹くんが作ってくれたものなら、全部食べたいわ……」


樹がお椀を渡そうとすると、涼香は両手を袖の中に引っ込めたまま、上目遣いに樹を見つめた。


「……手が力入らなくて……持てないの。……あーん、して?」


「っ……!」


普段は樹に「あーん」を強制する側の涼香が、潤んだ瞳で口を少し開けて待っている。そのギャップと可愛さに、樹の心臓は爆発寸前だった。


「は、はい……あーん……っ」


スプーンでそっとお粥を口に運んであげる。

涼香はモグモグと嬉しそうに味わうと、ふはっと幸せそうな息を漏らした。


「……世界で一番美味しいわ。樹くんの愛が、身体中に染み渡っていくみたい……♡」


「そ、そうかな……? 焦げついてないか心配だったんだけど……」


「ううん、完璧よ。……ねえ、樹くん。お粥を食べ終わったら……ここ(ベッド)に入ってきて?」


「えっ! 感染っちゃうよ!?」


「いいの。……あなたの体温と匂いがないと、お薬が効かないの……っ」


【シーン3:午後14時00分、午後のベッド(過剰な皮膚接触と『充電』)】


結局、涼香の強い要求(と甘い抱擁)に押し切られ、樹は涼香と一緒に布団の中に入っていた。


涼香は樹の胸元に完全に潜り込み、樹の首筋に顔を埋めてハァハァと熱い息を吐き出している。

両手両脚で樹の身体をしっかりとホールドし、まるでコアラのように離れない。


「涼香……これ、逆に熱上がっちゃわない……?」


「上がらないわ……。むしろ、樹くんの『旦那様パワー』で熱が下がっていってるの……」


「そんな怪しい科学聞いたことないよ……っ!」


「ふふ……本当に効いているのよ? ほら……」


涼香は顔を上げると、樹の唇にチュッと熱いキスを落とした。

汗で少し額に貼りついた黒髪と、トロンとした瞳。いつもは完璧な「正妻」としての威厳を持つ彼女が、熱のせいで完全に防衛本能を失い、少女のように甘えてくる。


「樹くん……大好き。……一生、私のこと放さないでね……?」


「涼香……。うん、放さないよ。一生、僕が涼香を守るから」


樹が涼香の頭を優しく撫でてあげると、涼香は満足そうに「んふふ……♡」と微笑み、樹の胸の中で静かに寝息を立て始めた。


【シーン4:翌朝7時00分、完全復活といつもの『飼育』日常】


翌朝。


樹が目を覚ますと、すっかり熱が下がって元気いっぱい(むしろパワーアップ)した涼香が、エプロン姿でベッドの脇に立っていた。


「おはよう、私の可愛い樹くん♡」


「涼香……! 熱、下がったんだね! 良かった……!」


「ええ、あなたの手厚い看病(と甘やかし)のおかげで、完璧に復活したわ!」


涼香は琥珀色の瞳をキラキラと輝かせると、バサッと布団を剥ぎ取り、樹の身体を抱き起こした。


「さあ! 昨日はたっぷり甘えさせてもらったから……今日からはその十倍、あなたを甘やかしてダメ人間にしてあげるわね!」


「えっ、十倍!? ちょっと待って涼香、昨日ので僕も結構体力が——」


「ダメよ♡ ほら、まずは朝の『目覚ましキス』からいくわよ……んっ♡」


「んんっ……!?」


風邪が治った涼香の愛情表現は、昨日よりもさらに重く、甘く、深くなっていた。


結局、お世話をしたはずの樹が、最後はやっぱり涼香の手の上で転がされ、幸せな「ダメ人間」へと飼い慣らされていくのだった——。

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