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隣の氷山妻に、一生ダメ人間へと飼い慣らされる件



高校卒業から数年。

春の柔らかい光が降り注ぐチャペルの控え室には、純白のウェディングドレスに身を包んだ一人の美しい女性が鏡の前に立っていた。


夏目涼香——ううん、今日から「樹(いつき) 涼香(すずか)」になる彼女だ。


さらさらの黒髪は美しいアップスタイルにまとめられ、繊細なレースのベールが彼女の琥珀色の瞳を優しく包み込んでいる。


「ふぅ……少し緊張しているのかしら、私……」


胸元に手を当て、小さく息を吐く涼香。

そこへ、タキシード姿で少し落ち着かない様子の樹が入ってきた。


「涼香……準備できた? そろそろ開式——」


樹の言葉が途切れた。

鏡の前で振り返った涼香の姿があまりにも神聖で、息をのむほど美しかったからだ。


「じ、樹くん……? そんなに見つめられたら、恥ずかしいのだけれど……」


少し頬を赤く染める涼香。樹は吸い寄せられるように歩み寄ると、涼香の両手を優しく包み込んだ。


「涼香……すごくキレイだ。世界で一番……美しいよ」


「……ずるいわね。そんな風に言われたら……式が始まる前に、あなたに飛びついてキスしたくなっちゃうじゃない……」


涼香は潤んだ瞳で樹を見上げると、樹のタキシードの襟元をギュッと握り締めた。


「高校であなたに出会ってから……今日まで、一秒たりともあなたのことを愛していなかった時間なんてなかったわ。……今日から本当に、あなたの『正妻』になれるのね……?」


「ああ。もう『彼女』じゃないよ。僕の、生涯たった一人の……お嫁さんだ」


「……樹くんっ……♡」


二人が愛おしそうに見つめ合い、唇を重ねようとした瞬間——


「ちょっとー! 新郎新婦! チャペルの前でイチャイチャしないのーっ!」


バンッ! と勢いよくドアが開いた。


そこに立っていたのは、華やかなドレス姿に身を包んだ葵と、カメラを構えた白鳥先輩だった。


「葵……! 白鳥先輩も!」


「もう! 式の直前までお兄ちゃんをダメ人間にしようとしないでよ、涼香さん! ううん……今日からは『涼香お義姉さん』だね!」


葵は胸を張り、ニカッと眩しい笑顔を浮かべた。その瞳には、失恋を乗り越え、二人を心から祝福する温かい光が宿っていた。


「ふふ、最高のシャッターチャンスを逃すところだったわ。新婚夫婦の熱々ショット、しっかり収めさせてもらったわよ」


白鳥先輩がパシャパシャとカメラのシャッターを切る。


「さあ、二人とも! 世界で一番幸せな結婚式の始まりだよ!」


葵の呼びかけに、樹と涼香は顔を見合わせ、幸せそうに微笑み合った。


【シーン2:午前11時30分、挙式と誓いのキス(全校の仲間たちと葵の涙)】


重厚なパイプオルガンの音色が響き渡る大聖堂。


ステンドグラスから差し込む光の中、バージンロードを歩む樹と涼香。

参列者席には、高校時代の友人たち、生徒会の仲間たち、そして温かく見守る両親たちの姿があった。


誓いの言葉が交わされる。


「健やかなるときも、病めるときも……彼を愛し、敬い、甘やかしてダメ人間にすることを誓いますか?」


神父の(少し特殊な)問いかけに、涼香は真っ直ぐな瞳で答えた。


「はい、生涯をかけて誓います」


「新郎、誓いのキスを」


樹は涼香のベールをゆっくりと上げると、彼女の琥珀色の瞳を見つめた。


「涼香、一生幸せにするよ」


「ええ……私を一生、あなたのお世話係にさせてね……♡」


誓いのキスが交わされた瞬間、チャペル内に万雷の拍手と歓声が巻き起こった。


「お兄ちゃん! 涼香さん! おめでとうーーーーっ!」


最前列で、葵が大粒の涙をぽろぽろとこぼしながら、誰よりも大きな声で拍手を送っていた。

涼香は葵に向かって優しく微笑み、小さく手を振った。


【シーン3:数年後の日常・午前7時00分、ふたりの新居(「夏目涼香」改め「樹涼香」の完全飼育生活)】


結婚からさらに月日が流れた、ある晴れた朝。


ふたりが暮らす新しいマンションのLDKには、香ばしい焼き魚と味噌汁の甘い香りが漂っていた。


ベッドの中でむにゃむにゃと目を覚ます樹。


「ん……んん……もう朝か……」


樹が起き上がろうとすると、腰にズッシリとした心地よい重みを感じた。

見下ろすと、樹の大きめのワイシャツ一枚(※彼シャツスタイル)を着た涼香が、樹の胴体にぴったりと抱きついてすやすやと眠っていた。


「涼香……朝だよ? ごはん作ってくれてたんじゃないの……?」


「んぅ……あと五分……旦那様エキスを補給させて……」


涼香は樹の胸元にスリスリと顔を擦り付け、猫のように甘い声を漏らす。

かつて学校で「氷山姬」と恐れられていた面影はどこにもない。ここにあるのは、樹に甘え倒す最高の「愛妻」の姿だけだ。


「こらこら、焦げちゃうよ? ほら、起きて」


樹が涼香の頭を撫でてあげると、涼香はトロンとした琥珀色の瞳を開け、樹の唇にチュッと甘いキスを落とした。


「……おはよう、私の可愛い旦那様♡」


「おはよう、涼香」


「ふふ、今日の朝ごはんも、あなたの好きなメニューばかりよ? さあ、リビングへ行きましょう。……今日も私が、あーんして食べさせてあげるわね」


「自分で食べられるってば……っ」


「ダメよ。あなたは私に甘やかされて、ダメ人間になっていればいいの……それが、私の生きがいなんだから♡」


涼香は樹の手をギュッと握り締め、指を絡めて幸せそうに微笑んだ。


【シーン4:エピローグ・永遠に続く甘い飼育(グランドフィナーレ)】


ベランダに出て、二人で並んで朝の光を浴びる。


風が二人の髪を優しく揺らす。

涼香は樹の腕にそっと自分の腕を絡め、樹の肩に頭を乗せた。


「ねえ、樹くん?」


「なに、涼香?」


「私ね……あなたと出会えて、本当に幸せよ」


「僕もだよ。涼香が僕を『飼い慣らして』くれたおかげで、毎日が世界で一番楽しいんだ」


「ふふ……覚悟しておいてね? おじいちゃんとおばあちゃんになっても……私はあなたを膝枕して、手料理を食べさせて、ずっとずっとダメ人間にし続けるんだから」


「ふふ、望むところだよ。一生、涼香の隣でダメ人間になってあげる」


樹が涼香の腰を抱き寄せると、涼香は愛おしさに耐えきれないように微笑み、二人は朝光の中で深くて甘い接吻を交わした。


氷のように冷たかった彼女が魅せた、極上の甘さと独占欲。

二人だけの甘く、優しく、どこまでも幸せな物語は——これから先も、永遠に続いていくのだった。


【隣の氷山先輩に、いつの間にかダメ人間へと飼い慣らされていた件 — END】

【重要告知】第2部(大学・同居編)本日より大好評連載中! 第123話からすぐ読めます!

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