文化祭の準備と、永遠の『飼育』の予感
【シーン1:10月下旬、放課後の生徒会室(文化祭前の喧騒と二人の空間)】
文化祭まで、あと一週間。
校内は準備に追われる生徒たちの熱気に包まれていた。
生徒会室で一人、大量の申請書類を処理していた樹がふぅと溜息をついた、その時。
カチャリ、とドアが開き、エプロン姿の涼香が入ってきた。手には温かい紅茶と手作りのクッキーが載ったトレイがある。
「お疲れ様、樹くん。……少し休憩にしましょう?」
「涼香……! ありがとう、助かるよ……」
涼香は樹の隣に腰掛けると、手際よく紅茶を注ぎ、クッキーを樹の口元へ差し出した。
「はい、あーん♡」
「あ、あーん……ん、美味しい……っ」
「ふふ、良かったわ。……ねえ、樹くん? 文化祭が終わったら、少し時間ができるでしょう?」
涼香は樹の腕にそっと自分の手を重ね、琥珀色の瞳を少し潤ませながら見つめてきた。
「私ね……あなたと一緒に行きたい場所がたくさんあるの。……二人の『これから』について、ゆっくり話したいわ」
「涼香……うん、僕もだよ。文化祭、絶対に成功させようね」
【シーン2:文化祭前夜、誰もいない教室(夕陽の中の誓い)】
準備が終わり、すっかり人影がなくなった黄昏時の教室。
茜色の光が差し込む窓辺で、涼香と樹は並んで立ち、校庭を見下ろしていた。
「……ねえ、樹くん。私と出会った頃のこと、覚えているかしら?」
涼香が優しく微笑みながら問いかける。
「覚えているよ。あの頃の涼香は『氷山姫』って呼ばれていて、すごく凛としていて……僕なんかが話しかけちゃいけないような人だった」
「ふふ、そうね。……でもね、あなたに『甘やかされて』、あなたを『ダメ人間にして飼い慣らす』ようになってから……私の世界は、黄金色に輝き始めたの」
涼香は樹の手に自分の指を絡め、ぎゅっと強く握り締めた。
「文化祭の最終日……後夜祭で、私に大切な時間を頂戴ね? あなたに……私の『全部』を誓いたいから」
「涼香……っ。うん、約束するよ!」
二人を照らす夕陽は、これから訪れる「最高の永遠」を祝福するかのように、温かく街を包み込んでいた——。
(第 119 話:文化祭本番と、後夜祭の誓いへ続く)




