妹のデート申請と、正妻の完全監視(モニタリング)態勢
【シーン1:翌朝7時30分、樹のマンション(LINEの通知と涼香の強烈な勘)】
朝の光が差し込むリビング。
エプロン姿の涼香が朝食の味噌汁を食卓に運んでいると、ソファに置かれた樹のスマホが『ピコン』と鳴った。
画面に表示されたのは、葵からのLINEメッセージ。
『お兄ちゃん、今週末の土曜日……私とふたりだけでデートして! 妹としてじゃなく、お願い!』
「……あら?」
お玉を持ったまま、涼香の琥珀色の瞳がすっと細められた。
ちょうど洗面所から髪を乾かしながら出てきた樹は、スマホの画面と涼香の表情を交互に見て、冷や汗をダラダラと流した。
「り、涼香……これはその、葵がですね……」
「いいのよ、樹くん。隠さなくても……。葵ちゃんが本気になったってことでしょう?」
涼香は優しく微笑みながら樹に近づくと、樹の首元に回した手でトン、と優しく胸を叩いた。
「断るつもりだったの?」
「うん……だって、涼香に悪いし……血が繋がっていないとはいえ、葵に変な期待を持たせるのも良くないかなって……」
「ふふ、合格よ。私の誠実な旦那様♡」
涼香は樹の頬にチュッと甘いキスを落とすと、フッと妖しく微笑んだ。
「でもね……断らせないわ。そのデート、行ってらっしゃい」
「えっ!? い、いいの!?」
「ええ。ただし——私が『完全監修』として同行するという条件付きよ」
【シーン2:放課後16時00分、生徒会室(正妻の『監視作戦』ミーティング)】
「というわけで……今週末、樹くんと葵ちゃんのデートに私たちが影から同行します」
「……夏目先輩、それただの尾行じゃ……」
生徒会室。涼香の呼び出しで集められた樹、そしてなぜか巻き込まれた生徒会メンバーたち。
黒板には、涼香の手によって詳細な「水族館&ショッピングモールデートコース」のマップが描かれていた。
「尾行ではないわ。『正妻による愛のモニタリング』よ。葵ちゃんがどれだけ本気なのか、そして樹くんがしっかり『妹』として線引きできるかを観察するの」
涼香はメガネ(変装用)をクイッと持ち上げると、真剣な面持ちで語り出した。
「変装用の帽子、伊達メガネ、そして……樹くんにはこの『インカム(小型イヤホン)』を装着してもらうわ」
「インカムまで!? 涼香、本格的すぎない!?」
「当たり前でしょう? 葵ちゃんが過剰なスキンシップをしてきたら、私が耳元で『ダメよ、樹くん』と指示を出すわ。……あと、私の嫉妬心が限界突破した時の緊急避難用よ」
「最後の理由が一番怖いです……」
樹は震え上がったが、涼香の目には「可愛い彼氏を他の女の子(たとえ義妹でも)に渡さない」という強い執念と、どこか楽しそうな光が宿っていた。
【シーン3:金曜日の夜23時00分、ベッドの中(前夜の甘やかしと手繋ぎの約束)】
明日にデートを控えた金曜の夜。
布団の中で、涼香は樹の胸元にぴったりと体を寄せ、彼の服の裾をギュッと握り締めていた。
「涼香……明日、本当に大丈夫?」
「……大丈夫じゃないわよ」
涼香は樹の胸に顔を埋めたまま、むすっとした声で呟いた。
「本当は……1秒だって他の女の子と二人きりにさせたくないわ。……でも、葵ちゃんの気持ちをちゃんと受け止めて、樹くんが『私の旦那様』だってことを証明してほしいの……」
涼香は顔を上げ、潤んだ瞳で樹を見つめた。
「だから……約束して? 明日、葵ちゃんと手を繋いじゃダメ。甘えさせすぎてもダメ。……私のこと、ずっと頭の片隅で考えていて?」
「約束するよ、涼香。僕の彼女は、世界で涼香だけだから」
「……うん。よしよし、いい子ね」
涼香は樹の頭を抱きかかえ、自分の胸元へと優しく引き寄せた。
「明日は離れた場所から見守っているからね……。私の可愛い樹くん♡」
こうして、涼香の「正妻監修・義兄妹デート監視作戦」の幕が上がったのだった——!




