解き放たれた氷山姫と、夜の秘め事
【シーン1:19時00分、ふたりだけの帰り道(放課後の余韻)】
放課後の生徒会室での甘い密室の時間を終え、すっかり陽の落ちた街灯の道を、ふたりは歩いていた。
学校の敷地を出ても、涼香は樹の手を離そうとしなかった。
それどころか、昼間の幾分ピリッとした緊張感が抜けたせいか、涼香の歩調はどこかくったりとしており、樹の右腕に全身の体重を預けるように寄り添っている。
「……涼香? ちょっと歩きにくくない……?」
「ふふ……嫌かしら?」
涼香は樹の腕に頬をすり寄せながら、琥珀色の瞳を上目遣いに揺らした。
夜風に揺れる黒髪から、彼女特有の甘い柑橘系とホワイトムスクの香りがふわりと立ち上り、樹の鼻腔をくすぐる。
「嫌じゃないけど……誰かに見られたらまた噂になっちゃうよ」
「もう全校生徒に宣言したのだから、いまさら何を見られても関係ないわ。……それにね、樹くん」
涼香は立ち止まると、樹の手を両手で包み込み、自分の胸元へと引き寄せた。
トントン、と規則正しく打たれる彼女の小さな鼓動が、薄いブラウス越しに樹の手に伝わってくる。
「学校での私は『完璧な副会長』でいなきゃいけないけれど……ここから先は、ただの『樹くんだけの涼香』よ。……早くお家に帰って、あなたに思いっきり甘えたいわ」
「っ……うん、帰ろう。今夜は涼香の好きなハンバーグ作るね」
「まあ……! 本当? 嬉しい……っ、私、樹くんのハンバーグが大好きなの……!」
冷徹な「氷山姫」の面影などどこにもない。
ただの恋する乙女のように無邪気に喜ぶ涼香の姿に、樹の胸はキュンと締め付けられるのだった。
【シーン2:20時30分、夕食後のリビング(完全なる甘やかしモード)】
夕食を終え、お風呂上がり。
部屋には、微かにシャンプーの甘い香りが漂っていた。
樹がローテーブルで明日の授業の予習をしようとノートを開いた瞬間——後ろからふわりと柔らかい感触が背中に押し付けられた。
髪を乾かしたばかりの涼香が、薄手のルームウェア姿で樹の背中にぴったりと抱きついてきたのだ。
ノーブラの柔らかい体温と感触がダイレクトに背中に伝わり、樹の思考は一瞬でフリーズする。
「り、涼香……!? お風呂上がりなのに、近すぎるよ……っ!」
「いいじゃない。……私、今日はずっと我慢していたのよ?」
涼香は樹の首元に顔を埋め、深々と息を吸い込んだ。
「学校ではみんなの視線があって……生徒会室でも美咲さんが来たりして……全然、樹くんの成分が足りていないの。……もっと、私を充填して?」
「充填って……っ」
涼香は樹の首筋にそっと唇を寄せ、チクリと小さな痛みが走るほどの甘いキスを落とした。
「っ……あ……」
「ふふ、可愛い声を出すのね、樹くん。……ほら、ノートはもうおしまい。今夜は私だけを見て?」
涼香は樹の手からシャーペンをすっと奪い取ると、ローテーブルの上に放り投げた。
そして、戸惑う樹の身体を強引に向き直らせると、自分の太ももの上に樹の頭を優しく導いた。
「さあ……今日も一日、頑張った樹くんに『特別なお手入れ』をしてあげるわ」
【シーン3:21時15分、極上の膝枕と耳かき(甘い支配)】
抗う術など最初から存在しない。
樹が涼香の柔らかい膝の上に頭を乗せると、涼香は満足そうに微笑み、膝の上に置いたクッションで樹の頭を包み込んだ。
「痛かったら、すぐに言いなさいね?」
涼香の手には竹製の耳かきが握られていた。
視界に映るのは、下から見上げる涼香の美しい顎のラインと、蕩けるような甘い瞳、そして胸元の控えめな谷間。
「涼香……この角度、ちょっと恥ずかしすぎるんだけど……」
「だーめ。動いちゃ危険よ? ……ほら、力を抜いて……身を委ねなさい」
涼香の細い指先が樹の耳たぶを優しく摘み、竹の棒が耳の奥へとゆっくりと滑り込んでくる。
カリ、カリ……と、心地よい音が脳内に直接響く。
涼香の温かい吐息が耳元にかかるたび、樹の全身から力が抜け、背筋に甘い痺れが駆け抜けた。
「……んっ……」
「ふふ、気持ちいいかしら? 樹くんは本当に耳が敏感ね……可愛いわ」
涼香は耳かきを動かしながら、もう片方の手で樹の額や頬を優しく撫でまわした。
その手つきは、まるで宝物を慈しむかのように繊細で、どこまでも甘い。
「ねえ、樹くん。今日、学校でみんなに私たちの関係を言った時……本当は少し怖かったの」
「え……涼香が……?」
「ええ。あなたが嫌がるんじゃないか……私から離れていってしまうんじゃないかって。……でも、あなたが私の手を握り返してくれた時、私……生きている中で一番幸せだったわ」
涼香の声が微かに震えていた。
樹は膝の上から手を伸ばし、涼香の頬にそっと触れた。
「僕だって嬉しかったよ。涼香が僕をそこまで想ってくれているって分かって……すごく誇らしかった」
「〜〜〜っ……! もう、樹くんったら……!」
涼香は耳かきをローテーブルに置くと、耐えきれなくなったように屈み込み、樹の頬や額、そして唇に何度も何度も情熱的な接吻を降らせた。
【シーン4:深夜23時00分、ベッドの中での愛の鎖(逃げられない飼育)】
消灯された部屋。
布団の中で、二人の身体は隙間なく密着していた。
涼香は樹の胸に完全に顔を埋め、自分の両脚を樹の脚に絡めつける「完全拘束」の体勢をとっていた。
「……涼香、これじゃ苦しくない……?」
「ううん……これが一番落ち着くの。樹くんの体温と胸鳴りが……私の一番の睡眠薬だから」
涼香は樹のパジャマの裾に手を滑らせ、樹の背中を愛おしそうになぞった。
「明日からも……学校でたくさん見せつけてあげましょうね。あなたが私だけのものだって……全校生徒に刻み込んであげるわ」
「ふふ、手加減してよね……?」
「ダメよ。……私に飼い慣らされたダメ人間なんだから、おとなしく私に愛されていなさい」
涼香は樹の首元に小さく歯を立てて甘噛みすると、満足そうにフフッと笑った。
「大好きよ、樹くん。おやすみなさい……私の可愛い旦那様」
「おやすみ、涼香」
冷徹な氷山姫の完璧な愛と独占欲に包まれながら、ふたりの夜はどこまでも甘く、深く更けていくのだった——。




