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やりたかないのに陰陽師四  作者: 辻本 真悟
第五章:相坂トンネル大乱戦と最強の留守番パッチ
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第三十三話:ファミリー・リンク・歪んだシステムの終着点

 相坂トンネルの手前。

 怒濤の大乱闘へ雪崩れ込む――そんな最悪のストリート・ウォー(全面戦争)のブート設定は、我が家のクソ親父が吐き出したあまりにもくだらねえ家庭内ログ(子作りのエネルギー解放)のせいで、一瞬にして完全に処理落ち(フリーズ)しやがった。


 さしもの源家現当主・博臣ひろおみさんも、完全に戦意を削がれたように、深くため息をついてこめかみを強く押さえた。


「……泰臣さん。あんたは本当に……流石に予想外やわ」


 源家の当主にそこまで言わしめる我が家のバグじみたプライベートログ。その横では、道満がぼふっと音が出そうなほど顔を真っ赤に染め上げ、コートの袖で口元を隠しながら、とんでもない仕様(設定)を思い出したように呟いた。


「え、えっ……!? た、確か九尾の狐の尻尾って、六本目以降は……『ディープキス以上』の濃い接触じゃないと封印が解けへんって言うてた気がするけど……。っていうことは、泰臣さん、葉子さんとそこまで……っ」


「やめろ……道満……。頼むからそれ以上ログを解析(深掘り)すんな。親の情事なんか、1ビットたりとも聞きたくもないねん……ッ!!」


 俺は本当に苦虫を噛み潰したような、この世の終わりみたいな顔をして、両手で自分の耳のプロトコルを塞ぎたくなった。


 なぁ、あんたならどう思う?

 日本の表と裏がひっくり返るかどうかっていう命がけの戦場のど真ん中でさ。実の親の夜の営みの進捗状況(七本目解放)を強制同期される高校生の身にもなってくれよ、ホンマによー。


 だが、そのあまりにも不条理な規格外ログの連続に、正気を失いかけていた智規さんも、どこか憑き物が落ちたように力なく笑い、静かに肩を落とした。


「ハハ……。流石に、予想外です。……まさか、我が一族をかけた大博打が、そんなくだらない家庭内プロトコルで完全に無効化チェックメイトされるとはね。……もう、ここまでか」


 智規さんは自嘲するように呟きながらも、その泥濁色の氣を最後の力を振り絞って練り出し、一矢報いるためのファイナルアタックへと移行しようとした。だが――。


 ――ヒュ、パァンッ!!!


 一筋のまばゆい『黄金の光』が夜の闇を鋭く切り裂き、寸分の狂いもなく智規さんの右肩へと命中した。

 博雅の放った氣の矢だ。


「がっ……あ……ッ!」


 練りかけていた不気味な氣のプロセスが強制終了タスクキルされ、智規さんはその場へと力なく座り込んだ。

 

 トンネルの奥を静かにスキャン(見回し)してみれば、不気味に蠢いていた『コレクター』の術士たちは、さっきの俺の騰蛇の炎に巻かれて、一人残らず黒焦げになって倒れていた。神戸のサンキタ通りでチンピラがまとめて一掃されたみたいに、余計な外道のノイズは、最初から綺麗に一括消去デリートされていたんだ。


 重苦しい静寂が戻った、相坂トンネルの前。アスファルトに染み込んだ血と、焦げた煙の匂いが冷たい夜風に混ざり合う。

 座り込む智規さんの前に、現当主・博臣、そして弓を下げて涙を拭う次期当主・博雅が、ゆっくりと歩み寄る。


 血の繋がった源家の、博臣、博雅、智規の三人。

 瀬戸の旦那や俺たち周囲の住人が静かに見守る中、下剋上という最悪のシステムエラーの果てに、三人はそこで、やっと本当の「話し合い(デバッグ)」を始めるための回線を繋ぐことができたんだ。

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