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やりたかないのに陰陽師四  作者: 辻本 真悟
第四章:ダークウェブ・一つの裏と下剋上のプロトコル
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第二十三話:マルチ・タスク・同時多発のエラーコード

 智規さんの不気味なカモフラージュ(推測)を前に、部屋のトラフィックが完全に凍りついていた、その時だった。

 俺のスマートフォンのバイブレーションが、静寂を引き裂くアラートとなって激しく鳴動した。画面に表示されたアドミン名は――『賀茂保憲』。


「……やりたかないねー、ホンマによー。こんな時にオムライス……じゃなかった保憲からのシステムコールかよ」


 俺が通話ボタンをスライドさせて耳に当てると、スピーカーの向こうから、いつになく余裕のない保憲の冷徹な音声ログが流れてきた。


『安倍君、そっちのデバッグ状況はどうなっている。……実はね、今こちらでも神戸の兵庫県警本部が異様なほど慌ただしく動いているのをスキャンした』


「……県警本部が? 姫路署だけじゃなくてか」


『あぁ。どうやら姫路ドメインにおける「行方不明者」の未解決数が、通常の統計確率(エラー率)を完全に逸脱しているらしい。……安倍君、君たちも知っての通り本物の心霊スポットというセクターには、得てして生きている人間の精神システムに直接、最悪なバグ(影響)を及ぼす性質のものもある』


「……生きている人間に影響、ね。それ、もう手遅れかもしれへんわ」


 俺がさっきまでの瀬戸の旦那との推測データを保憲に同期(共有)しようとした、まさにその瞬間だった。


 ――ブブブブブッ!!!


 今度は、泰臣の対面に座っていた瀬戸の旦那の携帯電話が、重苦しいノイズを立てて震え出した。

 旦那が画面を一瞥し、「金原かねはらからや」と短く告げてスピーカーフォンに切り替える。ボタンを押した直後、受話器の奥から武上組組長のドスの利いた、だが明らかに動揺を孕んだ怒号が響き渡った。


『――オヤッサン! 大変なバグが発生しましたわ! さっき警察の網の目を潜らせとる若い衆から緊急のログが入ったんですがね……!』


「落ち着け、金原。何があった」


『……小赤壁しょうせきへき展望台の公衆トイレで、若い女性の首吊り自殺体が発見されました! それだけやありません……! それとは別に「赤屋根ステーキハウス」の廃墟の奥で、身元不明の男ら三人の他殺体が同時に見つかりよったんですわ……ッ!!』


「――ッ!?」


 金原のその絶叫パケットが部屋に響いた瞬間、俺、道満、博雅、そして親父の脳裏に、瀬戸の旦那が淡々と並べ立てた『心霊スポットの座標一覧』が、血塗られたエラーコードとなって一斉に点滅レンダリングし始めた。


 城の祭壇を叩き潰してタイムアタックは終わったはずだった。だが、智規の張り巡らせた大規模ハッキングは、俺たちのデバッグを嘲笑うかのように、姫路全域の霊的セクターで一斉に次の凶悪なプロセス(実行フェーズ)へと移行し始めていやがったんだ。

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