第十七話:クライマックス・クラッシュ・暴走する神域
「――リブート(起動)!!」
俺の「無色の氣」と道満の呪術コードが、一ビットの狂いもなく、完全に重なって爆ぜた。
二つの檻の結界に、まばゆい復元パッチが同時にオーバーレイ(上書き)されていく。
――ガガガ、ピキィィィンッ!!!
【一縷終焉】の確定トリガーが引かれる寸前、雅さんの親友とその友達の女の子の魂のリソースが、強制的に彼女たちの肉体へと引きずり戻される。
二人の女性のログが「生存」として完全同期された瞬間、進行度バーが激しくバグを起こして消滅した。
「……ハァ、ハァ……! やった、二人ともログの回収に成功したで、晴明!」
道満が肩で息をしながら、ぐったりとした二人の女性の体を抱きとめる。
だが、ハッキングを完遂寸前で弾かれた『地脈の祭壇』が、真っ黒なノイズの炎を噴き上げ、狂ったように暴走を始めた。敵の術者が、このセクターごと俺たちを物理デリートするための「自爆装置」を起動しやがったんだ。
「晴明、道満! ここは俺の矢が――」
「いや、博雅、お前は道満と一緒にその二人を抱えて下がれ! ……やりたかないねー、ホンマによー。俺の全リソース、一気に解放してやるわッ!」
俺は一歩前に踏み出し、愛用のジッポを弄る暇すらなく、両手で一瞬にして三つの印を連続で結び、脳内の演算回路を限界までクロックアップさせた。
「――【六合:金剛結界】!!」
俺の「無色の氣」が空間の四方へと走り、脈動する祭壇の周囲に強固な立方体の防御壁をレンダリング。暴走するノイズの爆発エネルギーを、一パケットたりとも外へ漏らさぬよう完全隔離する。しかし、自爆の圧力に六合の結界がみしりと軋んだ。すかさず二つ目のコードを走らせる。
「――繋がれ、【天空:座標反転】!!」
六合の結界に、天空の空間制御パッチがオーバーレイされた。結界の内部だけが空間ごと切り取られ、現実の白鷺城ドメインから、誰も干渉できない『別の次元(隔離アーカイブ)』へと強制移動を始める。
これでどれだけ爆発しようが城への被害はゼロだ。だが、完全にバグを消し去るために、俺は最後のトリガーを引いた。
「――目覚めろ、【騰蛇:火生三昧】。残らず、塵に還らんかい!!」
別次元へ転送される結界の檻の奥。俺の影から解き放たれた凶禍の十二天将・騰蛇が、すべてを消滅させる黒紫の極大火炎となって顕現した。
――ズガァァァァァァンッ!!!!
別次元の彼方で、騰蛇の炎が自爆寸前の祭壇ごと、敵の残した邪悪なハッキングコードを分子レベルで完全に焼き尽くした。
地下空洞に響き渡ったのは、システムが完全に消去されたことを示す、静かな残響の音だけだった。
「……ふぅ。タスクキル、完了だわ」
俺はそこで、ポケットから五芒星のジッポを抜き出し、カチャリと軽い金属音を響かせた。




