第5話:「勇とは何か」
夜の帝都は、昼より静かだ。
見回りを終え、宿に戻る。
灯りの下に、シオンがいた。
背筋が伸びている。
いつも通りだ。
「帝都の様子、いかがであったか」
カイルが答える。
「落ち着いてるよ。思ってたより」
シオンは頷く。
「落ち着いている、か」
少し間があく。
「だが、張っておるな」
俺は視線だけ向ける。
カイルが笑う。
「まあな。でも悪くない方向だろ?」
シオンは問い返す。
「悪くない、とは何を基準に申す」
カイルが止まる。
「暴動はない。兵も動いてる。自警団もできる」
「それは“結果”であろう」
静かだ。
「勇とは、何をもって勇とする」
唐突だが、繋がっている。
カイルは眉を寄せる。
「勇者の話か?」
「否。判断の話よ」
灯りが揺れる。
「力を振るわずに済ませるのは勇か。
それとも、振るう覚悟を持つのが勇か」
誰も答えない。
俺は壁にもたれている。
シオンが続ける。
「守ったと申せるかの」
カイルが顔を上げる。
「今日の一件よ。
あれは守りか、先延ばしか」
静寂。
カイルは言葉を探す。
「……守った、と思いたい」
シオンは頷かない。
否定もしない。
「願いは事実にあらず」
冷たい言葉だ。
「某は問うておるだけだ。
答えは急がずともよい」
灯りが小さく鳴る。
「勇とは何か」
その言葉が、部屋に残る。
俺は目を閉じる。
問いは、音を立てない。
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