第4話:「境界線」
見回りは、日常になりつつあった。
兵と、自警団。
並んで歩く。
ぎこちない。
市場の裏通りで、騒ぎが起きた。
若い男が押さえつけられている。
荷袋が裂け、乾パンが転がる。
「盗みだ」
兵が言う。
男は叫ぶ。
「違う!落ちてただけだ!」
周囲が囲む。
自警団の若者が口を挟む。
「証拠は?」
兵の顔が固くなる。
「現行だ」
「見たのか?」
一瞬の沈黙。
兵の手が剣にかかる。
周囲の空気が張る。
俺は前に出る。
「やめろ」
兵を見る。
「剣を抜く理由はあるか」
兵の喉が動く。
ない。
だが、引けない。
自警団の若者も引かない。
正しいことをしている顔だ。
どちらも。
男は震えている。
俺は乾パンを拾う。
袋を見る。
破れ方は荒い。
「落としたなら、店主は騒ぐ」
店主は奥で黙っている。
目が泳ぐ。
「いくらだ」
俺が聞く。
店主が小声で言う。
銀貨を投げる。
「今回は俺が払う」
兵を見る。
「拘束は解除だ」
兵は迷う。
だが、剣は抜かなかった。
男は解放される。
逃げるように去る。
自警団の若者が言う。
「甘いな」
兵が吐く。
「法は法だ」
どちらも間違っていない。
だが、線は動いた。
見回りは続く。
隣でカイルが言う。
「守れたな」
俺は歩く。
守ったのか。
先延ばしにしただけか。
帝都は今日も静かだ。
静かなまま、張っている。
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