古代生物の考えるロマンスは殺し愛
投稿に間が空きまして申し訳ありません、少し立て込んだ事態がありまして遅れてしまいました。これからも何卒よろしくお願いします。
超弩弓戦力3人にまとわりつかれてしまったルームはリラックスすることが全くできぬままに30分ほどが経過している。最初の10分ほどは姦しくしていた【古代語り】の面々であるが、今となってはルームにくっついてだらーっとしている。参考までに言うと肩にしなだれかかっているのがプロト、これは身長差のために結構無理のある体勢であるが別に人間の身体ではないので無問題である。ダイダラは頭の上でぽわぽわ、ふわわとしているしもっちゃんは身体を分解してルームの手足にちょこちょこと張り付いていた。
「なんか落ち着くだな。まるで昔の空気を吸っているみてぇだ」
これはダイダラの言である。そしてこれは全く勘違いではなく、古代生物たるダイダラ達にとって今の世界の空気は薄い。厳密に言えば時の経過に伴って安定してしまった事で不安定だった古代に存在した空気中の魔力とでも言うべきものがなくなったのだ。そして、ルームの【寄生】は古代生物達の求めるそれにも対応している。つまり、ルームの周りは色々な意味で濃い空間が形成されているのである。
「私様には燃料の補給なんかいらないのだけどぉ、なんだか格部品の性能が心なしか上がっているような気がするわ」
プロトは核が破壊されない限りは動き続ける超技術によって動いているが、それでも経年によってコンマ以下のすり減りはある。自動修復機能も当然あるので常にベストパフォーマンスは発揮するのだが、ルームと接触することによってその維持機能を担当するナノマシンが活性化しているのだ。
「もっちゃんの苔がかつて無い速さで育っているような気がするなー」
苔なのでかつてないと言っても誤差である。とはいえルームの肉体に触れている以上は栄養豊富にも程があると土地に根付いたのと同じくらいには成長が早まるのだろう。
「「「はふぅ」」」
ルームとは対照的に非常にだらけている、リラックスしまくっている彼女達とは真反対の状態のルームと言うと。
「(なんか【白箱】から瘴気が発生しているような……?)」
周りの弩級生物を意識的に考えないようにしながら【白箱】の異変を察していた。瘴気、というか情念のようなものが滲み出ているのを感じているのだ。これは言うまでもなく苗床亭メンバーの嫉妬である。流石に独り占めにしようとまでは思っていないが、会って数分の女達にすり寄られている想い人というのはどう考えても心地よいものではない。加えてそれがストレスになってルームの胃をキリキリさせているとなれば、もうそれは敵なのでは? と考えてもおかしくない。しかし、今回ばかりは相手が悪い、悪すぎると言っても良い。最強格3人を始末することはどう考えてもできない、ルームにも迷惑をかけてしまう、この2つでもってなんとか抑えている状態なのだ。これが木っ端のような奴らだった場合は命がないとまではいかないが相当厳しい脅しが入ることは間違いない。
「あー!! やっぱり!!」
何かを察したのか戻って来たスカーナが現状の有様を見て声を上げた。ゲストにべったりくっついている身内を見たら声も出よう、しかもこれは会ってまだ1時間も経っていないのだ。無礼とかそういうレベルではない馴れ馴れしさである。
「ルームさんは助っ人なんですから失礼ですよ!! もう!!」
ぷんぷんという効果音が聞こえてきそうな感じの怒り方である、これが半分くらい真の姿に戻って言っていなければだが。半龍とでも言うべき状態でもその威圧感たるやすさまじく、ルームの全身に鳥肌が立つ。しかし、同期たる【古代語り】の面々にはそれは本当に軽く怒らせた程度の意味しか持たない。
「今から打ち合わせをするんですから!! 出てってくださいね!!」
「「「え~?」」」
「えーでも、うーでもありません。早く出てって」
渋々といった感じでルームから3人が離れる、心なしかルームの胃の痛みがマシになった。
「すみません本当に……皆興奮してて」
「はは、ダイジョウブデスヨー」
大丈夫ではない。棒読みで死んだ目をしているのがその証拠である。
「それじゃあ劇のお話に入りたいんですけど……良いですか?」
「どうぞ、協力はさせていただきます」
まだ断られるかも、という風に思っていたスカーナを安心させるために協力するとはっきりと口にした。人類の存続を任された気分のルームは勝手に断るという選択肢を削っていたのだ。別に断ってもそこまで酷いことにはならないのだが。
「良かったぁ……!!」」
花が咲くような、と表現したいところであるのだが。【骸龍】の感情の昂ぶりがもたらすのは真逆の効果である。部屋の隅で裂いていた苔の花らしきものが急速に萎んでいった。感情の動きだけでこれなのだ、本当に力を行使したらどうなるかなど考えるだけ無駄である。
「そ、それでは、ですね、ふへへ、今回は、ちょっと、その、ら、ラブストーリーをですね」
「ラブストーリー……ですか」
劇の話になって興奮したのか少し気持ち悪い感じになったスカーナである、その程度で突っ込んでいては話が進まないのでルームはスルーした。
「はい、お恥ずかしい、のですけど。実体験を基にしまして、その、怪物殺しと怪物の、き、きき、禁断の愛を書いてみようと思って、へへ」
「実体験? スカーナさんを倒せるような人がいるとはとても思えないのですけど」
「えっと、私が【骸龍】になったのは1度討伐されているからなので」
「え?」
衝撃の事実をさらっと言い放つスカーナ、これを公にすると学会と教戒がてんやわんやになること間違いなしである。神話の根幹とそれに付随する伝説に大幅な修正が必要になるうえ、今までの学説や解釈が全部ひっくり返ることになる。ルームならば学会と教戒に伝えることも可能だが、面倒にしかならないのでもみ消される可能性が非常に高い。ルームもそれが分かっているので大人しく聞かなかったことにした。
「残念ながら相討ちになってしまったのと、なんかおかしな力を使っていたのとで顔とかは全然覚えていないんですけどね」
「ちなみにおかしな力っていうのは? スカーナさんから見ておかしな力というと僕には想像もできないレベルなので参考までに」
「え~と、あれは確か、なんか光る剣が2振りありまして……なんだったかな、魔剣クーゲルシュライバーと聖剣ドラッヒブレスティフトとかなんとか」
「聞いたこともない剣です」
「私もないんですよね、あんな力を持つ剣なら知っていない筈がないんですけど。まるで世界にポンと出現したかのような唐突さで出てきまして。その時にも聞き慣れないちーと? とかなんとか言ってたんですけどよく分からなくて」
「はぁ、そうですか。昔にも不思議なことはあったんですねえ」
「ええ、ですから印象に残っちゃって。それで、へへ、今まで手を出してこなかったラブストーリーに仕立て上げてみようかなと。それでルームさんにはですね」
怪物殺し側として振る舞うのはルームにとってあまりやりやすいものではないが、配役となれば仕方ないと受け入れる姿勢を作るルーム。心の準備さえできれば大概のことは受け入れられるのだ。
「女装して怪物側をやってもらいたくて」
「へ?」
斜め上の言葉は軽々しくルームの心の準備を打ち砕いた。




